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2020.01.17
“迷宮の駅近辺”をもっと便利に! 周辺施設と連携する渋谷スクランブルスクエアのエネルギーへの取り組み
【東京の新ランドマーク】渋谷スクランブルスクエア
“100年に一度の再開発”と言われる渋谷駅周辺の再開発──。そのシンボルとなる施設「渋谷スクランブルスクエア」は、全3棟のうち第1期の東棟(他は第2期の中央棟・西棟)が2019年9月に完成、11月1日より開業している。地上47階、地下7階の大規模複合施設の詳細を渋谷スクランブルスクエア株式会社・上田佑斗管理部担当課長に伺うと、渋谷の新ランドマークのエネルギーをめぐる取り組みが見えてきた。
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東急、JR、東京メトロ、鉄道会社の力を結集
2014年6月に着工した渋谷スクランブルスクエアは、高さ約230mと渋谷地区最高峰の複合施設。下層(地下2階~地上14階)は商業施設、上層(17~47階)はオフィスなのだが、実は同棟はこの他のスペースが特徴的なのである。
「普通はこれにホテルが加わるのですが、私共は産業交流施設や展望施設を充てることで、新たなビジネス・ソリューションを、そして人々のにぎわいを生み出せる特徴を包括させました。よりさまざまな方が訪れ、多彩な使い方ができる施設になっていると思います」と渋谷スクランブルスクエア株式会社の上田佑斗管理部担当課長は話す。
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渋谷スクランブルスクエア第1期は、東急東横線渋谷駅の跡地に建てられた。なお、東急東横店南館・西館もことし3月に閉館し、解体後に第2期(中央棟・西棟)の建設が始まる予定
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「渋谷の中心に観光の目玉を」という思いから設置された最上部の展望施設“SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)”。360度パノラマビューでオープンエアの空間が広がる他、46階には渋谷のさまざまなビッグデータをリアルタイムで可視化するサイネージが設置されている
(C)渋谷スクランブルスクエア
開発は渋谷駅改良工事と並行し、大規模かつ長期的な事業となった。
「当施設は東急、JR東日本、東京メトロが共同事業として進めることで、3社それぞれが点在・所有している敷地をまとめてスムーズに開発を進めることができました。併せて、東急東横線が地下化され、ことし1月に東京メトロ銀座線のホームが移設、JR埼京線のホームも年内に移設されます。この際、地下の路線と地上の路線間のスムーズな移動を担うのが、当施設を貫通する縦軸動線“アーバン・コア”です」
渋谷駅周辺は道玄坂から宮益坂にかけてすり鉢状の地形になっている。地下鉄である銀座線が地上3階にホームを構えるのもそのためだ。
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宮益坂下交差点付近から見た東棟。手前に新設された銀座線渋谷駅に沿い、主要な施設の間を結ぶ歩行者デッキとアーバン・コアが構築されている(2019年12月撮影)
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17階のオフィスロビーも天井が高く、開けた眺望が楽しめる。「元々渋谷で働いていたという方々からも、“駅のほぼ真上から下を見下ろせることが新鮮”という声を頂いています」と上田氏。オフィスには株式会社サイバーエージェントや株式会社ミクシィなどさまざまな企業が入居する
(C)渋谷スクランブルスクエア
この高低差を、地上2~3階で施設や駅を通貫する歩行者デッキで改善。アーバン・コアによって坂の昇降なく渋谷の東西の移動が可能となる。
「階の移動は生じるものの、お客さまにストレスを感じさせない動線になっています。銀座線の新駅舎はアーバン・コアと直結し、埼京線の新しいホームも東棟の西側に隣接しており山手線のホームと並ぶので、当施設周辺はより便利になるはずです」
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地下1階に接する東口地下広場。鉄道各線への通路が合流するこの場所は、実は“渋谷川”が地下水路として南北に流れている(画像右上の赤囲み部分)。建築面において、渋谷スクランブルスクエアは敷地内を川が縦断している点も大きな特徴
CO2削減を促す、国道下の地下トンネル
駅の他にも渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、渋谷マークシティといった隣接複合施設への動線の中心に位置する渋谷スクランブルスクエアは「渋谷の中心地区へ車をできるだけ入れることなく、歩行者優先の施設を目指しました」とも。
「歩行者が安心・安全に、ストレスなく街を回遊できるよう、車は周辺エリアで降りてもらい中心部へは徒歩で…という構想を渋谷区が進めています。当施設もその構想にのっとり、来客用の駐車場は建物内部には備えていません」
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「商業施設の駐車場は法令上整備が必要ですが、渋谷ヒカリエをはじめとする周辺施設の駐車場に必要台数をまかない、一般車両が明治通りや国道246号線を越えることなく駐車し、渋谷スクランブルスクエアへ訪れることができるよう体制を整えました」と上田氏が解説する
とはいえ、入居するオフィス向けに、そして商業施設の荷さばき用として駐車場は必須だ。
「地下3~4階に専用駐車場を設置しています。駐車場へは東棟から直接ではなく、渋谷ストリーム側から国道246号線の下に掘られた地下通路を通って入車します」
