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2021.05.18
生活のデータで家電が家を最適化! スマートホームの未来
家の中のあらゆる機器をインターネットでつなぎ、AIが分析してフィードバックする、住宅の新しい形
さまざまな業種が市場に参入している「スマートホーム」。家の中の機器がインターネットでつながることで生活をより便利にしてくれているが、スマートホームの可能性はそれだけにとどまらない。それらの機器から集められたデータを活用することで、さらなる便利が手に入るという。現在Dynabook株式会社の子会社の一つである株式会社AIoTクラウドが開発するサービスを通して、スマートホームの未来を探った。
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家から得られるデータを役立てるスマートホームの次なる価値
「スマートホーム」市場は、現在大きく3つに分けられる。
1つ目は家庭のエネルギー管理を行うHEMS(Home Energy Management System)で電力消費の見える化や機器の自動制御を行うスマートホーム。主に住宅メーカーが新築一戸建て市場で展開している。
2つ目はGoogleやAmazonといったIT企業によるスマートスピーカー市場。
そして3つ目は、家電・ガス機器などIoT(モノのインターネット)機器によるスマートホーム市場、ここに参入するのは主に電機メーカーだ。
各市場が社会に浸透しつつあり、家庭内に連携できる家電製品や住宅機器が増えていることは間違いない。
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現在は3種のスマートホームが、それぞれの市場で各メーカーなどから展開されている
だが、AI(人工知能)やIoTを用いたサービスの開発を進める株式会社AIoTクラウド プラットフォーム事業部の松本 融事業部長は、現状について次のように話す。
「確かにスマートホームの市場はそれぞれ拡大していて、インターネットに接続できる家電や機器も増えています。そんな中でどのような新しい価値を生み出せるのかが、この先問われます」
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「家電から得られるデータには、今後の一般家庭の生活を大きく変えるほどの可能性がある」と言う松本事業部長
AIoTクラウドが考えるスマートホームの新しい価値は、IoT機器で集めたデータをAIで解析し、ユーザーにフィードバックすることで生活の質を高めていくということだ。
そもそも「AIoT」という言葉は2015年当時にシャープ株式会社が提唱したもので、AIとIoTを組み合わせた造語。IoT機器から取得できるデータをクラウドに蓄積してAIが人の行動を学習し、解析することで最適な行動を提案するというコンセプトを一言で表している。
シャープは2015年以降、このAIoTを実現する機器やサービスの開発を続けてきた。AIoT機器は、キッチン家電をはじめ、テレビ、洗濯機、ペット家電に至る545機種以上(2021年4月時点、2016年からの累積)に拡大しており、多くのAIoT機器を一元化して操作できるアプリ「COCORO HOME(ココロホーム)」を展開している。AIoTクラウドは、こうした技術の開発を担ってきた専門部署が2019年に分社独立し、2021年1月にDynabook株式会社の子会社となった。
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COCORO HOMEの管理画面。ユーザーの習慣を学習し、一括操作などの提案も
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シャープのAIoT機器は2021年4月時点で累積545機種を超えている
「多くの家庭では複数のメーカー製品を併用しているのが普通でしょう。元々シャープ製品だけの閉じたサービスではなく、お風呂やセキュリティーといったシャープが手掛けていないジャンルともつなげられるオープンなサービスを目指していました。そのためにはシャープの中にいるよりも別会社にした方が、世界観をより広げられると考えたのです。既にCOCORO HOMEで大阪ガス様やリンナイ様、セコム様など、他業種との連携も進んでいます」(松本事業部長)
メーカーの壁を越えるAIoTサービスは実現するのか
これまでスマートホームの社会実装に貢献するサービス開発を行ってきたAIoTクラウド。松本事業部長が「裏方」と言うように、会社としての主軸は蓄積してきたノウハウを用いてシャープを含むメーカー各社やサービス事業者をサポートし、つなげていくことにある。
その中でこれからスマートホームの進化の礎となるのが、スマートライフ構築支援サービス「AIoT LINC」である。簡単にいえば、製品のAIoT化、クラウド構築、データのAI分析や利活用、ユーザーインターフェースの強化など、あらゆる方面でスマートホームへの最適化を図ってくれるソリューションサービスだ。
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AIoT LINCは直接的に家庭内で利用されるサービスではないが、回り回って一般ユーザーが恩恵を受けることになるはず
例えば、個々の製品ごとに作っていたアプリの管理画面をクラウドで連携させる仕組みや、先述したCOCORO HOMEでの他社間連携、シャープ製品の抽出データによるマーケティング活用といったサービスが挙げられる。その他、大手通販ネットショップであるAmazon Japanと連携し、ユーザーが使う消耗品の消費量をIoTセンサー機器で計測し、不足するとクラウドから自動的に再注文されるスマートリオーダーサービスの開発支援も手掛けている。いわば、スマートホームに関するバックヤードを、全て作り込んでくれると考えてもいい。
