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物流の2024年問題~持続可能な物流の未来に向けて~

「物流の2024年問題」を解決へ導くカギとなるか。搬送ロボットとAIに活路を見出す三菱倉庫のEC物流センター

急増するEC物流。変わりゆくニーズに応える次世代型の物流センターとは

ECサイトの急増とネットショピングのニーズ拡大は、近年の物流における大きな変化だ。実店舗を持たないECサイトの事業者の頼りとなっているのが、商品の保管から輸送までワンストップで行う物流センターである。そんな中、三菱倉庫株式会社は物流の流動性に柔軟に対応する次世代型のEC物流センター「SharE Center misato」を新設し、注目を集めている。物流の人手不足、流動性への対応の鍵となるこの取り組みについて、三菱倉庫の担当者に話を伺った。

増えるEC物流、追われる現場

経済産業省の調査によれば、2022年におけるBtoCのEC市場規模は22兆7449億円(令和4年度デジタル取引環境整備事業/電子商取引に関する市場調査)を記録。EC利用が積極的に推奨されたコロナ禍を経て、前年比で2兆円以上の伸びを見せている。

そんな中、対応が迫られているのが物流現場だ。ドライバー不足はもとより、商品の入荷から出荷までの一連の業務を担う物流センターでもさまざまな動きがある。

倉庫業を中核としてさまざまな物流事業を展開する三菱倉庫は、2021年にEC向け物流センター「SharE Center misato」(以下、シェアセンター三郷)を新設。自動棚搬送ロボット「EVE」を用いた効率的な物流センターの運営を行っている。

4段の棚を持ち上げて自走する自動棚搬送ロボット「EVE」

同社の倉庫事業部 営業第二課 SharE Center セールスグループ サブリーダー・新熊央氏は「EC事業者からの問い合わせはかなり増えており、高い稼働率で運営されています」と反響の大きさを語る。

「コロナ禍で需要が高まったEC市場は、もはや生活に欠かせない社会的なインフラとして定着したといっても過言ではありません。ECサイトが乱立しライバルが増える中、どうやってECで売上を伸ばしていくかと考えているお客さまも多い。そういった背景の中で、お客さまの販売支援に物流面から貢献すべくシェアセンター三郷の新設に至りました」(新熊氏)

最大の特徴は、商品が格納されている棚を自動で運ぶ自動棚搬送ロボット「EVE」を導入し、省人化を図っている点。出荷指示に基づいてロボットが倉庫内を自走し、商品が入っている専用棚を持ち上げ、ワーキングステーションで待つ作業者まで商品を運んでくれる。

シェアセンター三郷を担当する倉庫事業部 営業第二課 SharE Center セールスグループ サブリーダーの新熊氏

「作業の自動化をコンセプトにした施設を造るということで、今まで人力でやってきた作業のやり方をどうやってシステムで構築するかに注力しました。従来は、作業者が格納場所まで移動して商品をピッキングした後、仕分・梱包するという流れでした。それがシェアセンター三郷では棚の方から来てくれるので、作業者はモニターに表示された出荷指示通りに棚から商品をピッキングすることで、仕分・梱包作業に注力できます。これにより、大幅な自動化・省人化を実現しています」(新熊氏)

繁閑の波に柔軟に対応できるのがDX化のメリット

自動化・効率化などを取り入れた積極的なDXは、現場にどのようなメリットをもたらしたのか。新熊氏は続ける。

「ECの物流は繁閑の差が激しいことが特徴です。その理由には、主要なモールが行う大規模なセールや季節波動により購入が集中するということがあります。こうした物量の波に対して、適切に対応していけるというのが大きなメリットです。また、作業の自動化により、常に高精度で高効率。いつでも安定的に高いパフォーマンスを発揮できます」(新熊氏)

また、一連の出荷プロセスにおいて省人化されることで、限られた人的リソースを適切に運用することも可能となる。

「EVE」が運んでくるものを棚からピックアップして発送先毎に仕分ける。センターの広さは1600坪で、月間70万ピース(商品)の入出荷が可能

「物量の波動に合わせて人員を調整していますが、従来の倉庫ではどうしても作業者の経験則に依存してしまうところがあります。シェアセンター三郷では商品保管エリアからのピッキング作業が自動化されているため、作業員の習熟度も全体的に早く高くなっています。結果として、作業者の生産性も向上させることができます」(新熊氏)

