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2020.02.03
横浜駅の最終形態が見えてきた!? 効率的なエネルギー活用で未来を創造する2つのランドマークが今夏完成
【横浜の新ランドマーク】JR横浜タワー・JR横浜鶴屋町ビル
JRほか計6社が乗り入れ、一つの駅に乗り入れる鉄道事業者数が日本最多である横浜駅。その西口エリアの開発の目玉となるビルが「JR横浜タワー」と「JR横浜鶴屋町ビル」だ。魅力的な商業施設が入るばかりではなく、再生可能エネルギーの導入や緑化率を向上させることで環境問題の啓発促進に寄与するほか、地震や津波などの大規模災害への対策も考慮した建物になっている。この新たな2つのランドマークが担う役割について、東日本旅客鉄道株式会社の藤ノ木 彰担当課長と株式会社JR東日本建築設計の青木豊実設計長に話を伺った。
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大規模なプロジェクトになったが故の大きな責任
2014年の着工から5年──。
JR横浜駅西口の“新しい顔”となるべく、「JR横浜タワー」(ことし5月30日<土>)と「JR横浜鶴屋町ビル」(同6月5日<金>)がついに完成する。
駅と直結し、地上約135mという圧巻の高さを誇るのが、商業施設エリア(地下3階~10階)とオフィスエリア(12~26階)からなる「JR横浜タワー」だ。
「2つの建物は距離にして170mほど離れているのですが、そこを地上5~6m部分の歩行者専用デッキでつなぐべく、現在、当社と他の事業者とで両方向から同時に施工を続けています。また、歩行者のネットワークで言うと、『JR横浜タワー』は横浜駅きた通路、横浜モアーズ、JR横浜駅中央北改札ともつながるので、より円滑な移動が可能になり、西口周辺の利便性向上に貢献できるのではと期待しています」(藤ノ木課長)
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景観分野の理念である「都市環境への配慮の体現、横浜エリアの玄関口としての風格を兼ね備えた、“環境未来都市よこはま”を象徴する顔作り」を見事に具現化したスタイリッシュな外観が目を引く(写真は「JR横浜タワー」)
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「JR横浜タワー」には「CIAL」「NEWoMan」の商業施設やエンターテインメントコンプレックス「T・JOY」が入る。JR横浜駅からのアクセスの便利さから気軽に立ち寄ることが可能だ
今回のプロジェクトは、「国際都市の玄関口としてふさわしいまちづくり」の指針となる計画「エキサイトよこはま22」(横浜市都市整備局による詳細はこちら)のガイドラインに沿って進められた。
横浜駅周辺地区において、さらなる国際化や環境問題への対応・駅としての魅力向上・災害時の安全性確保などに取り組むことを提案段階から盛り込み、公共貢献を踏まえた大規模なものへと昇華した経緯がある。
「『エキサイトよこはま22』のリーディング・プロジェクトである今回(2棟)の計画でしたが、ガイドラインにのっとったことで約135mの超高層建築が実現しました。まさに“横浜の顔”となる新たなランドマークで、圧迫感のない外観デザインや吹き抜けのアトリウムなど、魅力的な空間づくりに努めています」(藤ノ木課長)
もちろん、環境への先進的な取り組みの実施も、今回のプロジェクトの大きな意義となる。
「当初から、省エネルギー、CO2排出低減を実現する建築計画でした。太陽光発電やLEDの積極的な導入をはじめ、雨水・中水をトイレ洗浄水などへ利用する設備システムの構築、周辺エリアの特徴を存分に生かした“自然換気・自然採光”の取り入れもその一環です」(青木設計長)
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高層棟における自然換気・自然採光の取り入れは、今後、他エリアでの大型施設建設の際にも積極的に導入されるであろう試みだ
「最も特徴的なのがオフィスエリアと、4階分の吹き抜けのあるアトリウムの自然換気で、特に中間期(春・秋)の空調負荷軽減により省エネに寄与します。ビルの南南西から東北東まで年間で約51%吹くとされる、横浜ならではの卓越風(そのエリアで、年間で最も多く吹く風向の風)を上手く取り入れます。どこから風を入れて、どこから排気すれば十分な換気が可能なのかシミュレーションを重ね、開口の大きさや排気位置などを検討してきました。ビルの高層棟の外壁に凹凸があるのもその検討の一案で、圧迫感をなくすというデザイン面だけではなく、風の環境を整えて安定させ、より排気を促しやすくする意図もあるのです」(青木設計長)
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1~4階にわたる吹き抜けが圧巻の「アトリウム」は今回の計画の目玉設計
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今回話を伺った東日本旅客鉄道株式会社 東京支社 事業部 首都圏えきまち創造センター 横浜グループおよび横浜支社 事業部 不動産活用課の藤ノ木 彰担当課長(右)と、株式会社JR東日本建築設計 商業設計本部 商業第2部門の青木豊実設計長
建物高層棟には日射をそのまま室内に通さず、光は取り入れながらも日射熱を遮る加工が施された「Low-Eガラス」を採用するなど、抜かりがない。
続けて青木設計長が説明してくれたのが、再生可能エネルギーの積極的な導入について。その一つが「ソーラークーリングシステム」だ。
