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わずかな温度変化で発電OK! IoTを推進させる画期的小型発電デバイスの秘密

暗所や室内でもOK! 蓄電機能も備えて長期間稼働も実現した期待の新技術

再生可能エネルギーを用いた発電技術にはさまざまな方法があるものの、屋内など光や風も届かない環境下で発電できる方法は非常に限られる。一方、これからの時代はIoT(モノのインターネット)化が一層進むことが確実で、そのような環境下でもIoTの動力源となるクリーンなエネルギーを安定供給させることは解決すべき課題となっている。そうした中、わずかな温度変化を活用して発電するデバイスが開発されたという。IoTの推進と共に、欠かせない存在となっていくかもしれない新たな技術を紹介する。
TOP画像:Graphs / PIXTA(ピクスタ)

実はエネルギー源となる身近な温度変化

暦の上では秋とされる9月。

しかし、今月上旬に気象庁が発表した1カ月予報によれば、例年に比べて平均気温が高くなる確率は70%以上とされ、全国的に暑くなることが予想されている。

予測通りの高温が続くことし9月。この画像を見ても、いかに異常気象かというのが分かる

出典:気象庁

ちなみに、残暑が厳しかった2019年9月の東京の気温を見てみると、最高気温は9月9日に記録した36.2℃。他にも最高気温30℃以上を記録した日が11日もあり、25℃以下の日はわずか3日にとどまった。

また、9月の1日における温度差は春ほどではないものの大きく、月間最高気温を記録した昨年9月9日の最低気温は24.5℃で、その差は何と11.7℃にも及んでいる。

体調を崩すきっかけにもなる温度差は厄介な存在だが、意外な活用方法が研究されていることをご存じだろうか?

それが、温度差をエネルギー源として電力を得る取り組みだ。

温度の変化を活用して電気を作る方法は熱電発電として知られ、これまでも実用化されてきた分野。しかし、多量のエネルギーを得るためには大きな温度差が必要となり、高温熱源を有するシーンのみで使われる限定的なものだった。

一方、近年になって盛んなのが、少量の温度変化でごくわずかな電力を得るための研究だ。

その背景には、IoTの普及がある。

さまざまなモノに計測や制御、情報送信などの機能が付け加えられた結果、そこには必ず動力源が必要となった。ただ、それらを動かすには小さな電力量で事足りるため、振動や水滴など、身近なエネルギー源が活用されるようになってきたのだ。
※水滴を活用した発電技術「世界最小の水力発電!? わずか1滴の水滴から5ボルト超の発電技術を開発」

そうした中、東北大学マイクロシステム融合研究開発センター(以下、μSIC)で開発されたのが、常温下での環境変化による温度差のみで発電する新たなデバイスだ。

朝晩の温度変化で発電量が増加

μSICが用いたのは、ゼーベック効果を応用した熱電発電素子。

ゼーベック効果とは、金属や半導体に温度差を与えた際に電圧が発生して電力を生み出すもので、熱伝導効果とも呼ばれるもの。ちなみに、電圧を温度差に変換するペルチェ効果の逆の現象としても知られている。
※ペルチェ効果を活用した技術「酷暑の夏に救世主登場? 太陽光×蓄電池エネルギーでエコなミストを創出」

熱電発電素子には、通常の温度環境下で熱電特性が高いとされるビスマステルライド(Bi2Te3)と三テルル化二アンチモン(Sb2Te3)を混ぜたものを使用。量産化が容易なめっきの技術で作製し、シリコンウエハーで挟み込んだ構造となっている。

素子の片面は蓄熱部に接触しており、反対の面は放熱部に接触。ここに温度変化が生じると熱が蓄熱部に吸収、あるいは放熱され、素子の両側に温度差が生じることで電力を生み出す仕組みだ。

μSICが開発した常温発電デバイス。左上の挿入画像は内部構造を示している。サイズ比較のため置かれたペンと比べても小ささが際立つ

実験のために作られたプロトタイプには、温度センサーやCPU、無線ユニットを接続。建物の内部に設置し、半日における温度変化での発電量を調べた。

すると、朝や夕方など、大きな温度変化が生じる際に比例して発電量が得られることを実証。同時に、環境変化による温度差のみでIoTセンサーを動かすことにも成功した。

環境の温度変化に対応した発電量の例。気温低下時や上昇時に発電量が増えている

さらに同プロトタイプには蓄電のためのキャパシタも組み込まれており、温度変化がなく電力が作れない時間帯でもためておいた電力でセンサーやCPUに給電することを可能としている。

この機能により、バッテリーを使うことなく長期間にわたっての継続した動作確認も実証した。

建物内部の温度変化で発電した電力を用いて温度データを39日間にわたって測定した結果。バッテリーレスでIoTセンサを長期間動作できることを示している

今後は、さらに大きなエネルギーを得るための取り組みとして、ごく少量の不純物を熱電発電素子に添加するドーピングも実施していくとしているμSIC。

⾵⼒や太陽光など、室内や暗所では得られない再⽣可能エネルギーの代替として期待される常温発電デバイス。

防災やセキュリティー、構造物のモニタリングなど、これからますます加速するIoT社会において、電池交換の心配がないこのようなデバイスが必要不可欠なっていくのかもしれない。

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