特集
食品ロスからの脱出

コンビニが変われば社会が変わる! コンビニ食品ロスと解決策

1店舗1日平均10kg以上の食品が捨てられている現状を変えることができるのか?

法律の施行などによって、2019年に注目された社会問題の一つである「食品ロス」。中でも毎年、年末から2月にかけて季節ものの商品が大量に並ぶことで、まるで食品ロスの象徴かのように見なされてしまうのが「コンビニエンスストア」(以下、コンビニ)だろう。果たして、その実態はどうなっているのか。同業界を知り尽くした小売-物流専門家・渡辺広明氏から現状を聞き、業界内の食品ロスの根源や解決方法を探る。

コンビニから生まれる食品ロスは年間20~30万t

日本の家庭において、「食べ物を残さず食べることは美徳」であるとされてきた。幼いころ、食品のありがたみを考えることを、親や教師など周囲の大人に教育された経験が誰しも少なからずあるはずだ。

ただ、世の中には反対に、「食べ物は残すことが美徳」とする国もあることを考えれば、ある意味、日本は食品を敬う気持ちや基礎教育がしっかりとした国だと言えるかもしれない。

そんな日本であっても、残念ながら社会システムが生み出す“食べ残し”については、なかなか解決することも、いや想像することすら、まだできないでいる。

中でもやり玉に挙げられるのが、「恵方巻問題」など大量の食品廃棄がニュースやSNSで話題になるコンビニ業界だ。利用者層の幅広さと、全国に5万5677店舗(2019年11月時点/日本フランチャイズチェーン協会調べ)もあるという身近さゆえ、その動向はたびたび注目を集めてきた。

過剰納入が問題視されたコンビニの恵方巻。業界に詳しい渡辺広明氏は、「コンビニの評価制度は数値化しにくい中、恵方巻やクリスマスケーキは『いくつ売った』という数字が出しやすいため、各店売ろうと必死になってしまった側面もある」と指摘する

©afrog_5130_flickr

「日本には5万を超えるコンビニがありますが、現在、1店舗1日平均、約50~70kgの廃棄物を捨てているとの試算があります。廃棄物には段ボールやパッケージなどさまざまなものが含まれます。そのうち食品の割合は5分の1。重さにするとおよそ10~15kgとなります」

そう話すのは、コンビニ評論家としてメディアにも多数出演している渡辺広明氏だ。氏はかつて、3店舗を仕切る「スーパー店長」としてコンビニ業界に従事。職を辞した後も業界関係者と太いコネクションを持ち、食品ロス問題を含む、業界内のさまざまな課題解決のために提言を続けている。

コンビニのビジネスモデルによって発生する食品ロスについて指摘する渡辺氏。2019年12月27日には『コンビニが日本から消えたなら』(ベストセラーズ)というコンビニからの日本経済復活論をしたためた書籍を発売する予定だ

それにしても、1店舗が1日に10~15kgの食品を廃棄していると聞くと驚きだが、単純計算すると年間では約20~30万tの食品ロスがコンビニから発生していることになる。その量は、日本全体の食品ロスのうち約5%だ。

※日本の現状が分かる「食品ロスからの脱出」第1回はこちら

渡辺氏は、「日本のコンビニエンスストアは、顧客を満足させるためにあらゆるサービスを研磨してきた歴史を持ち、非常に洗練された高いレベルにある」と説明する。都市部と地方でもほぼ同じ商品が売っていて、だいたいの店が24時間、いつでも好きなものを買える。そんな質の高い小売の業態は世界に類を見ないというのだ。

その一方で、そうした“企業努力”の結果、食品ロスが生まれやすい構造を維持し続けてきたと、厳しい目を向ける。

「日本のコンビニは、鮮度が良い商品を欠品なしでお客さんに買ってもらうこと、すなわち顧客満足を第一の使命としてサービスを改善し続けてきました。そのためには、ある程度の食品ロスはむしろ“善”であると奨励されていたのです。私が本部直営のコンビニで店長をやっていたのはバブル時代なのですが、当時、本部からは売り上げの3%ほどを廃棄することが“目標”として設定されていました。近ごろでは、2%程度になってきたようですが、依然として『廃棄はあって当然』とされています。私も、最初はもったいないと思いながら捨てていましたが、不思議と感覚はマヒしてしまうのです」