「屋上に設置された蓄電式太陽光パネルは、主に館内照明などの電力エネルギーとして活用しますが、空調熱源としては、太陽熱を利用した『ソーラークーリングシステム』も用います。この熱源システムには『マイクロコージェネレーション』も組み合わせており、ガスエンジン発電機により発生する廃熱も、冷暖房などに有効利用します。このように、通常は発生してもそのまま捨ててしまう熱エネルギーも積極的に利用しています」(青木設計長)
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エネルギーロスを軽減する『マイクロコージェネレーション』の概要図。環境負荷の低い天然ガスや、カーボンニュートラルなバイオガスなどのクリーンエネルギーでガスエンジン発電機を稼働させ、その際発生する熱を給湯や冷暖房に有効利用する。近年では飲食店などへの導入も多く見受けられる注目の省エネ装置だ
再エネ導入だけでなく、緑化やエネルギー節減にも配慮
また“うみそらデッキ”と名付けられた屋上広場をはじめとした、大規模な緑化計画の実施も忘れてはならない。
「緑化率に関しては、市条例の定める数値の1.5倍を確保しています。利用客に安らぎや癒やしを与えるだけでなく、ヒートアイランド対策の推進やCO2排出低減の実現に向けてこだわった部分でもあります。ちなみにこだわりで言うと、こういった駅隣接の施設には非常に珍しいのですが、サクラやカエデといった植物も配置しました。やはり日本には四季があるので、移りゆく季節を視覚的にも楽しんでいただければと思っています」(藤ノ木課長)
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地上12階の屋上空間に造られる、緑あふれる落ち着いた雰囲気の「うみそらデッキ」。西口広場から屋上の緑化の視認が得られるよう、高木も配置される
一方の「JR横浜鶴屋町ビル」は、五輪 東京大会開催時のインバウンドも見据えたホテル施設と、550台の収容が可能なパーキングを中心に構成される。これほどの規模のパーキングとなると、“入出庫待ち渋滞”による余分なCO2の排出や交通渋滞も懸念されるが、もちろんそこにも対策は講じられている。
「パーキング渋滞の要因の一つとして、入り口と出口のゲート数が挙げられます。今回の『JR横浜パーキング』はそれぞれのゲートを2つずつ設置し入出庫待ちの軽減を図ります。また、幹線道路から流入する車をスムーズに迎え入れるべく、車線を一つ増やす計画です。道路本線の減速が回避できるので無駄なストップ&ゴーもなくなり、エネルギーの節約にもつながると考えています」(藤ノ木課長)
「エネルギーの節約で言うと…」と、藤ノ木課長が続ける。
「今回の工事は『逆打ち工法』とよばれる施工法を採用しています。通常この規模の工事を行う際は地下から造り、上階へと建てていくのが一般的なのですが、今回は1階の床をまず最初に造り、そこから地上階と地下階へとそれぞれ同時に進めていきました。これにより、施工期間が大幅に短縮でき、工事全体にかかるエネルギーの節約もなされたと考えています」(藤ノ木課長)
「こういった施工技術の向上が、“エネルギー”や“環境”といった面に大きく寄与しているのは間違いないですね」(青木設計長)
少しでも“楽しめる場所”の提供を目指す
「JR横浜タワー」「JR横浜鶴屋町ビル」は大規模な地震など災害への対応も万全だ。
「JR横浜タワー」では、防災センターの地上2階への設置や1万人の一時滞留者、3000人の帰宅困難者を受け入れ可能なスペースを確保している。1989(平成元)年から横浜に住み続けているという藤ノ木課長も、東日本大震災時のJR横浜駅周辺の混乱は「昨日のことのように脳裏に焼き付いている」という。だからこそ、有事の際に役に立ち、安心感を与えられる施設造りというのは、目指すべきところでもある。
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近年問題視されているゲリラ豪雨による浸水への対策として、ピーク時に200m3/haを貯留できる雨水貯留槽も設置。また、機械室も地下だけでなく11階にも設けるなど有事への対応も万全だ
そんな藤ノ木課長に、東日本旅客鉄道の社員という立場ではなく、“いち横浜市民”として、「JR横浜タワー」と「JR横浜鶴屋町ビル」への期待を聞いた。
「これは会社を離れて、あくまでも個人的な意見ですが、周りの都市や地域、例えば川崎駅周辺をはじめ、湘南方面や関内地区、みなとみらい地区…全て開発が進み魅力的なエリアになっていますよね。そんな中で横浜駅周辺は、商業集積だけは負けないと思っています。買い物をするにも便利で効率的ですし、言い方を変えると駅周辺で何でもそろう、便利な街です。今夏オープンする両施設も、微力ですがその一翼を担えればと考えています。
しかし、そういった利便性はあるのですが、ゆったり時間を過ごしたり、小さな子どもを連れて半日過ごせる街なのか?と問われると、決してそうではありません。だからこそ、最短距離で効率よく移動して買い物をするだけではなく、立ち止まって景観を眺めたり、植物をめでてみたり、多く設置される椅子やソファでくつろいでみたりといった、少しでも“楽しめる場所”になってほしいですね。これからも皆さんの“日々生きるためのエネルギーの充電”ができるような施設造り・街づくりを目指します」(藤ノ木課長)
間もなく完成を迎えるJRの2棟の建物が、横浜の新たなランドマークとして魅力を存分に発揮してくれるはずだ。
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