ここで注目したいのが、AIoTクラウドはガスなどシャープが手掛けていない他業種の製品はもちろん、競合とされる同業他社製品との連携も目指していることにある。
「ハードウェアの販売は他の電機メーカーとの競争領域ではありますが、データを使って生活支援を行うのは協調領域なので、手を組んでやっていきたいと考えています」(松本事業部長)
ユーザーからすれば、どの家電を購入してもまとめて管理できるようになるならありがたい限り。ただ、競合他社から果たして賛同は得られるのだろうか。これを考える上で知っておきたいのが、経済産業省が2017年に打ち出した「スマートライフ政策」だ。
この政策はデータを提供する機器メーカー、データを収集し分析するプラットフォーマー、そしてデータを活用してサービス化する事業者の3者によって、データから社会課題を解決できる新たな市場を生み出すという業界横断型の取り組みを促すものである。
AIoTクラウドが考えるスマートホームに似ていると思うだろう。それもそのはず、実はAIoTクラウドはこの政策に沿うようにサービスを構築している。
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スマートライフ政策が、AIoTクラウドが進める新しいスマートホームのサービスの下敷きになっている
また、JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)が2020年10月に公開したWEBサイト「JEITAスマートホームデータカタログ」も、流れを加速させるきっかけになるだろう。
このWEBサイトは、機器メーカーとサービス事業者の間でデータ活用を促進させるため、機器メーカーが登録したデータをサービス事業者が閲覧できるというもの。データの登録や閲覧は無料なので、さまざまな企業が持つデータがこれまで以上に活用されることになる。
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インターネット上に公開されているJEITAスマートホームデータカタログ
とはいえ、国や団体の取り組みの影響もあり異業種連携は進むものの、やはり同じ電機メーカー間の連携はまだまだ進んでいないのが実状だという。
「だからこそ、データを活用することで得られるもっと分かりやすい価値を提供しなければなりません」と、松本事業部長は力を込める。
新しいスマートホームが家の中の機器を「進化」させる
この先、AIoTクラウドが提唱するようなスマートホームが実現したら、家の中の暮らしはどのように変わるのだろうか。
先述した連携が進んでいるというガス会社の例にヒントがある。同社プラットフォーム事業推進部の六車智子課長は、シャープの専用アプリ「COCORO HOME」での連携をこう説明する。
「アプリを利用すれば、外出先からでもシャープ製のエアコンやテレビのON/OFFはもちろん、ガス会社の給湯器のお湯はりなどの簡易操作や一括操作ができます。また、温度設定といった詳しい操作については、COCORO HOMEの『詳しい操作』ボタンから各メーカーのアプリにリンクできるので管理がまとまります。帰宅したときに室内は涼しく、浴槽には湯が張られている。本来、家に帰ってからやらなければならないことを、スマートフォン一つで管理することができるのです」
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シャープのAIoT対応製品は付加価値が高く、「AIoTの機能を体験していただければ満足を感じてもらえます」と、六車課長
これくらいの最適化だけでも十分に思うが、データ活用の進む先には、さらなる便利が待っている。
「例えば、ヒートショックの予防の一助ともなります」と、松本事業部長。
ヒートショックとは、急激な温度差で血圧が大きく変動し、失神や脳梗塞などを引き起こしてしまう現象のこと。冬場に暖房が効いたリビングから寒い脱衣所や浴室への移動時などに発症することがある。
「データから入浴時間を予測できれば、前もって脱衣所を暖めてヒートショックを防ぐ対策処置を講じることができます。また、夜中にトイレに行くために起きてしまう人なら、同じような行動予測で便座を暖める、通路だけ照明をつける、といったこともできるようになるでしょう」
また、スタートアップサービスとの親和性も高い。既に進められているものに、買い物代行サービスを手掛けるダブルフロンティア株式会社との実証実験がある。
「冷蔵庫、オーブンレンジ、炊飯器などのデータから献立を提案するサービスは別のところで実現していますが、それと同時に献立に必要な食材もわかるので、これを活用すれば、レシピに必要な食材が届けられるサービスもできるようになるのです」
松本事業部長は、次のように暮らしへのメリットをまとめる。
「積極的に機器を使うと多くのデータが集まり、それを分析することで機器が最適な動作を行うようになる。その結果、住む人の行動も最適化されていくことになるでしょう」
2020年から世界的に流行している新型コロナウイルスにより、人々の生活は一変した。在宅時間が長くなった人も多いだろうが、もしこの新しいスマートホームのサービスを利用できれば、家庭内のさまざまな機器も変化した生活習慣に合わせて最適な動作を行ってくれる。
「目指しているのは、人に寄り添うサービス。使えば使うほど利用する人の生活に合わせて“進化する”という価値を提供できると思います」と松本事業部長は締める。
家の中で普通に暮らしていれば、自然と家自体が進化し、最適化されていく未来のスマートホーム。より良い暮らしを求めているなら、これからは“家におまかせ”することが最も効率的な手段になるかもしれない。
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