機会ロス=廃棄ロス?コンビニが変われない理由

渡辺氏が口にした、「廃棄目標が設定される」とはどういうことか。

顧客がコンビニに訪れた際、食べたい商品や目当ての商品がないと満足することができない。そのため、店側ではある程度、廃棄することを前提に商品を余分に用意しておく。もちろん、廃棄率が高くなれば問題にもなり、「本部から怒られる」(渡辺氏)のだが、顧客から満足度を引き出しつつ「廃棄になっても仕方がない」と運営側が割り切れる採算ラインが、「売り上げの2%程度」という具体的な数字として設定されているということだ。

もちろん、後述するさまざまな施策によって、コンビニ業界はこれらの廃棄量を減らす努力をしている。ただ、この数字は企業によって異なるものの、廃棄を前提とする仕入れ=顧客満足を高める施策の一つ、という数式は、いまだに存在している点は否めない。食品ロスを余儀なくされてしまう“仕組み”が、コンビニという業態には内包されているということになる。

「いつ、どこで、誰が、何を、買うかなんて、100%推測することは不可能です。例えば、コンビニに行く前に、『今日はセブン-イレブンの焼きうどんを食べる』と明確に決めていますか? 決めていない人が大半ではないでしょうか。現在、そうしたニーズを予測するためにAI(人工知能)を活用するなどと騒がれていますが、どんなに高性能なテクノロジーが世の中に登場しても、人間の欲求を詳細に読み取ることは難しい。在庫を余分に持っておけば“機会ロス”は減りますが、その分“廃棄ロス”が増える。機会ロスと廃棄ロスをイコールにすることはできないのです」

渡辺氏は機会ロスと廃棄ロスを等しくし、食品ロスをなくしていくために最も必要なのは、「消費者の意識変革」だという。つまり、欠品になっていても腹を立てない、もしくは消費期限が近い商品でも積極的に買うなど、食品廃棄について厳しい視点を持つ必要があるということだ。

廃棄する=顧客満足を高めるという数式を崩すためには、利用者が「何でも手に入る」以外の「満足」の価値観を新しく築いていく必要がある。

「中国や東南アジアなど今勢いのある国々は、これからさらに豊かになり、どんどん作って、どんどん売る、そして余ったものはどんどん捨てるというフェーズに入るでしょう。しかし、日本はその次のフェーズに入ろうとしている。これから先、日本においては顧客がコンビニに求めることはもうあまりないのです。むしろ、社会的な課題や社会全体のことを考えて行動するのが、コンビニの使命になってくると思っています」

セブン、ファミマ、ローソン、大手3社の食品ロス対策

消費者の意識変革の次に大事なことは、コンビニ側が食品ロスを減らす仕組みを積極的に作ることだと渡辺氏は続ける。例えば「値引き販売」に関するコンセンサスだ。現状、ここにも食品ロスが生まれやすい構造がある。

「コンビニの力の源泉は店舗数と販売網ですが、これだけ全国に店舗網を拡大できた理由は『定価販売』だからです。各オーナーが値引き合戦を行えば、おのずと価格競争が起きてしまうし、そうなると薄利多売となり、店舗数や販売網を維持できなくなる。それこそが、コンビニ関係者が最も恐れることなのです」

そもそも日本の法律では、モノの売り値は店舗オーナーが決定する権限を持つ。つまり、値引き販売もオーナー側の裁量で可能なはずなのだ。

しかし、コンビニには10年ごとに本部との契約更新がある。契約を更新してもらえないのではという忖度(そんたく)から、オーナーは値引きして商品を売り切ることなく、廃棄を選択せざるを得ないケースもあるそうだ。

とはいえ、食品に関しては食品ロス問題が議論され始めるにつれ、「値引きは仕方がない」という業界内のコンセンサスも生まれつつあるという。渡辺氏はむしろこのタイミングで積極的に仕組みを作るべきだと指摘する。

「アルバイトの『持ち帰り』も一手段だと思います。オーナー側は食中毒といった問題が発生した際に責任を負えないという理由と、持ち帰りを許容すると好きな商品を隠しておいて持って帰ろうとするアルバイトが現れるということを懸念しています。しかし、これも『まかない』などに該当する制度としてしっかりと仕組み化すればメリットが大きく、食品ロスを解決する手立てになると思います」

現在、コンビニ大手では食品ロスを減らすための施策をいくつも始めている。

例えば、チルド弁当を増やすというのも施策の一つだ。常温弁当に比べて、チルド弁当は保存期限が2~3日長い。今後はその割合を増やしながら、冷凍食品にも力を入れていこうとする動きもある。

