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脚力がすごい! スペシャルウィークの走りのすごさ/ウマ娘 プリティーダービー

『ウマ娘 プリティーダービー』で描かれたエネルギーについて考えてみた

マンガやアニメの世界を研究する空想未来研究所が、今回取り上げるテーマは「走力」。ゲーム、アニメ、マンガと多方面で人気を誇る『ウマ娘 プリティーダービー』から、第1期主人公・スペシャルウィークの脚力と走りについて、エネルギーの観点から考察してみました。

現実の馬を継承するウマ娘の面白さ

アニメ『ウマ娘 プリティーダービー』がモーレツにオモシロイ!

活躍するのは、“ウマ娘”たち。人間の女性に、馬の耳と髪と同じ色をした馬の尻尾が付いた姿で、現実の名馬たちの名を受け継ぎ、トレセン学園で学びながら、トゥインクル・シリーズというレースを戦う。

心を揺さぶられるのは、ウマ娘たちが、現実の馬たちの「特徴」や「戦歴」を、全く同じではないながらも継承していること。例えば、皇帝シンボリルドルフは、『ウマ娘』ではトレセン学園の生徒会長!

現実のサイレンススズカは、走りを大逃げに変えてから6連勝したが、秋の天皇賞で骨折し、馬場を去った。『ウマ娘』のサイレンススズカも、大逃げを認めるチームに入って才能を開花させたが、秋の天皇賞で骨折。こちらは1年のリハビリを経て復帰した。よかった~。

ああ、無念でならない。筆者は何事にものめり込みがちなので、競馬を敬遠してきたが、どっぷりのめり込んでいたら、もっともっともっと『ウマ娘』を楽しめたのに!

帰らざる日々を振り返っていないで考えよう。ウマ娘たちは、人間と同じ体形で、競走馬たちに負けない走りを見せる。どうすれば、そんなことが可能なのだろう?

ウマ娘の脚力を見よ!

ウマ娘たちが、人間と同じ体形をしていることは、公式ホームページが証明している。例えばアニメ第1期の主人公・スペシャルウィークは、身長158cm。体重は「微減(レース前で緊張気味)」、スリーサイズはB81・W56・H81。この体形ながら、アニメ第1話では、歩道を走って車を追い抜いた!

最初から視聴者の度肝を抜いているが、さらにオドロキのシーンが続く。レースのパドックを観覧中に、トレセン学園のトレーナーが、背後にしゃがみ込んでスペシャルウィークの脚を触り、「いい筋肉だ」的なことを言う。なんてふらちなと憤るいとまもあらばこそ、その顔面にキツイ後ろ蹴りを見舞って3mほど飛ばした! キックボクシングなどで、蹴られた選手が3mも飛ぶことなどないから、驚異の脚力だ。

地上で物体を3mも飛ばすには、少なくとも時速27.6kmの速度を与える必要がある。『格闘技「奥義」の科学 わざの真髄』(吉福康郎/講談社)の実測値から計算すると、人間のキックは「体重の4%の物体が、足と同じ速度で激突した」のと同じ衝撃を与える。

スペシャルウィークの体重を50kgとすれば、その4%とは2kg。トレーナーの体重を70kgとすれば、スペシャルウィークの脚は、自分の35倍も重いものを時速27.6kmで飛ばしたことになる。これには相手を飛ばした速度の36倍で蹴る必要があり、すなわち時速994km! キックボクサーの蹴りの速度は、最もスピードの出る回し蹴りでさえ時速60km前後だから、驚くほかはない。

こういうシーンでよく話題になる「キック力」は、「足が当たってから離れるまでに、相手が動いた距離」によっても決まる。それが10cmだとすると、スペシャルウィークのキック力は21t!

人間と馬は体の構造が違う

この超人的な脚力で、ウマ娘たちは素晴らしい走りを見せる。

そのスピードは、向こうの景色が流れて見えないこと、空気を切り裂く音がすること、空気が光ることなどでも表現されていたが、数字でもしっかりと示されていた。トレーナーが、スペシャルウィークの走りを計測して、こう言ったのだ。「上がり3ハロン33秒8は立派だ」。

競馬に詳しい方には釈迦に説法だが、「上がり3ハロン」とは、「最後の600m」のこと。これを33秒台で走れば「速い馬」とされるという。スペちゃん(スペシャルウィークをみんなはそう呼ぶ)の走りは、現実の競走馬たちに全く引けを取らないということだ。

これは驚くべき事態である。

馬は体の構造が走りに特化している。速く走るには「脚が長く、地面との接触面積が狭い」方が有利だが、馬の足は、中指の中足骨(人間で言えば、足首と指の間の骨)が長く伸び、その先端に中指とひづめが付き、他の指および中足骨が退化したことで、これを実現している。その上、競走馬は体重の50%以上が骨格筋なのだ。

一方、人間は前足が手に進化したことで、バランスを取る以外は、走るのに大きな貢献ができなくなっている。また、足の裏をべったり地面に着けるため、立ったり歩いたりするのは得意だが、速く走るのには向いていない。さらに、骨格筋は体重の40%にとどまっている。そんな人間と同じ体構造のウマ娘たちが、競走馬ほどのスピードで走れるとは、恐るべし!

