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加速するテレワーク ~アフターコロナ、ウィズコロナの働き方を見据える~

オンラインコミュニケーションはよりスタンダードになる? 国内テレワーク新事情【後編】

企業の声、現場の声から読み取る「これから」

前編では、ICTベンダーとして早期より企業のテレワーク導入をサポートしている株式会社 富士通マーケティングへ、企業のテレワーク認識の動向を伺ってきた。後編では引き続き、同調査の統計および同社の現場やオンラインセミナーに寄せられた声を交えて、アフターコロナ・ウィズコロナのテレワークの広がりについて、商品戦略推進本部の商品・サービス企画統括部商品企画部の田中貴之部長、サービス&プロダクトビジネス推進統括部クラウド商談推進センターの岡 聡担当部長、デジタルマーケティング推進室の山崎康博氏と共に考えていく。

テレワークはまだまだ加速する?

前編では、緊急事態宣言発令前から発令中の企業におけるテレワーク導入ニーズの高まりや戸惑いについて話を伺った。
※【前編】の記事「コロナ禍でどうなった? 導入支援企業が見た国内テレワーク事情」

厚生労働省とLINE社の調査によると、テレワーク実施率は全国で26.83%(4月12~13日、約630万人が回答)。都市別に見ると、東京都51.88%、大阪府26.28%、福岡20.22%と、首都圏でのテレワーク移行が抜きんでた結果となった。

「首都圏は五輪・パラ五輪2020東京大会に向けて、元々テレワークに備えていた企業が多かったのかもしれません。一方、地方ではその影響が少ないことに加え、公共交通機関を用いず出勤する人が比較的多いことも関係していたのでは?と思います。

ですが、緊急事態宣言で地方にも在宅勤務の必要性が広がり、営業担当より、『地方のお客さまはテレワークの第一歩の踏み出し方に関心が高い』という報告が上がるようになり、テレワーク導入に関する相談件数も地方からが圧倒的に多くなりました。こうした反応からテレワークは今、地方へも着実に波及していると思います」(田中氏)

そうした全国の経営者の声の高まりもあって、田中氏は先日初めてテレワークに関するオンラインセミナーに登壇。東京から田中氏と富士通株式会社理事 首席エバンジェリスト・中山五輪男氏、福岡から日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事・森戸裕一氏がZoomで参加したテレワークに関する座談会の様子はYouTube Liveで配信された。

田中氏は、2015年より在宅勤務トライアルに参加していた話や社内の完全ペーパーレス化に2年を要したエピソードなどを交えながら、テレワークに関する実情や課題などを解説した。セミナーは約1300人がリアルタイムで視聴し、高い関心が寄せられた。このセミナーは下記URLにてアーカイブが視聴可能だ

https://ict-mikata.fjm.fujitsu.com/lp_online_event_tw.htm

田中氏は本取材でもYouTube Liveによる配信でも「テレワークが柔軟な働き方を促す」ことに実感を込めながら語っている。

「私が東京にいながら福岡の森戸氏と語り合う様子を、皆さんも今いる場所からリアルタイムで視聴し、質問もできるわけです。同様に遠方とも大抵の交渉・取引はわざわざ移動しなくてもできることを、テレワークを通して多くの方が実感しているはずです。その結果、生まれる時間をどう使うか? 浮いたコストを何に当てるか? 今は“かつて当たり前だったコストの考え方”を考え直す転換期に入ったと思います」

「テレワーク・デイズ2019」に未参加企業・団体に所属する人へ、テレワークが実現した際に期待することを尋ねた結果も「移動時間の削減」が大多数を占めていた。この時間が削減されることで、ワーク・ライフ・バランスも今後改革されていくのだろう

(C)2020 Fujitsu Marketing Limited. All Rights Reserved

「エネルギーの観点からも、これまでのような移動や集中といった人間の動きがオンライン上へ移行されることで、電力も地域ごとに消費の内訳が変わってくるのかなと個人的には考えています」

課題はオンライン・コミュニケーション

緊急事態宣言が全面解除され、アフターコロナ・ウィズコロナの時代が本格的に到来する。そんな社会においてテレワーク環境はいかに進化していくのだろうか?

