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2020.05.18
導入企業社員の本音とは? テレワークがもたらす可能性・多様性【前編】
企業がテレワークを導入して見えてきた効果と課題
2020年4月7日、日本各地で新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめ、政府は緊急事態宣言を打ち出した。5月14日に39の県で宣言が解除、残る8つの都道府県では特定警戒が継続中だ。緊急事態宣言を受けて企業は次々と在宅勤務、テレワークを導入し始めているのは周知の通りだろう。そんな中、2~3月にいち早くテレワークへの移行を加速させたのが株式会社イトーキだ。私たちの職場を快適にするオフィス家具や学習机を取り扱う同社の方々に、テレワーク導入の経緯、テレワークを通じて感じていること、そしてアフターコロナを生き抜くための取り組みなどを伺った。
新しい働き方を見据え、2018年からテレワークを推進
今回はまず、在宅勤務中の同社企画本部経営企画統括部の内田智之部長と、同経営企画課の阿志賀由香氏に、イトーキがどのようにテレワークを取り組み、アフターコロナに向けてどう考えているかを、オンラインチャットツール「GoogleMeet」を用いたリモート取材で伺った。
「イトーキでは“ABW(Activity Based Working)”という働き方を取り入れており、2018年4月に導入したテレワーク制度もその一環として捉えていました」と、内田氏が解説する。
「そこへコロナ騒動が起きて、2月末からテレワークへと本格移行しました。当初は会議などで出社する日もありましたが、4月以降はずっと在宅で、社内外の打ち合わせもテレワークに切り替えています」
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ABWは、オランダのワークスタイル変革コンサルティング企業 Veldhoen+Companyが導き出した‟10の活動”を基にしたワークスタイル戦略。社員自らが、いつでも働く場所を選択することができる
阿志賀氏も「導入されたころから週1日はテレワークを申請していました」と話を続ける。
「当時はペーパーレス化もまだ進まず、テレワーク前日に紙の書類をかき集めて慌ただしく準備する…という感じでした。それが今はパソコン一つ持ち帰れば仕事ができる環境にまで整い、本格移行もスムーズでした。最近は…書留を受け取りに1日だけ出社したきりですね」
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イトーキが取り組むCSRを報告する「サステナビリティ・レポート 」より。同社の「ワーク・ライフ・マネジメント」に基づき、週4日までのテレワークが認められていた。阿志賀氏はこのレポート作成に携わっていて「こういったレポートの文章や構成を集中して考える業務が、テレワークだとやりやすいと感じました」とのこと
内田氏によると「この2年間で部署内の書類はほぼペーパーレス化され、各種申請や決済もテレワークでおおむね完了できるようになりました」とのこと。
続けて、「対外的な書類や会計書類が紙で残っている状況で、その辺りの処理は課題かもしれません。それと私の場合、経営陣との会議に参加することがあり、ウェブ会議が無事に行えるかが心配でしたが、これまでウェブ会議ツールを自ら操作することがなかった役員方もツールを一生懸命覚えて使用しており、その点は杞憂に終わりました。そう振り返ると、出社しなければできないことは、実はそんなにないのかも…と感じ始めています」
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取材時の様子。「部内のメンバーの状況が把握しづらくなった面もあって、チャットでコミュニケーションをとる機会が増えました」と内田氏(右)は話す。阿志賀氏(左)も「内田から業務以外の雑談を振られたりします(笑)」と同調。会議室で席を並べているように息の合ったやり取りがリモートでなされている
「社員との連携も、移行1週目は会議を飛ばしたり、オンラインで会話する機会のない日もありました。でも、環境に慣れてくると会議がじゃんじゃん入るようになって、ここ数日は一日中ウェブ会議…という状況になりつつあります」(内田氏)
テレワーク本格移行後も、これまでと同品質で業務を遂行しているようだ。
エネルギー効率、時間、消費から考えるテレワークの課題
イトーキは総務省、厚生労働省、東京都などが実施するテレワーク推進運動「テレワーク・デイズ」に2017年より参加・協力をしている。
