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Tech世代の学校

プロがオンラインで部活を育てる! ソフトバンクが目指す「部活指導」の効率化

部活動の教員負担軽減×アスリートのセカンドキャリア形成でwin-winな関係を生み出すEdTech

EdTech(教育×テクノロジー)の分野では、どうしても教室の中で行われる勉強の効率化や均一化に目が行きがちになる。しかし、教育の現場という意味では、「部活動」もまた改革が求められている現場の一つだ。そんな部活動に焦点を当てたEdTechこそ、ソフトバンク株式会社が2017年から提供している「ICT部活動支援」である。部活動指導がオンライン化することのメリットについて、話を聞いた。

オンライン学習は生徒だけでなく教師にも必要

新型コロナウイルスの感染拡大によって、教育現場で混乱が続いている。“学校の在り方”に早急な変化が求められる中、授業だけでなく、部活動の場面でもさまざまな試行錯誤が繰り返されているようだ。その波にもまれるのは生徒だけでなく教員も同じ。EdTechがそんな苦境を打破するために一役買ってくれるのではないかと期待されている。

ソーシャルディスタンスを保ったり、無観客や最小限の人員で試合を行ったり、コロナ禍ではこれまで以上に“部活動の在り方”に神経を使わなければならず、指導を担う教員の負担は大きくなっている。

スポーツ庁が2017年に公立中学校の運動部担当教諭を対象に実施した「運動部活動等に関する実態調査」によると、部活動の担当教員のおよそ半数が「校務が多忙で指導できない」「心身の疲労・休息不足」「指導力不足」といった悩みを抱えているという結果が出ている。

現在の社会状況下で部活動を行えないという問題以前に、指導教員が抱える悩みは大きい

資料提供:ソフトバンク※出典:スポーツ庁『平成29年度「運動部活動に関する実態調査」』より

教育現場における“労働環境”の改善を求める声は多く挙がっているものの、教室内での教育改革が進められている反面、部活動はやや後れをとっていることの表れだろう。

アプリを介してプロが部活動を遠隔指導

そんな中、現場の環境変化に一役買っているのが、ソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク)が展開している指導をサポートする「ICT部活支援活動」の取り組みだ。

これは、野球や卓球、バレーボールなど各競技の専門コーチが、専用アプリを使って生徒たちのフォームなどを動画でチェックし、添削やアドバイスを行うというもの。

所属するコーチ陣も、福岡ソフトバンクホークスに所属していた元プロ野球選手の帆足和幸氏、元女子バレーボール日本代表の成田郁久美氏などプロがそろう豪華さで、競技や指導経験に乏しい教員にとって心強いサービスになっているという。

競技を専門とするコーチが遠隔で部活動の顧問をフォローアップ。競技指導のアシストをしてくれる

資料提供:ソフトバンク

ソフトバンクで同サービス運営を担当する村山裕紀氏は、その特徴や今後の展望をこう話す。

「統計によると、中学校の部活動を担当している教員のおよそ半数が体育の教科担当ではない、もしくは担当競技の経験がないことが分かりました。そして、この半数のうち約40%が専門的技術の指導力不足を実感しているのです。専門的な技術を教えるためには、教員にも練習や努力が必要となります。結果、自分の時間がさらに圧迫されていき、私生活だけでなく教室での学習指導に影響が出ることも懸念されます。ICT部活動支援は、こうした問題の解決を目指して取り組んでいます」

現在、ICT部活動支援を通した活動は、「ビジネスとしてよりも社会貢献としての意義が大きい」と話すソフトバンクの村山氏

このサービスのポイントは、「時短練習」「効率化」「外部専門家との連携」の3点。私立の部活強豪校であれば専門のコーチを付けることができるが、公立学校にその人件費を捻出することは難しい。その点、ソフトバンクのICT部活動支援は、遠隔指導と遠隔指導システムを1部活につき1万6000円から(専門コーチによる遠隔指導と遠隔指導システム「スマートコーチ」を利用する場合)利用可能だ。

