
2026.6.18
宇宙建築技術に前進! 無重力・月面重力環境での溶接技術を実証
Space Quartersが宇宙重力模擬環境で小型電子ビーム金属接合などに成功
宇宙建築システムを開発している株式会社Space Quarters(東京都渋谷区)は、宇宙真空環境および微小重力・月面重力模擬環境下での溶接実証試験を、航空機で真空状態を再現して実施。金属材料および月面レゴリス※1建材の溶接に成功し、宇宙での実施工環境と同等の条件下での良好な接合状態と十分な接合強度を確認した。その詳細を解説する。
※1…月の表面全体を覆う数mから十数mの厚さの堆積層のこと。数十億年もの月日をかけて隕石の衝突や太陽風、宇宙線など宇宙風化作用によって生み出されたとされている
JAXAとの共同研究、省エネルギー金属溶接技術を開発
近い将来、宇宙開発が進むことで軌道上や月面でインフラとなる大規模構造物の建設は重要性を増す。そして、宇宙空間における構造物の製造・組み立て・修理を可能にする技術プラットフォームの確立は、宇宙開発を促進させる大きな鍵となるだろう。特に宇宙空間は真空状態であり、とりわけ金属などを熱で溶かし合わせる溶接は、エネルギー確保や排熱が大きな制約となる宇宙環境では容易な作業ではない。
こうした中、宇宙開発システムのスタートアップであるSpace Quartersは、電子ビーム溶接を中核とした宇宙での施工技術の確立を目指し、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙探査イノベーションハブと共同研究を実施。宇宙環境での溶接を可能にする電子ビームによる省エネルギー金属溶接技術を開発した。
電子ビーム溶接装置は一般的に重量が100kg以上にもなるが、同社の技術は高圧電源と電子銃を合わせて7kg以下まで大幅に小型・軽量化を実現。これにより、宇宙施工において想定されるロボットアームや小型ロボットによる取り回しを可能とした。

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真空状態の宇宙環境に、より近づけるため航空機(左)での実証を実施。自社開発の小型・軽量電子ビーム溶接機(右)を搭載した
画像提供:株式会社Space Quarters
2026年3月、同社はこの省エネルギー金属溶接技術を採用した自社開発の小型・軽量電子ビーム溶接機と、高真空チャンバー※2を搭載した航空機内で、宇宙真空および微小重力・月面重力模擬環境下での溶接を実証。厳しい重量制限かつ高い加速度耐性が求められる航空機環境下での実現となった。
※2…空気を外部へ排気し、極めて低い圧力=高真空状態を維持できる金属製容器。容器内に宇宙環境を疑似的に再現する。
世界初、月面レゴリス建材の溶接実証に成功
実証は重力環境が溶接部内部の溶融金属の流れ場に影響を与えることから、高真空チャンバーを用いることで微小重力および1/6Gの月面重力環境下を模して試験を実施。合計20回以上の接合試験を安定的に行い、複数材料・複数条件における接合データの取得と、再現性の高い溶接性能を確認した。
さらに適応性を評価・改善することで、宇宙で実際に使用可能な溶接技術として完成度を高めるデータが得られた。

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飛行中の航空機内で実施された溶接実証の様子(左)と、実際に溶接された金属の断面
画像提供:株式会社Space Quarters
本実証および共同研究では、共同研究先の一つである株式会社 大林組より提供を受けた月面レゴリス焼結体※3を対象とした溶接技術の開発・実証も行われた。
近い将来、月面基地を建築する上で、建材を地球から月へ輸送するコストは1kgあたり1~2億円ともいわれ大きなボトルネックとなっていた。そのため現地資源を活用した施工技術の確立は、持続的な月面活動を支える基盤技術となることが期待されている。
今回の実験では、月面重力模擬環境における月面レゴリス建材の溶接が世界で初めて実施され、良好な接合成果を上げた。月面資源を活用した構造物建設の実現性を示す重要な実証となった。
実証された技術は、モノづくりの基盤である「接合」という動作の要素技術であり、人類の活動が宇宙へと広がりを見せる中、軌道上での組み立て・製造、修理を含む軌道上サービス、さらに月面基地建設の宇宙インフラ構築に大きく貢献することが期待される。
※3…月の表面を覆う砂や岩石の粉末(レゴリス)を原料に、接着剤を用いず加熱し溶かし合わせ固めた構造材。建材として用いることで月面基地の建設コストを削減できる

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text:サンクレイオ翼











