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2026.07.24
東京電力リニューアブルパワーが進める水力発電所のリプレースとは
水車発電機と制御装置の同時取り替えで、発電も業務も効率が大幅上昇
国内の主要な発電の中でも歴史が長く、各地で経年設備の改修が進む水力発電所。東京電力リニューアブルパワー株式会社(以下、東京電力RP)管轄の水力発電所では、最新型水車発電機などへの取り替えを実施し、発電効率の向上による電力量の増加に取り組んでいる。今回は、現在、水車発電機のリプレース工事が進む所野(ところの)第一発電所(栃木県日光市)を取材。同社水力部水力工事センターの神山和哉氏と伊藤創志氏(所属は取材当時)に最新設備の詳細やリプレースがもたらす効果を聞いた。
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土木遺産を有する発電所を、さらに効率的に運用するために
流れる水の落差を利用し発電する水力発電所は、設置条件が山間部の川沿いとなることが多く、増設も半ば限界に達している。東京電力グループにおいて水力、太陽光、風力など自然エネルギーによる発電事業を管轄する東京電力RPでは、既存の水力発電所のポテンシャルを高める「リプレース」に注力している。

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東京電力RPの年間発電電力量の推移。発電量は例年100億kWh程度で安定的に推移。その9割以上を水力発電で賄い、今後リプレース、DXを活用した効率運用で発電電力量増加を目指す
資料提供:東京電力リニューアブルパワー株式会社
同社の水力部水力工事センター工事第一グループ 水力発電所リプレース工事担当の神山氏は、リプレース実施の状況を次のように話す。
「リプレースは自然エネルギーである水力をより効果的、無駄なく利用することを目指し、2017年より栓ノ滝発電所(せんのたき/群馬県片品村)を皮切りに実施しています。管轄の水力発電所163カ所のうち54カ所で計画し、2026年6月末時点で33カ所が工事を完了、0.4万kWの出力増加が図られました。今後、2028年度中には全ての工事を終え、最終的には約1.2万kWの出力増加を図ります」
所野第一発電所は、2026年度中の完了を目指しリプレースが進められている。この施設は、1897(明治30)年に建設され、約130年の歴史を持ち、2013年には土木学会から取水設備が「土木遺産」に選定されている。
「建設当時は水車4台で計600kWほどを発電する小規模な施設だったそうです。その後、電力需要の増加などを背景に、大正期には1250kWの水車発電機を増設した記録が残っています」(神山氏)

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所野第一発電所は、現存する現役最古の発電用取水堰堤(えんてい)と関連施設(取水口、導水路、水路橋など)の保存状態が良好で、日本の水力発電の黎明期の施設として土木遺産に認定された
画像提供:東京電力リニューアブルパワー株式会社
構造や状態が良好であっても、発電所を今後も安定かつ安全に運用し続けるために、水車発電機や付随装置を最新のものへ交換。それらを稼働させるための設備の改造が欠かせなかった。
「所野第一発電所では水車発電機2台と2条ある水圧鉄管(水を上部の調整池から水車発電機に流す配管)の一部、それから発電所の制御装置等をリプレースの対象としました。実は、水車発電機の交換を検討する上で、河川流況(1年を通じた川の流れの状況)を調査・検討した結果、これまで2台の水車発電機で発電していたのですが、最新型の1台にすることで効率的に発電できることが分かり、リプレースで大型の水車発電機1台に集約します」(神山氏)

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「水車発電機は1台になりますが、1台で使用する水量が増加するため、既存の放水路ではその水量に対応できないことから放水路も改造の対象となりました」(神山氏)
歴史ある水力発電所を最新技術で高ポテンシャル化
所野第一発電所のリプレース工事は2023年12月より発電機を停止して着工。水圧鉄管、制御装置の交換を完了し、2026年6月現在は建屋内の水車発電機の交換と放水路の改造(拡幅)が進行中だ。

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新たに取り替えられる発電機。「可能な限り下流の所野第三発電所と同様の設計でコスト削減しました。また、水車の軸受部分などに水を潤滑剤として代用する技術(一部弊社特許を活用)を用い、破損時等の万が一のことがあっても油の河川流出を防ぐために“油レス”化に努めました」(神山氏)
大がかりなリプレースでは、例えば水圧鉄管、水車発電機の交換に伴い発電所の機能を停止させる必要がある。しかし、施設の流域でも水力発電所が稼働している場合や、さらに下流で飲用水や灌漑(かんがい)用水等の水利用がある場合、水の流れを容易に止めることはできない。水力発電所のリプレースでは、特にこうした部分への配慮が求められる。
「水源である大谷川(だいやがわ)流域に発電所が複数あり、流量を制限した場合、各発電所の発電量にも影響を及ぼします。また、下流への用水供給を行っているため断水することもできません。こうした問題に今回は、2台の水車発電機のうち廃止される1台の水圧鉄管を下流へ水を回すための連絡水路に改造しました。この結果、工事期間中も水を有効活用できる環境を整えることができました」(神山氏)