岡氏は「ICT(情報通信技術)におけるインフラの企画推進の立場から言うと、クラウド化が急速に進むのではないでしょうか」と予測する。

「オンライン授業を経験した学生世代が社会人になり、当たり前のようにテレワークで業務を行う時代もすぐに訪れるでしょう。そうなると、これまでのオンプレミス(社内ネットワークのサーバーの自社運用)での仕組みもますます使いにくい、運用しにくいと感じるのではないかと。こうした時代に即した事業転換への提案は、東日本大震災や台風、集中豪雨などの際にも、お客さまへ時間やコスト、エネルギー効率などの観点からも訴求してきましたので、全国的なテレワークへの移行は新しい企業・組織における事業継続性向上の形を示すのではと考えます」

「私自身も含め、テレワークにおいて部下とのコミュニケーションをどう進めるべきかは、企業のマネージメント層共通の悩みだと思います。業務とプライベートを上手に並行できず一人で悩み、残業が増えてしまうケースもあるようで、そこをいかにフォローしていくかを、今自宅にいながら考えています」(岡氏)

山崎氏も、プロモーションという業務の観点からの課題をこう語る。

「今後は営業もオンラインが主流となり、営業スタッフは画面上でお客さまに顔を覚えてもらう必要があるのかなと思います。アプローチ方法を変えていかなければ営業も生き残れないでしょうし、お客さまとも親しくなれないと思います。そういった観点からもテレワークを加速することで、プロモーション、アプローチの在り方をさらにアップデートしていかなければと思いますし、今、社会的にも大きく変わっていく部分であると感じています」

「テレワーク・デイズ2019」未参加の200人以上規模の企業では、50%を超える人がことしまでに自社のテレワーク環境の改善・整備強化を望んでいた。調査実施時から状況が大きく変わり「よく分からない・懸念はない」という人々も、恐らく意識に変化が生じているのではないだろうか

(C)2020 Fujitsu Marketing Limited. All Rights Reserved

そして田中氏は「テレワークにおける個々人の成長が必要」と考えている。

「これからますますオンライン上でできることが増えるとして、それを上手に使いこなせない人も出てくるでしょう。企業はそれをサポートするために、いろいろな負荷が生じることが推測されます。ですから、個々人は今の状況を前向きに捉え工夫していく必要があると思います。テレワークにはまだまだ多様な可能性があるとともに弊害も出てくると思います。今はクライアントごとにいろいろな事情を抱えている状況でしょう。私たちもICTベンダーとしてICTを提供する役割だけではなく“どうしたらうまくいくのか?”というノウハウを、この数カ月の経験も含めて改めて蓄積、訴求していくことが責務であり、結果として社会全体の活性化にもつながると信じています」

「正直なところ、やはりFace to Faceの方がいいこともたくさんあって、オンラインでできることは、それをいくらか犠牲にしている部分はあるとは思います。この部分をどうやってテレワークへ取り込んでいくのかも課題かなと考えます」(田中氏)

富士通グループでは、新型コロナウイルス問題が生じる以前から社内でWEB会議を盛んに行っていた。田中氏によると「画面でお互いの顔を表示しないことが多い」と言い、実は今回も撮影時のみ田中氏と岡氏に画面をつないでもらっている。

その理由を田中氏に尋ねてみた。

「メモ画面を共有してリアルタイムに話し合い、合意しながら書き込んでいくことが会議の目的であって、自然と『顔いらないよね?』とみんなが感じ始めまして…。ある意味、私たちはまひしているかもしれませんね(笑)」

テレワークが当たり前になると、業務ごとに本当に必要なものは何なのか?がより浮き彫りになるのかもしれない。

とはいえ社内で見知った顔、というわけではなく初対面となる取材班からすれば、やはりモニター越しにでも顔を合わせて取材する方がやりやすかったのも事実。

今はまだほとんどの人がスタートラインに立ったところ。新しいスタンダードは私たち自ら作り上げていくことなるのだろう。

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