「2020年8月時点で、50自治体、147の部活動にICT部活動支援を利用いただいており、そのほとんどが公立校です。また、部活動だけでなく、一人の担任が全ての教科を教える小学校では、体育の授業に活用されている例もあります。また、コロナ禍で登校が制限されていた2020年3~6月にシステムを無償提供したところ、資料請求やトライアルの申し込みを数多くいただきました。今後も利用する学校が増えるのではと期待しています」

最も大きな強みが、アプリ上で単に動画とコメントのやり取りができるだけでなく、コーチが動画に対して書き込みなどの加工ができる点にある。重心の方向、スイングの軌動、手や足の上げ下げの位置など、細かな指導を可視化できる仕組みは、あらゆる競技において有効に働くだろう。

「同じフォームを一定の頻度で送ると、レッスン履歴が残り、成長が比較できます。また、遠目で全体を撮影すれば、フォーメーションや練習メニュー作りのアドバイスを受けることも可能です。動画への加工とコメントの送付が1つのアプリ内で完結できるので、指導するコーチたちの負担も大きくはありません。動画が送られてきたらすぐに添削、指導できることに意義があると考えているので、操作性の向上には注力してきました」

アプリ画面の一部。指導するトレーナーは、送られてきた動画に直接指で書き込むことができる

部活動版の家庭教師、アスリートのセカンドキャリアに

さらにこのシステムを利用し、ソフトバンクは宮城県内の体育学部を有する大学との連携も進めている。ICT部活動支援を通して、教員や指導者を目指す学生が中学生たちを指導するという取り組みを行っているのだ。

「大学との連携は“部活動版の家庭教師”のようなイメージです。将来、教員や指導者を目指す学生たちにとっても指導の練習になるので、win-winの関係が築けているのではないでしょうか」

コーチとは短いメッセージでのやり取りも可能

そもそも部活動をICTで支援するという試みは、アスリートのセカンドキャリアに寄与する目的で商用展開していた遠隔指導アプリ「スマートコーチ」が基盤となっている。スマートコーチを活用した社会貢献施策としてソフトバンクが企画したのが、「ICT部活動支援」だった。

こちらでも、現役を退いたアスリートがそれまで培ってきたノウハウを生かせる場が少ないという問題と、部活動を担当する教員が知識不足に苦労しているという問題が見事にマッチしたのだ。生徒にとっても高いレベルの技術が学べるという大きなメリットがあり、学ぶ機会の地域格差をなくすきっかけにもなっている。

しかし、まだまだ課題も多いと村山氏は続ける。

「現在は主に、担当教員とコーチとの間でデータのやり取りを行ってもらっています。そのため、先生が動画を撮影したり、送付をしたりするという作業が必要になるのです。慣れれば1つの動画を送付するのに10分もかかりませんが、慣れるまでは時間がかかってしまう。意欲の高い先生は積極的に利用していますが、そもそも部活動を“負担”と感じている先生たちに使ってもらうことが目的のため、そうした先生たちにその“負担”を減らすための取り組みであるということを根気強く伝えていく必要があると感じています。また、生徒と専門コーチが直接やり取りできるようになれば、先生の負担もぐっと減るはずです。そのためには学校や保護者とのより細かい取り決めが必要ですから、今後はそういった点でもしっかり相談していく必要もあります」

より使いやすいツールを目指し、村山氏らはシステムの改良を続けている

「私たちは、ICT部活動支援が部活動の課題に必ずや寄与できるものだと信じています。必要に合わせてアップデートを繰り返しながら、多くの学校で使ってもらえるよう、取り組みを続けていきたいですね。GIGAスクール構想(国が進める学校改革)によって学校でタブレットが1人1台支給されるようになったときには、利用アプリの選択肢の一つとして、積極的に使ってもらえたらうれしいです」

生徒はより高いレベルのスキルを獲得でき、教員は負担軽減と指導方法の見直しを図るきっかけとなるICT部活動支援。新しい時代の部活動は、教育現場の改革とともに、学校全体を活性化させていくのかもしれない。

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