2017年度の「テレワーク・デイズ」には社内公募で手を挙げた290人(本社社員の約40%)が自宅や実家、カフェ、サテライトオフィスなどでテレワークを行った。丸1日の実施で、イトーキ社屋5拠点での総電力消費量は88.11kWh(空調・照明を除くコンセントのみ。実施前82.24kWh)と、オフィスにおけるエネルギー消費効率化という側面では成果が上がっていると捉えらえる。
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2019年7月実施の「テレワーク・デイズ」では、イトーキからは250人(全従業員の26.5%)がテレワークを一斉実施。後日、アンケートでは63.3%が「自身の業務にプラスの効果があった」と回答している
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「テレワークで業務へのモチベーションがおおむね良好」と回答したのは全体の67.1%。一方、変わらないor悪いと感じた人も32%ほどで、まだまだ改善点があることもうかがえる
「その一方でですが…」と内田氏が切り出す。
「妻から『家の電気代が上がる!』と言われています…。確かに光熱費に関しては、それまでは日中不在の場所で一日中稼働するわけですから、上がりそうですよね。今は過ごしやすい季節でエアコンを効かせる必要も少ないですけど、真夏や真冬はかさむかもしれません」
阿志賀氏も「光熱費と併せて、食費がとにかく掛かりますね。その代わり通勤の必要がないため、その時間を家事や睡眠などの時間に充てられるのは大きなメリットです」と主婦目線を交えてのコメントも。
実際、2017年に同社が取り組んだ「テレワーク・デイズ」で“購買行動の変化”の統計を行うと、「消費が増えた」と回答した人が39人(増加総額3万544円)、「消費が減った」が46人(減少総額3万3920円)と、消費額の増減がそれぞれ同等に報告された。
自由な時間が増えれば消費額も増える。アフターコロナ、ウィズコロナでは、働き方だけでなく生活、消費の変革をも迫られているのかもしれない。
生活と仕事、家と職場の境界が消えていく
内田氏・阿志賀氏、2人とも自宅では家族と暮らしている。家族のいる空間でのテレワークについても話を伺うと、内田氏は「実は今、この取材は子供部屋から参加しています」と、その事情を説明する。
「うちは中学生と小学生の子どもがいるのですが、自宅に私だけの部屋がないので、ウェブ会議中は下の子の部屋を占領していまして、自社の学習机にノートパソコンを置いて作業しています(笑)。妻は買い物など必要な外出をする際に、私が家にいることで留守番が子供だけにならず安心できるようです」
阿志賀氏の場合は「下の子が小学校に入学したてで目を離しっ放しにはできないので、集中した作業の合間でも面倒を見たり慌ただしいです。ただ、以前は保育園に預けていたので、コミュニケーションが増えたり勉強を見てあげられたりするのは大きなメリットですね」
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「この前、子どもがウェブ会議に家族が割り込んできてしまって(苦笑)」と明かす阿志賀氏。内田氏は「嫌な人もいるかもしれないけど、メンバーの家族や家庭が垣間見えるのはほほ笑ましいですね。うちの場合、最初は妻に『子供部屋にこもってちゃんと仕事しているの?』と言われたりしましたが…」と言う
同時に「暮らすことと働くことの“境界線がどんどん曖昧”になっています」と阿志賀氏は、今感じていることを明かす。
「今までは9時から17時45分まで会社を拠点に働いていたわけですが、そこへ生活が差し込まれていくと、例えば子どもを寝かしつけた後の方が作業がはかどることもあったりします。まだ何が正解か分かりませんが、時間に固定されずもっと自由になっていいのかな?という働き方への疑問は大きくなってきています」
この話を受けて内田氏が補足する。
「“定時の時間内で働く”という前提はありますよね。弊社支給のノートパソコンは事前申請しないと強制的にシャットダウンしてしまうのです。時間管理が徹底しているのは良いことですが、これからは‟柔軟な時間管理“が求められるかもしれません。例えば、『今日は3時間だけ働く。でもその3時間でかなりの成果を上げれば7時間45分働くことと変わらない』。そういった柔軟さが求められるかもしれません。
極端な話、これまでは会社の椅子に座っていれば仕事している…という気になっていた状況が一変して、ごまかしが利かなくなったと思います。テレワークで職場の境界が曖昧になったことで、何をしたか?何を作ったか?というアウトプットが全ての環境になるのかなと考えています」
<2020年5月19日(火)配信の【後編】に続く>
イトーキが研究・開発している“テレワーク向けの家具”をレポート
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