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特集
未来を育むエネルギー教育

電池を知る・作ることで、子どもたちが学ぶエネルギーの大切さ

パナソニック エナジーが授業を通して育むエネルギーへの関心

小学校においてエネルギー教育を充実、推進させるには、教育現場、教員の取り組みを後押しする専門的な存在、または教材が求められる。その役割を担うのがエネルギーの創出・供給に携わる企業や団体だ。今回はグループ全体でエネルギー教育を含むさまざまな学びの支援に取り組むパナソニックグループの中でも、30年以上「電池教育プログラム」を続けているパナソニック エナジー株式会社の末次和代氏に、取り組みの詳細や子どもたちの反響などを聞く。

先生の口コミ、インターネットや3G回線の普及が広めた電池教室

パナソニック エナジーのエネルギー教育への歴史は古く、前身である松下電池工業株式会社の時代までさかのぼる。1965(昭和40)年、学校教育の発展プログラムとして乾電池を製造する大阪府守口市の自社工場への見学受け入れを始めたのが発祥だ。パナソニック エナジー株式会社 エナジーデバイス事業部コンシューマーエナジービジネスユニットの末次和代氏は、取り組みの背景にはパナソニックグループ創業者・松下幸之助の思いがあったと説明する。

「当時、松下電池工業はグループ創業者・松下幸之助の『物をつくる前に人をつくる』という理念の下、社員はもちろん、消費者の方々への教室通じて地域社会への貢献に取り組んできました。その延長線上で、次の世代を担う子どもたちの学習を応援する活動に注力しています」

大阪府守口市の小学校3年生向けの副教材「わたしたちの守口」では、パナソニック エナジー守口工場の紹介、乾電池の製造工程などを解説する項目が6ページにわたり掲載されている

資料提供:大阪府守口市教育委員会

それから30年後の1995(平成7)年、守口市をはじめ周辺の小学校への「出張電池教室」がスタートする。末次氏は、取り組み開始当初より企画・運営・先生役を担い続けてきた。

「出張電池教室は、工場見学の好評を受けて、より柔軟に、ていねいに要望に応えていくことを目指し始まりました。対象は守口市内の小学校から始まり、市外に授業の存在が口コミで広がり近畿地方から全国の小学校で実施させていただくようになりました」

2002(平成14)年より、より多くの子どもたちに体験してもらいたいとの思いから新たに「オンライン電池教室」を開始した。

「当時はファイヤーウォールにより外部アクセスが制限され、オンラインでの実施が困難な小学校も多かったのですが、NTTドコモのFOMA(携帯電話3Gサービス)が提供されたことで、テレビ電話によるオンライン授業が比較的簡易にできるようになり、パソコンを使用したインターネット回線での授業と、携帯電話を使用したFOMA網回線での授業の2種にて行ってきました。こうした通信環境の変化により離島や遠隔地の小学校をはじめ、オーストラリアやペルーなど海外の子どもたちにも電池教室を実施しています」

「電池教室の依頼は、小学3~6年生の理科や総合的な学習の時間の他、3年生の社会科で地域の企業や仕事を学ぶという単元に合わせていただくことが多いですね。さらに近年では、4年生の社会科で防災教育として学びたいという要望もいただいています」(末次氏)

子どもたちの心に残る出張授業の工夫

地元から始まり、現在ではオンラインも活用し国内外で実施される「電池教室」──。

では、その授業はどのように進められているのだろうか。

「出張電池教室もオンライン電池教室も共通の内容で、2時限(45分×2回)で実施しています。1時間目は、電池の歴史や種類、電気が起こる仕組みなどの雑学を、クイズを交えながら学んでもらい、最後に『ジャガイモ電池』で電気を起こす実験を見てもらいます。これは視覚的に見えないものである電気への関心を促し『なぜ電気が起こるのか?』を子どもたちにより印象的に伝える工夫でもあります」

出張電池教室での「ジャガイモ電池」実験の様子。野菜電池の一種で、ジャガイモに含まれるリン酸と亜鉛が反応することで電流が発生する

画像提供:パナソニック エナジー株式会社

授業で使用される副教材「電池ものしりBOOK」より。電池の種類の章ではリチウムイオン二次電池など最先端のエネルギーデバイスについても細かく分類・記載されている

資料提供:パナソニック エナジー株式会社

2時間目では、子どもたち一人ひとりが単1形のマンガン乾電池を実際に組み立てる。

「副教材や大きな見本を使ったデモンストレーションを見ながら組み立てるので、オンラインでも支障なく教えることができます。最後は教室を暗くして、完成した電池で豆電球をともします。その光景がきれいで、ものづくりの達成感とともに子どもたちの心に刻まれます」