このように、自動化によって作業のプロセスが簡素化されることも大きなメリットの一つ。さらに、人力でしか行えない作業に関しては、AIによって人員を適切に配置するような仕組みづくりも進めているという。同社の情報システム部 開発課の佐藤圭一郎氏が解説する。

「セールなど大きなイベントがなくても、倉庫や配送センターは日によって物量の波がありますから、常に同じ人員配置では非効率な面も多々あります。そこで、AIに物流と人員のデータを学習させ、今日は、Aさんはこの倉庫、Bさんはこの倉庫、というように、その時々の状況に応じた最適な人員配置を自動で指示できるようにすることを探求しています。そのためにはより精緻なデータが必要ですが、そうしたことを実現していく中で、人力の部分もまだまだ効率を高めていくことはできると思っています」(佐藤氏)

倉庫作業のシステム開発を担当する情報システム部 開発課の佐藤氏

さらなる自動化に向けてベンチャー投資にも積極的

三菱倉庫は、次の節目となる2030年へ向けた成長戦略「MLC2030ビジョン」を発表した。その中で、「お客さまの価値向上に貢献する」を旗印に、ロボットやAI、IoTを活用した物流業務の自動化・効率化を推し進めていくため、さらに新技術を活用促進していくことを掲げている。

特に、先端技術の活用による高付加価値サービスの開発に力を入れており、具体的には、三菱倉庫は株式会社Hacobuやラピュタロボティクス株式会社などのスタートアップ企業やベンチャーキャピタルへの出資を行い、積極的に外部パートナーとの協働に取り組んでいるところだ。

「例えば、2024年4月からドライバーの時間外労働時間に制限が掛かることを受けて、トラックの待機時間を短くすることで輸送効率を上げようという動きがあります。その中で注目しているのが、バース(トラックが接車し、荷物の積み降ろしをするスペース)予約システムです」(佐藤氏)

「我々倉庫側としては、2024年問題などの社会課題解決に向けて先端技術を活用しながら倉庫内作業を効率化して、ドライバーの働き方に影響を及ぼさないよう、サービスの品質維持向上に取り組んでいます。」と、同社情報システム部 DX推進チームマネジャーの安部晃氏は話す。

「今までは、具体的に何時にドライバーが到着するかを正確に把握することが難しく、お互いに時間がマッチしないこともありました。仮に事前に把握しておくことができれば、例えばドライバーは空き時間に他の仕事をするなど、倉庫もドライバーも効率的に時間を使えるので、結果としてドライバーの労働時間の削減にもつながると期待しています」(安部氏)

もちろん、物流業務の自動化にも引き続き取り組んでいく。

「作業の自動化や効率化という観点で、AGV(無人搬送車)やAGF(無人搬送フォークリフト)も手段の一つと考えています。無人搬送フォークリフトを利用してトラックの荷卸しから倉庫上階への垂直搬送など、倉庫内の搬送工程の効率化に現在取り組んでいて、特に夜間などの時間帯を使って倉庫内の作業に有効活用できないかを検討しています」(安部氏)

シェアセンター三郷を担当する情報システム部 DX推進チームマネジャーの安部氏

このようにさまざまな角度から、物流業界のピンチをチャンスに変える取り組みを着々と進めている三菱倉庫。今後は、EC拠点の拡張や新拠点の構想もあるという。

「運送各社に基本運賃の値上げやリードタイム(発送日から納品日までの輸送日数)の延長などの動きが見られますが、今後も、新たな動きはたくさんあるはず。例えば、運送コストが高くなれば、より納品先に近い場所へと拠点を移す動きも出てくるでしょう。そこに素早く対応していくためには、 “自動化”というキーワードが欠かせないものとなっています」(新熊氏)

物流危機に対する対応が求められる中、倉庫や配送センターが担う役割や重要性もまた、変化しようとしているのかもしれない。そうなったとき、物流を担う企業としてどういった提案ができるのか。自動化により、進化していくこれからの倉庫・配送センターから目が離せない。

本特集第3回では、荷主側の動向に着目。食品メーカーが協働で取り組む「中継リレー輸送」など、持続可能な輸送の実現を目指す取り組みを追う。

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