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食品ロスからの脱出

目指すは食文化の再構築! 食品ロス削減ビジネスに挑むベンチャー企業たち

マッチングから料理バトルまで。食品ロスを楽しくお得に解決する方法とは?

本特集では、これまで2週にわたって食品ロス問題の現状と、コンビニ業界の対策について見てきた。そこで見えてきたのは、食品ロス問題を廃棄や環境の問題と捉えるのではなく、消費者の食に対する意識の問題と認識することが解決の糸口なのだということ。そこで、直接消費者に働きかけるビジネスはないか、EMIRA編集部が注目サービスを選出。後半では、余剰食品をネット販売する「tabeloop」の山本和真氏に食品ロスビジネスの概況を聞いた。

食品ロス問題を解消するビジネススタイル

食品メーカー、外食産業、コンビニなどの企業努力によって、現在の日本の「食」は豊かになった。

その結果、大量生産・大量消費の時代を迎え、食料自足率の低さに反して、多くの食品ロスを生むまでになっている。近年ではようやく食品ロスに対する問題意識も高まり、2019年10月には「食品ロスの削減の推進に関する法律(略称「食品ロス削減推進法」)」が施行したことも既報の通りだ。

余剰食品と消費者をつなぐサービス「tabeloop」を運営するバリュードライバーズ株式会社 取締役COOの山本和真氏は、「そもそも大量の食品ロスが出されてきた背景には、安く、大量に輸入食材を仕入れることができていたという、貿易における日本の優位性があります。しかし、昨今の中国の台頭を見ても分かる通り、日本はいずれ輸入負けする。現状の食生活レベルを維持するためには、われわれ消費者が生活のあり方から考え直さなければいけない時代になってきています。食べ物が簡単に手に入らなくなって初めて気付くのでは遅いのです」と警鐘を鳴らす。

そして今、食品ロス解消に向け、さまざまなサービスを提供するベンチャー企業が世界中で立ち上がり、日本でもここ数年、徐々にその数が増えてきている。日本で主流となっているのが、余ってしまった料理と消費者をマッチングさせるサービスだ。

例えば、初期に生まれ、国内で最も有名といえるのが、株式会社コークッキングが提供する「TABETE(タベテ)」。

同サービスでは、閉店間近の飲食店で残ってしまったメニューや、賞味期限が近くてバックヤードに下げる料理など、“まだ食べられるのに捨てることになる食品”を、ユーザー(食べ手)に安く提供し、持ち帰ってもらおうというマッチングアプリだ。「『ユーザーよし』『お店よし』『環境よし』と、みんながハッピーになれる『三方よし』の社会派ウェブサービス」(公式HPより)を目指しているという。

「TABETE」は2018年4月末にサービスをリリースし、翌2019年2月には登録者が10万人を突破している

画像出典:TABETE公式サイトより

また、定額制に強みを持ち、関西圏で展開していた「FOOD PASSPORT」(株式会社REARS)は、2019年10月から関東でも展開を始めた。月額980円(税別)を支払えば、登録されている飲食店の余剰食材を使ったメニューなどが月に10回まで食べられるというもので、これまでのクーポン系サービスと同じような使い方ができる分、ユーザーには入りやすいつくりとなっている。

ほかにも、アプリを通じてユーザーと食品ロスにつながる料理をマッチングさせ、さらに注文金額の一部が慈善団体に寄付できる「tabekifu(タベキフ)」(株式会社tabekifu)など、消費者と余ってしまった食品をつなげるサービスはさまざまな変容を遂げながら、拡大している。

2019年11月にサービスインした「tabekifu」。寄付をしたいユーザーが、SNSで情報を拡散させることによって、寄付額を増額することもできる。寄付先は「セーブ・ザ・チルドレン」「国境なき医師団」など社会貢献をしている団体だ

画像出典:tabekifu公式サイトより

通販、フードテック、料理イベントまで広がりを見せる食品ロス解消ビジネス

その他にも、食品ロスを解消させるために、さまざまなビジネススタイルが存在する。マッチングサービスの次に勢いを増してきているのが、生産者や加工業者などとユーザーをつなぐネット通販スタイルだ。

