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2019.01.15
ことしから始まる“奇跡の3年”は、スポーツを産業として成長させる起爆剤に!
日本から世界へ!「ゴールデン・スポーツイヤーズ」という潮流
21世紀に入って約20年。グローバル化の進展と共に世界的には成長産業と位置付けられる「スポーツビジネス」だが、日本では横ばい…むしろ減少傾向にあった。そんな状況を打破し、一気に世界と肩を並べる大きなチャンスが訪れようとしている。それが“奇跡の3年”とも呼ばれる、「ゴールデン・スポーツイヤーズ」だ。
TOP画像:(C)Sergey Nivens / PIXTA(ピクスタ)
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世界的スポーツイベント3年連続同一国開催は世界初!
日本を舞台に“奇跡の3年”が始まった。
まず、ことし9月に「ラグビーワールドカップ2019日本大会」が、そして来年はついに「五輪 東京大会」だ。さらに2021年には「ワールドマスターズゲームズ2021関西」が開かれる。
「世界3大スポーツイベントと呼ばれる大会があります。第1位はサッカーのFIFAワールドカップ。第2位が五輪。そして第3位がラグビーワールドカップ(以下、W杯)です。これらはいずれも一般の方が『見る』スポーツですが、『する』スポーツの世界最大の祭典がワールドマスターズゲームズ(以下、WMG)。これら4つのイベントのうち3つが同一国で連続して行われるのは、世界初のことなのです」
そう教えてくれたのは、早稲田大学スポーツビジネス研究所所長の間野義之教授だ。
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早稲田大学スポーツビジネス研究所所長の間野義之教授。スポーツビジネスのエキスパートとしてスポーツ界はもちろん、各界から厚い信頼を寄せられている
いずれの大会も4年に一度の開催。そしてラグビーW杯は五輪夏季大会の前年に、WMGは翌年に開催されることが決まっている。
それらが今回、初めて同一国で連続開催されることで、どのような“レガシー”につながっていくのか──。国際オリンピック委員会(IOC)はもちろん、さまざまな業界が注目しているという。
「五輪を開催するとスポーツ実施率が向上すると言われますが、実際はそれほどでもありません。『見るスポーツ』からいかにして『するスポーツ』につなげていくか。する人が増えなければトップアスリートは生まれませんからね。IOCの長年の課題である『スポーツの普及』が、2021年以降の日本でどうなっているかが注目されています」
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ことしから始まるゴールデン・スポーツイヤーズの概要
その意味では、国内におけるスポーツの広まり方にも関心が集まる。
都市開催の五輪に対して、WMGは関西エリア、ラグビーW杯は全国開催だ。ニュース性は最も高いが、“点”で行われる五輪と、“面”で行われるラグビーW杯とWMGを連続開催することでスポーツにどのような可能性が広がるのだろうか。
「期待を込めて“ゴールデン・スポーツイヤーズ”と名付けたわけですが、この流れはすでに世界にも広がっています。2024年に行われる五輪パリ大会も同じくラグビーW杯とWMGを連続開催。2028年の五輪ロサンゼルス大会も同じようになるかもしれません。北米ではすでに2026年のFIFAワールドカップの開催も決定しているので、4年連続となる可能性もあります。すでに北米のスポーツ産業関係者は色めき立っていますよ」
スポーツビジネス、日本と世界の差
世界的には21世紀になってスポーツがビジネスとして急激に成長していると言われる。しかし、日本にいるとその実感は薄い。
「例えばサッカー。Jリーグが創設されたのは1991年。イギリスのプレミアリーグは1992年創立です。同時期にスタートした両リーグの市場規模を96年で比べると、いずれも約480億円で同等でした。しかし2012年で見ると約700億円のJリーグに対し、プレミアリーグは約3300億円と、約4.5倍もの開きができているんです」
なぜ、これほどのギャップが生じたのか。間野教授は「最大の原因は規制にある」という。
「例えば、外国人選手の扱いですが、日本は人数を制限しました。Jリーグの目的の一つに“日本人選手の強化”があったからです。あるいはチームの株式取得についても外国人の株主資本率を制限しています。これに対してプレミアリーグは世界中どこから何人選手を呼んでもいいし、ロシアの実業家でもアラブの石油王でも誰でもチームに投資できます。
彼らの目的は“世界一のリーグになる”ことですからね。視野の先にあるものがドメスティックかグローバルか。この差はとても大きいと思います。世界のトッププレイヤーが集まることでリーグとしての価値が高まり、そこに民間企業や投資家たちが加わることでプレミアリーグの市場価値が上がっていきました。
日本ではこれまで起こりえなかった現象です」
そんな状況を打開しようと、スポーツをビジネスとして成立させるべく奮闘する企業が日本にも現れ始めている。間野教授が例として挙げたのは、「ジャパネットホールディングス」だ。