スペシャルウィークのけたたましい走り!

前述したように、スペシャルウィークは600mを33.8秒で走る。平均速度は秒速17.75m=時速63.9km。100m走のタイムは5秒63。ウサイン・ボルト(9秒58)の1.7倍も速い。2人で100mを走ったら、スペちゃんがゴールしたとき、ボルトはまだ58.8m地点を全力疾走中ということだ!

もちろんこれには、大変なパワーが必要だ。科学で言う「パワー」とは「力」のことではなく、「1秒間に発揮するエネルギー」のこと。体重が同じなら、力は速度の2乗に、パワーは3乗に比例する。つまり、スぺちゃんの筋肉は、人類最速の男の筋肉と比べると、力は3倍、パワーは5倍!

この驚異の筋肉があったとして、どんな走り方をすれば、これほどのスピードが出せるのだろう?

アニメの走りを見ると、スペちゃんは特に大きな歩幅で走ってはいないから、足を動かすペースがめちゃくちゃ速いと思われる。実際アニメでは、足の動きはよく見えないほど速い。

ボルトは世界記録を出したとき、100mを41歩で走った。平均の歩幅は2.44m、1秒間に4.3歩も走ったことになる。

その歩幅は彼の身長(196cm)の1.244倍だから、この比率が同じなら、身長158cmのスペちゃんの歩幅は1.97mだ。これで秒速17.75mを出すには、毎秒9回も足を動かさなければならない! ボルトの2倍以上のペースであり、文字で表現すると、たった1秒で「ドドドドドドドドド」という、けたたましい走りである。

ウマ娘はどんな練習をするのか?

これだけの走りを実現するために、ウマ娘たちは連日キビシイ練習をこなしている。

通常のランニングはもちろん、追い越し走(数人が一列になって走り、最後尾がトップに立つことを繰り返す)、階段駆け上がり……。

スペちゃんは初めてのGⅠレース「皐月賞」で3着に終わった後、体重を減らす必要を感じて、腹筋100回、背筋100回、腕立て伏せ100回、もも上げ100回をやっていた。

すごかったのが、けがからの復帰を目指すトウカイテイオーだ。マンガやアニメでおなじみの「タイヤ引き」をやっているのだが、そのタイヤがモーレツにデカイ。

アニメで測定すると、幅1m40cm、外径4m60cmのタイヤが2段重ね! 現実のトラックのタイヤ11R22.5(一例:幅27.94cm、外形105.9cm、重量51.858kg)と比較すれば、彼女が引いていたタイヤは1本4.9t。2本だから9.8tだ! こんなモノを引っ張れるヒトは、サイドブレーキのかかった路線バス(10t前後)をズルズル引きずることができます。トウカイテイオーも、脚力が21tぐらいあるのかもしれない。

ウマ娘たちは、ものすごく食べる!

日々のトレーニングを乗り越え、レースで結果を出すためには、食事も重要だ。ウマ娘たちはどれほど食べるのか? 

これが驚くべき量で、スペちゃんが、トレセン学園の学食で食べていたのは、高さ30cmはあろうかという山盛りのご飯! 茶わんの大きさと比べると、8杯分はありそうだった。

ご飯1杯は「160gで269kcal」だから、8杯分なら1.28kgで2152kcal。人間が1km走ると、体重1kg当たり1kcalを消費するから、スぺちゃんの体重が50kgなら、これ一食で43km走れるエネルギーが得られるわけだ。彼女の練習を見ていると、実際にそのくらい走っていそうだ。

すごかったのはオグリキャップで、彼女はスぺちゃんと同じぐらいのご飯に加えて、高さ30cmほどのショウガ焼きを食べていた。その横幅はご飯の2倍ほどで、恐らく3kgはあるのではないか。ショウガ焼き3kgとは7380kcalで、ご飯と合わせると9532kcal。体重50kgなら、これで191km走れることになる。トレセン学園は東京の府中にあるから、静岡県沼津市あたりまで往復。さすがトレセン学園一番の健啖家!

と思ったら、スぺちゃんのもっとすごいシーンを発見してしまった。三角おにぎりを握っているのだが、周囲の物と比べると、一辺が31cm、厚さ17cmもある。すると重さは8.84kgと思われ、普通のおにぎり(120g)の実に74個分! なんと1万5843kcalだ。走るべき距離は317km。静岡県焼津市あたりまで往復!

人間の姿でありながら、馬に負けないスピードで走る少女たち。彼女らは走ることが大好きで、速く走るために猛練習を積み、よく食べる。そうした彼女たちを応援せずにいられないのは、夢を追って努力することの尊さを、我々がよく知っているからだろう。たくさん食べて、たくさん練習して、走れ少女たち。瞳の先にあるゴールを目指して。人間の想像力は、本当に素晴らしい!

※記事では数値を四捨五入して表示しています。このため、示している数値を示された通りの方法で計算しても、答えが一致しないことがあります

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