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梅の調味廃液を浄化して発電!和歌山で画期的なバイオガス事業が発足

処理工程で発生するバイオガスを再エネとして発電に活用

住友重機械エンバイロメント株式会社が、調味梅干し製造の過程で発生する廃液“梅調味廃液”を利用したバイオガス発電型廃水処理システムを開発。和歌山の大手梅干しメーカー・中田食品株式会社が2019年1月をめどに新設を予定している「中田食品バイオガス発電所」への設置をこのほど発表した。バイオガス(メタンガス)を再エネ利用することで従来より低コストな廃棄物処理や環境負荷の低減につなげる、その詳細とはいかに。

梅調味廃液からエネルギーを創出!

梅調味廃液は糖分を多く含むため、排(廃)水を酸素が少ない状態に保ち、微生物に汚濁物質を分解させてメタンやCO2などにする排水処理技術=嫌気(けんき)性処理設備には不向きとされていた。

また、梅加工業には中小企業が多く、梅調味廃液の処理にかかるコストが大きいことが経営のネック、業界内での課題となっていた。

そこで住友重機械エンバイロメントは独自技術を用いた嫌気処理設備「バイオインパクト」によりこの問題を解決した。「中田食品バイオガス発電所」(和歌山県西牟婁郡上富田町)に設置し、中田食品および地域で発生する梅調味の加工廃液を受け入れ、この設備で浄化し、処理工程で発生するバイオガスで発電を行う。

バイオガス発電型嫌気性廃水処理システムの概要フロー図

画像提供:住友重機械エンバイロメント株式会社

「バイオインパクト」を用いたバイオガス発電システムの導入で得られる具体的なメリットは以下の通り。

1.分散処理から集中処理による効率化
2.嫌気処理により従来の活性(好気性)処理に比べ低コストでの処理が可能
3.発生するメタンガスは再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を活用して売電を行うことができる

など、経済的なメリットが大きく、処理費用の大幅削減が期待されている。

前述の通り、バイオガス発電システムは酸素が少ない嫌気状態で活動できる嫌気性微生物によって廃水を分解するため、好気性処理の際に必要とされる“廃水を空気にさらして酸素を供給する工程”が不要となり、1日あたりの電力量やCO2の削減に貢献。

また、廃棄物として処理される汚泥の発生量が大幅に削減されるため、汚泥処理費用の削減にもつながる。

加えて、梅調味廃液を浄化・処理する工程で発生するバイオガスを再生可能エネルギーとして発電に活用できるので、より低コストの廃棄物処理を可能にしているという。

同発電所の梅調味廃液処理量は日量20立方メートルで、発電機出力は360kW。中田食品では、年間発電量を一般家庭400世帯に相当する200万kWhと見込む。

分散処理から集中処理による効率化は、バイオマス発電プラント設置の際に省スペース化も可能とした(他社事例)

画像提供:住友重機械エンバイロメント株式会社

今回バイオガス発電型嫌気性廃水処理システムを導入、「中田食品バイオガス発電所」の設置を計画する中田食品は、江戸時代より梅の栽培を開始し、梅の産地として有名な和歌山県田辺市に本社を構える、梅加工食品のリーディングカンパニーだ。

同社ではこのシステムの導入後、自社工場のほか地域で排出される梅調味廃液を受け入れることで、環境負荷低減と共に地域の特産品である梅に由来する新たなエネルギーの創出をもくろむ。それは梅産業のさらなる発展と、国が推進する食品リサイクルへの取り組みに貢献することへの意欲の現れだ。

地域の悩みを解決し、新たなエネルギーを創出する今回の取り組み。

システムを開発した住友重機械エンバイロメントは、食品、化学、紙パルプなどの工場排水および公共向けに多くの嫌気処理設備を導入しており、これからは地域特産品など、今回のケースと同様の悩みを抱える業種、地域に対し官民連携による提案を推進していくとのこと。いろいろな業種での助っ人となることに期待したい。

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