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左画像は新水圧鉄管(左)と旧水圧鉄管(右)。旧水圧鉄管は、廃止された水車発電機の水圧鉄管で、今回の工事では連絡水路となっている。右画像は連絡水路の入り口となる水槽
もともと、同施設の水路はどのような状況でも調整池から水を流し続けられるよう複雑な構造を形成している。基本、無人運転される水力発電所において水車発電機の制御に加え、調整池の状態監視・機器操作を行う必要性があった。
その監視業務を常時、遠方の監視制御拠点から実施できるようにしているのが、もう一つのリプレースの対象となった制御装置だ。制御装置の刷新でどのようなメリットが得られるのか、同社水力部水力工事センター制御装置グループで制御装置設計を担当した伊藤氏は次のように説明する。
「制御装置は、状況に応じ水車発電機を自動で運転・停止、事故を検出する機能を持つ重要な設備です。これまで制御装置は発電所ごとに異なるメーカーの異なる仕様のものが設置されていたため、保守・運用で使う際は発電所ごとの装置の扱い方を理解しておく必要がありました。さらに、故障時は各メーカーに修理を依頼するため、原因調査に時間を要することなどが問題となっていました。
これらの課題を解消するべく、2017年から社内に専門チームを作り、制御装置の自社制作と設置に取り組みました。社内からメンバーが集まり、数十回もの検討・試行錯誤を繰り返し、どこの管轄発電所でも標準的に使用できる電気回路・制御機能を抽出し設計、完成にこぎ着けました。現在、導入を進めることで運用業務の効率化や人財育成の効率化を図っています」

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所野第一発電所内に設置された自社製の制御装置。「設備運用員が機器操作をするためのタッチパネルを含め設計には汎用的な部品を採用し、どの発電所でも同じ装置で運用できるよう工夫しました。現在も運用しながら日々機能の改善を進めています」(伊藤氏)

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制御装置の外箱には高耐食メッキ鋼板を使用し塗装を省略。塗装をする場合と比べて製造時のCO2排出量を約30%削減した。今後導入を拡大しCO2排出量削減への貢献を目指す
水車発電機のリプレースに合わせて、水車発電機の各部に温度計や圧力計、油面計、振動センサーなどを取り付け、それらのデータを制御装置に集約、データを遠隔地に送信する機能も追加。このことにより社員が山間部にある水力発電所まで出向くことなく、事業所のデスクのパソコン上でデータを確認、設備保全に役立てる運用が可能になった。
「制御装置は調整池の状態(水量など)に合わせて、適切に水車発電機の出力を自動調整する機能を持たせています。また、所野第一発電所の水源である大谷川は落ち葉などが多く、水車に流れ込みゴミ詰まりによる出力低下や水の量を調整する弁の故障が発生しやすい環境にあります。こうした状況へ対応するべく水の量を調整することでゴミを落とし、ゴミ詰まりを自動で解消する機能も備えました。この機能も、どこの発電所でも使えるように標準的な設計をしており、東京電力RPの他発電所でも適用しています」(伊藤氏)
リプレースが切り開く、自然エネルギー活用の未来
所野第一発電所は2026年度内にリプレースを完了、130年目に最新技術によって効率化された新時代の水力発電所として歩みだす。電気協同研究会が取りまとめた「水力発電所主要設備の改修指針」によると、全国の水車発電機の取り替え間隔はおよそ60~80年程度とされ、適切な保守を維持することで同発電所も同等年数の稼働が可能と考えられる。

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水力発電のリプレースによる成長イメージ。制御装置のほか、将来的にはロボットやAI、IoTなど新技術によって設備トラブルの未然防止、作業に伴う発電所の停止時間短縮、自然環境変化への追従や水系一貫制御による効率的な運転等により発電ロスを減らし、水のエネルギーを最大限活用する取り組みを実現していく
資料提供:東京電力リニューアブルパワー株式会社
「経年設備である水車や発電機をリプレース工事で更新することで、最新の技術を活用し、従来と同じ水量で発電量を増加させることができます。既存の再生可能エネルギー資源を最大限に活用しつつ、需要増や再エネ利用の要望に対応できることに、私たちは大きな意義があると考えます」(神山氏)
日本では新たな水力発電所の建設が困難である一方、所野第一発電所のような長期間の運用を経て、設備更新が迫られる施設も今後増えていく。水力発電所のリプレースは今後、技術のさらなる進歩とともにその重要性が高まるはずだ。こうした状況に、神山氏は工事担当部門の立場から次のように話す。
「今後も水力発電所を次の世代へしっかりと引き継いでいくという責任を持ってリプレースに取り組みたいです。一つ一つの工程に対して丁寧に向き合いたいと考えています」

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「既存設備やスペースの制約がある中でも、安全を最優先にパートナー企業の皆さんの力を借りて、ワンチームで運転開始に向け取り組みます」(神山氏)
また、リプレースによる業務効率化を実現した制御装置の内製化は、既に20カ所以上の水力発電所で実施済み。伊藤氏も「今後もさらに導入を拡大する予定です」と部門のこれからを話す。
「これまでのノウハウと開発の過程で得られた経験を基に、もっと使いやすく、業務をさらに効率化するような、そんな装置の開発を進めていきたいと思います。また、より効率的な発電ができるような制御機能を開発することで、発電電力量の増加を実現し、カーボンニュートラルに貢献していきたいです」

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「制御装置によりデータを集約・送信することで、事業所のパソコンから現地の状況を確認できるようになります。さらに、そのデータを活用することで、水車発電機の異常兆候の把握や現場対応の要否判断が可能になると考えています。社員が深夜や荒天時、データ確認のために現地へ向かうことをなくしていきたいと考えています」(伊藤氏)
水資源に恵まれた日本において、最も長い発電の歴史を持つ水力発電。
限りある自然エネルギーの活用は一つ一つの技術を磨き上げることで、さらに可能性を広げていくだろう。
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