このスタイルを代表するのが、先述の山本氏が運営する「tabeloop(タベループ)」(バリュードライバーズ株式会社)である。

取り扱うのは、市場に流通できない商品。少し傷がついた魚や形が不ぞろいな野菜に果物、消費しきれない業務用食品、賞味期限が近い余剰食品などを、普通に購入するよりも安い価格で飲食店や一般向けにネット販売している。

「tabeloop」の売り上げの一部は、飢餓撲滅を目指すFAO(国際連合食糧農業機関)などに寄付されるという

画像出典:tabeloop公式サイトより

また、テクノロジーで食品ロスを解決しようとするのが、デイブレイク株式会社の特殊冷凍テクノロジーなどが注目を集めたプロダクトスタイルだ。

デイブレイクは、「大量に仕入れた食品を急速冷凍で高品質のまま保存し、食品ロスを減らしたい」という事業者の望みに応えられる、特殊な冷凍技術を持っている。2018年からは、フローズンフルーツ事業「HenoHeno」のサービスを開始し、日本で年間100万tとも言われる果物の食品ロスを減らそうと取り組んでいる。

さらに、消費者の“意識改革”を促す企画を提供するのが、イベントスタイルである。

大きな動きを見せているのは、料理レシピサービスで知られるクックパッド株式会社。「CREATIVE COOKING BATTLE(CCB)」と題して、2018年より企業向けの料理バトルイベントを主催している。

「アリモノからおいしい料理をつくることは、生活の中で最もクリエイティブな行為である。」を合言葉に、冷蔵庫で余りがちな食材、つまり残り食材をどれだけ工夫して料理できるかという能力に焦点を当て、企業単位でチームを組んで競う。

2019年は8~10月にかけて開催され、雪印メグミルクやビックカメラ、東京都など48チームが出場。第2回となる今年は、オーガニック料理教室G-veggieが優勝した

画像出典:CREATIVE COOKING BATTLE公式サイトより

審査ポイントには「料理後に出る生ゴミの量(=使い切れた割合)」も含まれており、ゴミの重さが少ない順に点数が加点されるという。「食品ロス対策の企画は、なんだかケチな感じがする」というマイナスイメージを、「工夫する面白さを知る機会」にすることで、自然な“気づき”を促していく。

食品ロス問題から食文化の再構築へ

ここまで見てきた通り、食品ロスを解消するビジネスは、いずれも“利益率の良さ”よりも“問題意識の高さ”によって誕生したものがほとんどだ。

果たしてビジネスとして成立するのか。食品ロスの解消につながる「tabeloop」などのサービスを立ち上げてきた前出の山本和真氏に話を聞いた。

バリュードライバーズ株式会社の山本氏。お菓子をまとめ買いできる「SWEETS POCKET」や「tabeloop」の立ち上げに携わってきた

「私たちの場合は、代表が飲食業界、私が食品の卸しの仕事に携わっていたことが大きいですね。例えば外食チェーンでは、基本的に3カ月毎にメニューが変わります。すると、そのチェーン用に製造した業務用食品、専用のソースや調味料が、3カ月で必要なくなります。私たちは、店で、工場で、倉庫で、3カ月毎に大量に廃棄される食品を何年も目の当たりにし続けてきました。もったいなくてどうにかしたいと思っていましたが、自分たちで買い取ったところで消費できる量ではない。そうした背景があって、何かできないかと模索していたのです」

先に立ち上げたのは、『SWEETS POCKET』というサービス。大量に売れ残ってしまったお菓子をどうにかできないか、というメーカーから相談を受けたことがきっかけだった。

「そこで、売れ残りや賞味期限間近のお菓子をまとめて、安く購入できるサービスを始めました。そのうちに、お菓子以外で『自分たちの食品も扱ってもらえないか?』という相談を多くいただくようになったので、『tabeloop』事業をスタートさせたのです」