「電池ものしりBOOK」より。マンガン乾電池の作り方が図説や注釈とともに、子どもたちにも分かりやすくまとめられており、事後の振り返りにも活用できる

資料提供:パナソニック エナジー株式会社

小学3~6年生を対象とした電池教室は、出張授業で最大200人ほど、オンライン授業では少人数から大人数まで対応。ここ数年では、文部科学省が推進する1人1台のPC端末の環境を構築する“GIGAスクール構想”の一環として、タブレットやiPadの普及も強化され、2024年度はこれまで2,000人超の子どもたちが授業を受けているという。そうして展開する授業は、前後でのフォローも万全だ。

「先生方には事前にアンケートへ回答いただき、子どもたちの学習進度、電池への関心具合、クラス環境や学校の取り組みなど細かく伺って、授業ごとに当日の進め方や内容を調整しています。特にオンライン授業では、事前打ち合わせを行うことで、『リモートで子どもたちにきちんと伝わるかな?』といった先生方の不安が解消できているかと思います。また授業が終わった後も、子どもたちが後から感じ、先生方では回答が難しい専門的な疑問にお答えするなど、電池やエネルギーへの関心を深めるフォローをさせていただいています」

グループ一体でエネルギー教育を推進

授業内容の工夫、分かりやすくまとめた副教材、教育現場への前後のフォローなど、30年にわたる経験の積み重ねと、万全の体制で提供されるパナソニック エナジーの出張授業。その授業への子どもたち、そして先生方の反響も知りたいところだ。

「授業後、事後学習や振り返りとして子どもたちの感想文や壁新聞を送ってくださる学校もあり、先生のお手紙を添えて送ってきてくださいます。『電池を自分で作れてうれしかった』『電池のことをもっと勉強したいです』『災害のときに電池は大切だと思ったので大切にします』『ジャガイモ電池に驚きました』などさまざまな感想をいただきます。文字以外にイラストや色が塗られており、精一杯に取り組んでくれている姿が想像され、逆にパワーをいただきとても嬉しくありがたく思っています」

オンライン電池教室は2022年で20周年を迎え、京都市立竹の里小学校ではコロナ禍の授業参観として、周年記念の電池教室が実施された

画像提供:パナソニック エナジー株式会社

先生方の感想には、専門的な指導への感謝の他に、最近は防災に関する教育に絡めた内容が見受けられるという。

「近年、小学4年生の社会科に自然災害や防災についても加わり『被災時の非常電源として電池の学びを深めることができました』『防災について家族で考える良いきっかけとなりました』『環境学習やSDGs学習につながる授業内容でした』などという感想をいただくことが増えています。副教材を使用し、防災や環境教育としてご紹介した内容が授業に直結し、お役立ていただけている事を知り、教育環境の変化にも常々対応していきたいと改めて身が引き締まりました」

「電池ものしりBOOK」より。「いざという時のために」と題したもしもの備えとして、停電、災害時の電池、電気の取り扱いの解説が小学校における防災教育にも役立てられ、ひいては電気、エネルギーの大切さを学ぶ機会を拡張した

資料提供:パナソニック エナジー株式会社

電池、電気が供給するエネルギーを学ぶことで、子どもたちの関心は防災、環境などSDGs視点へも広がっていく。

パナソニックグループでは、子どもたちの資質や能力の育成を、ICT教育にも有効なコンテンツを教育現場へ提供する「パナソニック キッズスクール」をはじめ、2023年には長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」をベースとした教育プログラムの提供も始動。グループ全体で教育への取り組みがますます広がっている。

「『パナソニック キッズスクール』へは弊社も電池教室のコンテンツを提供させていただいています。また、東京・有明の『パナソニックセンター東京』などで催される子ども向けのイベントなどでも出張電池教室を実施させていただく機会もあり、今年8月には2日間で800人を超える方に参加いただきました。グループ全体が教育への意識が高い分、その中で私たちの取り組みがNo.1であるよう走り続けたいですし、他のグループ事業とも連携していけたらなと思っています」

出張授業に30年以上向かい続けてきた末次氏は「現状がベストだと思うことはなく、日々授業を磨き上げ、子どもたちに『心のあかり』を届けたい」と強く話す。

パナソニック エナジーのエネルギー教育は、まだまだアップデートされるはずだ。

本特集ラスト第3回は、エネルギー教育を校外活動からサポートする施設に話を伺う。

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