また、季節の風物詩であり、世間からも大量廃棄が問題視されているクリスマスケーキや恵方巻などは、「予約販売」に絞るという施策も実施されている。この予約販売では、ファミリーマートが先行しているという。

2019年4月に発表された施策は、おせちと大型クリスマスケーキは完全予約販売に、恵方巻や土用の丑の日のうな重などは予約制に加えて当日販売も実施。2020年版の恵方巻は既に予約が始まっており、店舗とWEBサイト上で予約が可能だ。

季節もので言えば、この時期食べたくなる「おでん」もその一つ。廃棄量や管理する店員のオペレーション負荷が課題となり、一部で販売が縮小傾向にある中で、ファミリーマートは、電子レンジで温めて提供する「レンジアップおでん」という個別包装の商品を、2020年1月から展開することを発表している。レジ横のおでんを廃止するわけではなく、2つの方式から店舗が選べる選択制に仕組みが変わる。注文が入ってから商品を温めるため、おでんの廃棄量は大きく変わるはずだ。

「他にも、ローソンが実施した『Another Choice』も話題となりました。消費期限が近い商品を購入するとポイントが付与され、同時に子どもたちにも寄付が届くというプログラムです。また、東京都中央区などの3店舗から千葉県市川市にあるCDC(冷蔵品配送センター)まで廃棄となった食品を持ち帰り、採卵鶏の飼料にするという実証実験も行われています。実はゴミの処理や運搬にも規制があり、このプロジェクトも特例で認められている状況。廃棄といっても、必ずしも全てが単なるゴミになるというわけではないので、そこを法律の観点から整理してもらわないと、こうした取り組みを拡大させることは難しいです。後ろ向きではありますが、廃棄量に応じて税金をかけるとか、そろそろそういったアイデアも議論されてもいいのかもしれません」

CDCに届けられる廃棄食品。ローソンが現在、実証実験を行っている

写真提供:渡辺広明

コンビニ利用者こそ当事者! 業界を変える方法

さらにセブン-イレブンとローソンでは、先述のポイント付与・還元の仕組みを進化させ、実際に導入しようとしている。こちらは食品ロスをインセンティブで解決しようとする仕組みを念頭に入れたもので、消費者の満足度のカタチを変えるという文脈で、今後の展開に期待が持てる施策となっている。

この「インセンティブ設計」は、企業や自治体、セレブリティやスポーツ選手、インフルエンサーなど共感してくれる団体・人の協力次第で無限の広がりが想定できる。例えば、「消費期限ぎりぎりの商品を買ってくれた皆さまをライブにご招待!」「食品ロスを減らしてハワイ旅行に50%OFFで!」などとなれば、消費者の関心を一気に高めたり、意識改革を促せたりすることが可能なはずだ。

「コンビニは、考えられる全ての施策を地道に仕組み化して、積み上げていかなければなりません。そうすることで、日本の食品ロス問題解決の担い手にならなければならない。もちろん、スーパー、飲食店など他の職種もコンビニに負けず劣らず食品ロスをたくさん出していると思います。それでも、コンビニ業界がこの問題に率先して取り組むべきというのが、私個人の意見であり、希望。というのも、コンビニほど人々の生活に浸透しているプラットフォームはなく、その影響力はとても大きいからです」

「コンビニ業界の食品ロス問題の先行きは暗くない。各社の努力と消費者の購買意識の変革が進めば、大きな変化を起こすことができるはず」

「2020年からは、コンビニでもレジ袋が有料化されます(※当初4月開始予定だったが7月からに延期)。これはとても大きな転機になるでしょう。これまで意識的に買い物をしていなかった層=なんとなくコンビニで買い物をしていた層までもがエコバッグを持つ時代に入るのです。コンビニが変われば、社会が変わっていく。私はそう考えています」

最近では、コンビニ側だけが考えるのではなく、それを支えようという取り組みも見られる。例えば、コンビニの食品ロスを減らすクーポンアプリ「No Food Loss」は、加盟しているコンビニなどの店舗が廃棄間近となった商品のクーポンを発行、利用者はアプリに表示された商品をお得に購入できる。全国に5万を超える店舗があるだけに、ビジネス的観点から見ても、アイデアと技術次第で可能性は無限大だ。

コンビニ側はできることを少しずつ確実に積み上げていく。一方、消費者は新しい時代の日本社会を考えながら、満足の質や意識を変化させていく必要がある。当たり前のようだが、確かにそれ以外に本質的な解決方法はないのかもしれない。好きな弁当がなくても怒らない。そんな心の余裕が、食品ロスを減らす一助となるのだろう。

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