最初にスタートさせた「SWEETS POCKET」。さまざまなお菓子がまとめて購入できるのは、消費者にとってはうれしいポイントだ

画像出典:SWEETS POCKET公式サイトより

その後、食品メーカーなどとやり取りするうちに、製造現場より前の食材の生産地でも大量廃棄があることを知った山本氏。ある時、千葉県の生産者のもとを訪れたことをきっかけに、加工品以外も取り扱うことにしたという。

「その年は、ダイコンが豊作だったんです。でも、たくさんできたからといって、全て流通させれば市場価格が暴落します。それを防ぐために、市場にすら届けられないダイコンが大量に存在していたのです。しかも、もし収穫して、箱詰めして、届けて、結果的に買われないとなれば、ダイコンを抜くための人件費やダンボール代といった経費は、全て生産者持ち。だから余剰のダイコンは全て畑に埋まったままでした。中には形が悪いという理由で出荷できないものもある。でも、農家さんが『野菜の形っていうのは、全部個性なんだよ』とおっしゃっていて、開眼させられましたね。それ以降、生産地をひんぱんに訪れるようになりました」

現在、農家の平均年齢は60歳を超えると言われている。実際に訪問した先で、本来なら収穫のタイミングなのに、体力の問題で収穫できずに売り時を逃してしまった野菜、味は変わらないのに少し傷がついてしまったがために廃棄される果物が多くあることを目の当たりにしたという。

「スーパーに行けば150円程度で売っていますが、ダイコンって、作るのがすごく大変なんですよ。当たり前に購入しているだけでは、その背景は分からない。これは農業だけでなく、漁業にも同じことが言えます。1尾100円程度でアジは買えますが、それをスーパーに陳列させるまでにはすごい労力がかかっている。

私たち、現在の40代以上の大人たちは、子どものころに『もったいないお化け』というCMを見て育った世代ですよね。家庭でも『食べ物を粗末にするな』と厳しく言われて、育った人も多いかもしれません。いつからかあのCMが流れなくなったのは、ある意味で日本が豊かになったということではないでしょうか。

私の幼少期にあったような、農家さん(生産者)とおすそ分けをしてもらうご近所さん(消費者)が直接つながっていたころとは違い、現代は双方の物理的・心理的な距離が遠くなった。手元に届くまでの過程を知らなくても、なんでも手に入ります。食べ物が生産され、手元に届くまでの生産者の取り組みを知り、食べることは命をいただくことと再認識し、食べ物の大切さを知って、選んでほしい。その結果が、食品ロスを減らすことにつながるはずだと考えています」

生産者と直接話をする中で、日本の食の生産現場に危機感を覚えたという山本氏。今後は日本の生産現場について知ってもらう活動もしていきたいと話す

「食に対する意識を変えたい」という思いで、山本氏らは事業に取り組んでいるが、もし食品ロス問題を根本的に解決できたら必要がなくなるビジネスとも言える。

「日本で食品ロス解消のために起業した人たちは、『食べ残しはもったいない』という日本ならではの食文化、食への意識が復活すればいいなという思いがあるのだと思います。だからこそ、変化を起こしたいし、きっと変化は起きていく。儲けじゃないんですよ。それに、その先は『食文化の再構築』につながるようなビジネスへと転換させていければいいのです」

同社では今後、既に展開している都市圏と産地をつなぐマルシェの他、登録されている一次生産品を自社で加工食品にして販売することや、生産現場を見る旅行プランの運営、食育コンテンツの配信といった、さまざまなサービスの展開を計画しているという。

「今、『1枚2万円のアジフライを食べよう』という企画を行っています。三重県に行って、船に乗って、実際にアジを自分で取って、それを調理して食べるというもの。未来を担う子どもたちに日本の食文化の素晴らしさを残すために、まだまだできることはたくさんあると思っています」

日本人が本来持っていた食べ物を大切にする気持ち。そこに立ち返ることで、食品ロス解消では、世界をリードしていけるのかもしれない。

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