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次世代電池開発が前進! 充放電サイクル寿命を倍増させる電解液材料開発に成功

物質・材料研究機構(NIMS)が独自の電気化学自動実験ロボット、データ科学的手法の組み合わせで材料探索を大幅時短

現在盛んに行われている次世代電池研究。中でも、大きな期待を集めるのが究極の二次電池と呼ばれる「リチウム空気電池」だ。一方で、実用化に向けては充放電サイクル数増大が最大のボトルネックとなっていたが、日本の研究チームが電解液材料の開発を効率化する新たな材料探索手法を確立した。今回は、次世代電池研究開発の加速を期待させる最新研究の詳細を紹介する。

材料探索のスピードがリチウム空気電池実現の障壁

現代社会において、必要不可欠な存在となっている蓄電池──。

特に近年では、EV(電気自動車)やスマートグリッド(次世代電力網)などの定置用途として、そのニーズはますます高まっている。一方で、現行のリチウムイオン二次電池の性能は理論限界に迫っており、新たな反応原理に基づいた、より高性能な革新蓄電池の早期実用化が待ち望まれている。

その中で大きな期待を集めているのが、負極に金属リチウム、正極に大気中の酸素を活物質として利用する「リチウム空気電池」だ。

リチウムイオン二次電池と比べて、リチウム空気電池が有するエネルギー密度は2~5倍以上。これはあらゆる二次電池の中で最高値であることから、究極の二次電池とも呼ばれている。まさに革新蓄電池の大本命と言える存在だが、実用化に向けては充放電サイクル数の低さが課題となっている。

リチウム空気電池の充放電サイクル数増大において最大のボトルネックとなっているのが、正極反応と負極反応の双方において高い反応効率を実現する電解液材料の開発だ。

電解液には添加剤と呼ばれる微小濃度の成分が複数種含まれるが、性能向上のために検討すべき化合物の候補や組み合わせは膨大な数に上る。また、添加剤の機能発現の仕組みは複雑であり、合理的な材料設計は困難という。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構とソフトバンク株式会社は、2021年12月に世界最高レベルの500Wh/kg級リチウム空気電池の開発を発表した(写真は独自材料である多孔性カーボン電極を適用した高エネルギー密度リチウム空気電池セル)。実用化への期待が高まるが、この成果を得るまでに2年ほどの年月をかけて約3000個の電池を手作業で作成しているという

材料探索の加速を妨げる最大の原因は、研究者の経験や勘に頼った試行錯誤的なアプローチだった。

そのため高効率な新しい材料探索手法の実現ができるか否かが、リチウム空気電池の早期実用化の鍵と言えた。

1万種類以上の電解液材料を短期間に評価

そうした中、国立研究開発法人 物質・材料研究機構(以下、NIMS)の研究チームは独自開発の電気化学自動実験ロボットとデータ科学的手法を組み合わせた新しい材料探索手法を確立。

リチウム空気電池用電解液材料探索に適用した結果、2022年3月、充放電サイクル寿命を約2倍向上させる電解液材料の開発に成功したことを発表した。

開発された電気化学自動実験ロボット

電気化学自動実験ロボットは電解液の調合と電池性能評価を人力の100倍以上の速度で実施でき、1カ月で500個の電池セルを作ることが可能になる。

研究チームは電気化学自動実験ロボットによって得られた大量の実験データに対して、ベイズ最適化に代表されるデータ科学的手法(ブラックボックス最適化アルゴリズム)を適用。材料探索の効率化を試みた。

1万種類以上に上った電解液材料の評価を実施した結果、短期間でリチウム空気電池の充放電サイクル数向上を実現する電解液材料の発見に至ったという。

この新しい電解液材料探索手法についてNIMS エネルギー・環境材料研究拠点 二次電池材料グループの松田翔一主任研究員は、「リチウム空気電池以外のさまざまな蓄電池用電解液材料の探索にも適用可能」としている。

今回新たな電解液材料探索手法が確立されたことで、次世代蓄電池開発にブーストがかかるか。今後の研究開発に注目したい。

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