2012年にJリーグに加入すると、しばらくはJ2にとどまっていた同チーム。変化があったのは2017年だ。
筆頭株主であったジャパネットホールディングスがチームを100%子会社化し、数百億円規模のテコ入れを表明。それがチーム、さらに地域住民の機運を高めることとなり、2018年には初めてのJ1進出を果たした。
また、同時にサッカースタジアムを中心とした街づくりの計画をスタートさせたのだ。
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三菱重工業長崎造船所幸町工場跡地にジャパネットホールディングスが計画。スタジアムを中心にマンションやホテルを建設するという。完成予定は2023年
「ジャパネットさんは民間企業ですから当然利益を追求します。投資に見合うだけの利益を生み出せると踏んだからサッカーチームの運営に乗り出したわけです。サッカー界では他にもミクシィがFC東京と組んで渋谷にスタジアムを造ろうという計画がありますし、2018年10月には東京のFC町田ゼルビアの経営権をサイバーエージェントが取得しました。
IT系をはじめとした民間企業がサッカーをビジネスとして捉え、進出し始めているのです」
それら企業がスポーツに参画する流れは、プロ野球がいち早かった。ご存じのとおり、楽天やソフトバンク、DeNAといった企業がチームの経営に乗り出している。
「彼らが見ているのは、プレミアリーグのような成功事例。サッカーにしろ、野球にしろ、ビジネスとして成長する可能性が十分にあると民間企業が見始めたのです」
2025年までにスポーツの市場規模を3倍に!
日本でもスポーツをビジネスとして捉える土壌が醸成されつつあるという。それをさらに加速するために必要なことは何か?
「2015年に文部科学省の外局としてスポーツ庁ができました。ミッションの一つは“スポーツの成長産業化”です。そのためにはまず数値化しよう、と。それが国内スポーツ総生産(GDSP)。2016年の時点で、2012年を振り返ってGDSPを算出すると、約5.5兆円でした。これを2025年までに約3倍の15.2兆円まで成長させる目標を立てたのです」
根拠の一つとなったのは2012年の五輪ロンドン大会。この時のイギリスのGDSP成長率が指針となっている。
「具体的にどうすればいいか?もちろん、多角的に見ていかなければなりませんが、真っ先に挙がっているのは“スタジアム・アリーナ改革”です」
世界的に見ても、スポーツで最も稼いでいるのはスタジアムビジネス。VIP席販売とネーミングライツ、広告がその主たるものだという。
「ですので、ポイントはこれまで赤字の公共事業であった競技場・体育館から、ビジネスとして民間の投資対象となり得るスタジアム・アリーナへ転換すること。現在、全国73のスポーツ施設に建替えや新築の計画があります。
今後、そのうち20施設を“スマート・ベニュー(多機能・複合化したスタジアム・アリーナ)”として2025年までに重点整備する方針を国として決めています」
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日本における“スマート・ベニュー”の好例と言える東京ドーム。スタジアムを中心に、近隣にさまざまな施設が点在。それらすべてが株式会社 東京ドームのビジネスとなっている
(C)Ryuji / PIXTA(ピクスタ)
具体的には東京ドームをイメージすると分かりやすい。スタジアム(東京ドーム)・アリーナ(後楽園ホール)を中心に、商業施設(ラクーア)やアミューズメント施設(遊園地)があり、近隣には区役所や学校も点在してコンパクトな街を形成している。
このように商業や教育などの拠点機能をスタジアム・アリーナに整備することで、持続可能な収益施設を作り上げようというわけだ。
次に間野教授が挙げたのは、スポーツをモチーフにした技術進化の可能性だ。
「五輪というスポーツイベントをきっかけに企業のイノベーションが進む可能性もありますね」
2018年11月、富士通の開発する採点支援システムを国際体操連盟が採用すると発表した。男子のあん馬、吊り輪、跳馬、女子の跳馬、平均台を、3Dレーザーセンサーとディープラーニングを駆使して支援するという。※詳細の記事はこちら
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富士通と富士通研究所が開発した、採点支援システム。国際体操連盟で採用するとしている
このようにスポーツイベントをきっかけとして技術開発が進み、それが新たなビジネスにつながっていく可能性があるわけだ。
「これまで日本でのスポーツは、どちらかというと“教育”でした。しかし、現代においてそれだけでは持続可能なものになっていきません。スポーツ自体をビジネスとして成立させ、そこで収益を上げることで継続させていくことができ、より成長する可能性が高まります。
“ゴールデン・スポーツイヤーズ”は、その機運を高める絶好のチャンスだと思っています」
集客力を高め、ビジネスとして成立させるわが国の仕組みづくりに期待したい。
次回は、五輪開催時にも運行予定の臨海エリアと新橋、虎ノ門をつなぐ新しい交通輸送システムBRTについて探っていきたい。
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