国道246号線を挟んで南に立つ渋谷ストリームに入口を設け、施設を囲う幹線道路をまたぐことなく入出庫と荷さばきができる。そして一般車両も周辺への駐車を促すことで「街の中心部における渋滞の緩和や、車から排出されるCO2削減にもつながるのではないかと思います」と上田氏。
「商品の大量搬入は複合施設の運営において重要なポイントの一つです。渋谷スクランブルスクエアでは基本的に搬入者は荷下ろしだけで、館内は専属の物流スタッフがまかなう仕組みとなります。高回転で効率よく駐車場が運用できているのではないでしょうか」
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東棟地下3~4階駐車場へと続く通路。渋谷ストリーム側(写真奥)とは国道246号直下のトンネルでつながっており、荷物を積んだトラックが次々と搬入していく
地下通路を介し、隣接施設と“熱融通”で連携
地下通路はエネルギーの活用においても大きな役割を担う。
「当施設は渋谷ストリームと熱融通を行います。熱融通とは、建物間で熱源設備を共同利用することです。2施設はおのおので熱電併給システムを保有していますが、例えば、当施設が発生させた熱エネルギーの余剰分を渋谷ストリームへ供給でき、またその逆も可能です。極端な例ですが、いずれかの施設のシステムだけで融通し合える日はコスト削減にもつながります」
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地下トンネルの路面右側、四角い蓋の下(画像の赤囲み部分)では、渋谷スクランブルスクエアと渋谷ストリームの間を温水管・冷水管が結んでいる。この管を介し、2施設は熱融通で連携している
ちなみに、熱電併給システムによって作られた温水・冷水は、渋谷スクランブルスクエアの最下層、地下6・7階に蓄えられる。ちなみに、地下7階は地上から43m直下になる。
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地下6階は機械式立体駐車場のパレット(駐車スペース)と機械室(写真)で構成。中水(飲用以外に用いられる水)処理機の右奥、壁の向こう側には地下7階まで続く温水備蓄槽が、さらに奥には冷水備蓄槽が設置されている
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地下6階に埋め込まれた温水熱交換器。温水は39℃前後、冷水は9℃前後で、施設内にて飲用以外の用途で活用されるほか、地下通路を介して渋谷ストリームとの相互供給も可能となる
「一般の方が立ち入ることができるのは地下2階までとなり、地下3階が荷さばき駐車場、地下4階がオフィス駐車場、地下5・6階は駐車場のパレット、地下6・7階が蓄熱設備になっています。“地下7階まである”とお話しすると、やはり結構驚かれますね(笑)」
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オフィスロビーのある17階直上、18階にも施設を支える機械室および電気室を設置。室内には発電出力1500kWの自家発電設備を2基設置する。基本は1基の稼働だが、夏季などに施設の電力消費が4500kWを超えた場合、もう1基も稼働対応する予定とのこと
渋谷スクランブルスクエアのこれから
東棟は展望施設「SHIBUYA SKY」の一部敷地にソーラーパネルを設置。
また、ビルの外装に遮熱効果を高めるデザインを取り入れるなどの対策や工夫を凝らしている。
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「ソーラーパネルはサーチライト脇に若干数設置されている程度ですが、少しでも緑化や太陽光発電を取り入れ、小さなことの積み重ねからと考えています」と上田氏
(C)渋谷スクランブルスクエア
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低層部の外装は新国立競技場も手掛けた隈研吾氏のデザイン。「『街のダイナミックな“流れ”を可視化しつつ、熱負荷の軽減を担ったチャレンジングなデザイン・ディテール』と伺っています」(上田氏)
2028年度に開業予定の中央棟・西棟は、2019年12月に開業した複合施設・渋谷フクラスと地下車路ネットワークによる搬入出の連携を行う予定だ。
渋谷フクラスは東急不動産が運営する別プロジェクト。施設・企業間の連携に先見的な渋谷ならではの取り組みと言える。
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中央棟(地上10階・地下2階)はJR渋谷駅ホーム直上・直下、西棟(地上13階・地下5階)は東急東横店の跡地に建てられる。両棟共に商業施設としてにぎわいを生み出す役割を担う予定
「同一グループ企業でつながっている部分はあるものの、そもそも渋谷ストリーム側に地下駐車場の入り口を造っていることを含めて、異なる複合施設の連携は珍しいかと思います」
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「行政へのさまざまな提案も渋谷ストリームや渋谷フクラスと一緒に行っています。熱融通が実現できたのも一体的なエリアマネジメントに取り組んでいるからこそ」と上田氏。その思いを裏付けるように、取材場所だった会議室には新旧の渋谷駅周辺の施設写真が並ぶ
こうした取り組みは「渋谷のさらなる可能性を感じているから」とのこと。
「渋谷には多くの商業施設がそろっていますが、駅周辺の小売業の販売額は新宿や池袋の方が大きいのです。そういった現状を踏まえても、渋谷もまだまだにぎわいを生み出し、小売業、サービス業が発展する可能性があると考えています。モノがなかなか売れない時代、Eコマースが発達した時代に、新しい渋谷でどういった商品・サービスを、そして観光を提案できるのかがこれからの課題ですね」
2020年からこの先、新ランドマークを中心に、渋谷は“誰もが楽しめる街”へ進化するだろう。
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