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STOP放置竹林! 竹をエネルギーに利活用する一挙両得の新システム誕生

トラブルを引き起こす竹の特性を独自技術でクリア

私たちになじみ深い植物、竹──。近年では適切な管理がなされていない竹林が、生態系への悪影響や災害といった環境問題を引き起こすことが知られている。そうした中、竹をエネルギー源として有効に利活用できるシステムが開発された。バイオマス発電に不向きとされる竹をエネルギーに変換するシステムの全貌をお届けする。

竹から生まれるバイオマスエネルギーで持続可能な社会の実現に迫る

さまざまなアイデアを形にし、今なお私たちの暮らしに大きな影響を与えている発明王、トーマス・エジソン。中でも、日本の竹を材料に発光時間が極端に短かった当時の白熱電球を大幅に改良したことは、彼の大きな偉業の一つと言える。

そんな竹をわれわれ日本人は、古くから竹細工や茶筅といった伝統工芸品に利用してきた。しかし、現在ではプラスチックなどの代替材料が普及し、その需要は年々低下。そのため、適切な管理がなされずに放置された竹林は、好き放題に増殖を繰り返し、他の植物の成長を妨げるなど森林の生態系を乱す厄介者のレッテルを貼られている。

また、竹の根は深く伸びず横に広がることから、近ごろ頻繁に発生している豪雨などの災害時には、土砂災害を引き起こすトリガーにもなり得るという。

整備さえしっかりとされていれば、竹林は心を落ち着かせるのにぴったりな和の風景となる

こうした放置竹林は日本各地に散在し、竹害の深刻さが問題視されている。しかし、そうであるならば適切に竹林を管理すればよい。また、そんなに豊富にあるのならば、近年研究が進むバイオマス燃料の原料として利用してみては?とも思えるが、事はそう単純ではない。

まずはコストの問題だ。竹は繁殖・成長スピードが速いため、伐採してもすぐにまた伸びてしまう。したがって、需要が低下している現在では、伐採にかかるコストばかりが膨大にかかることになる。

また、竹はカリウムを多量に含んでおり、灰の軟化温度が680~900度と低い。そのため、大型のボイラで燃焼させると炉内にクリンカという溶岩を生成し、燃焼阻害や炉内損傷の原因となってしまう。加えて、塩素濃度が高く、耐火物や伝熱管を腐食させやすいため、バイオマス燃料の材料としても不向きとされているのだ。

豊富にある資源でありながら活用する手段がない現状は、まさに負のスパイラル状態といえる。そんな中、省エネ設備やコージェネレーションシステム、太陽光発電設備などの設計・施工・メンテナンスを手がけるテス・エンジニアリング株式会社(大阪府大阪市)と、木質バイオマスボイラを扱う株式会社巴商会(東京都千代田区)、バイオマス燃料を利用した燃焼技術システムを設計する株式会社エム・アイ・エス(福岡県福岡市)の3社は、竹のエネルギー利用を可能にする竹チップ混焼バイオマス温水ボイラ「E-NE(イーネ)ボイラ」を開発した。

「E-NE ボイラ」ユニットの構成図。燃料供給・バーナー・ボイラの運転制御、集塵機能を備えた集塵装置の搭載や灰出しなど、徹底して完全自動化することで省力化を図った。加えて、自動煙管清掃装置が常にボイラ伝熱面をクリーンな状態に保ち、高効率な燃焼を維持する

開発された「E-NE ボイラ」は、独自の回転式ガス化旋回燃焼方式バーナーによって、トラブルの原因となるクリンカの発生を抑制。クリンカが発生した場合でも、搭載する自動排出機能が速やかに除去して炉内蓄積を防止するという2段構えで、竹チップの安定燃焼を可能にした。

燃焼コントロール技術の向上によって温水の供給開始までにかかる時間を短縮し、燃焼負荷変動対策としてHighとLowの2段階から設定できる。

20フィートのコンテナ2個を連結したパッケージに収納される「E-NE ボイラ」ユニットは、短期間の設置にも対応。本体に無圧式の缶体を用いているため、「ボイラ及び圧力容器安全規則」による届出や取り扱いに必要な資格・免許などは不要

さらに「E-NE ボイラ」ユニットは、粉状や固形の燃料にも対応しており、竹チップや木質チップの他にも現在未利用のバイオマス燃料も利活用が可能。現在、各種バイオマス燃料による燃焼実証試験を実施しているところだという。

かつて白熱電球の材料として暮らしのあり方を一変させた竹が、日本をエネルギー大国に導く日がやってくるかもしれない。

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