2023.10.4
蓄電池やEVを効率よく使う! 「VPP(バーチャルパワープラント)」を3分解説!
IoTを活用して分散型エネルギーリソースを統合制御
エネルギーの注目キーワードを3分で理解!今回のテーマは「VPP(バーチャルパワープラント)」。エネルギーリソースを上手に使う方法とは、どういった仕組みなのか。最低限知っておきたい「VPP」のポイントを解説します。
分散型のエネルギーリソースを“一つの発電所”のように機能させる
VPPは、「Virtual Power Plant」の略称です。
これは、IoTを活用した高度なエネルギーマネジメント技術で分散型エネルギーリソース(DER)を遠隔で統合制御し、あたかも一つの発電所のように機能させる仕組みです。
従来は、大規模集中型の発電設備が供給力の大部分を占めていましたが、近年では再生可能エネルギー発電設備の導入が進むとともに、蓄電池やEV(電気自動車)、電気給湯機といった分散型エネルギーリソースの普及が進んでいます。
そうした分散型エネルギーリソースを活用する方法の一つが、VPPなのです。
家庭や事業所などが保有する分散型エネルギーリソースは小規模でさまざまな場所に散らばっていますが、IoTを活用したエネルギーマネジメント技術を用いてこれらを束ね、一つの発電所のように機能させることで、電力の需給バランス調整に活用できます。
VPPやデマンドレスポンス(DR)によって、電力需給のバランスを改善し、再生可能エネルギーによる電力を有効に活用することが期待されています。
VPPを用いたビジネス「ERAB」
VPPやデマンドレスポンスを用いて、調整力やインバランス回避、電気料金削減、出力抑制回避といったサービスを提供する事業を、「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)」といいます。
ERABを実施する事業者には、リソースアグリゲーター、アグリゲーションコーディネーターがあり、2つの役割を兼ねる事業者もあります。
・リソースアグリゲーター:需要家とVPPサービス契約を直接締結してリソース制御を行う事業者
・アグリゲーションコーディネーター:リソースアグリゲーターが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者
2022年4月からFIP制度とアグリゲーターライセンス制度が開始され、VPPに事業として取り組む事業者の増加が見込まれます。
実証事業から実用化へ
日本では、2016年度から「バーチャルパワープラント構築実証事業」が5年間にわたって実施され、2020年度に実証が終了しました。
実証事業では、VPP基盤整備実証事業(VPPを実用化する上での基盤システムの開発と運用方法を検討)とVPPアグリゲーター実証事業(分散型エネルギーリソースを活用した各種サービスに関する技術的な検証、V2G(Vehicle to Grid:EVを蓄電池として活用し、電力系統に接続して相互利用する技術)の事業化に向けた環境整備やビジネスモデルの検討)が実施されました。
実証事業の成果や課題を踏まえつつ、2021年度に需給調整市場が開設・段階的に運用が開始され、前述のFIP制度やライセンス制度といった関連する規制面・政策面の整備が進んでいます。
VPPでは、確実に調達可能なエネルギーリソースを把握し、経済性の高いポートフォリオを組み、迅速かつ確実にエネルギーリソースに指令・制御することが求められます。
ERAB検討会では、各種の電力市場において、DSR(Demand Side Resources:需要家側エネルギーリソース)やDER(Distributed Energy Resources:分散型エネルギーリソース)に一定の活用ポテンシャルがあると示されました。ポテンシャルを引き出すために、制度やガイドラインの整備、さらなる技術の実証が求められます。
参考:
・経済産業省『バーチャルパワープラント・ディマンドリスポンスについて』
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/index.html
・経済産業省『第17回 エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会(2022年1月19日)開催資料』
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/017.html
・株式会社三菱総合研究所『令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業 分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションビジネスの普及・推進に関する調査報告書』
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000011.pdf
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