特集
ブロックチェーン新生活

もうすぐ使える?今知っておくべきブロックチェーンの新サービス

チケットやコンテンツ、選挙に電気まで!金融以外で期待されるブロックチェーンの活用法

哲学が価値になる――。日本では「仮想通貨(暗号資産)」と同一視されがちなブロックチェーンだが、本特集第1回で社会に新たな価値観を生み出すテクノロジーとしての可能性が見えてきた。第2回は、金融、投機商品以外で具体的にブロックチェーンがどのように活用されていくのか、実際のサービス例を紹介していく。

世界を席巻する可能性があるブロックチェーンサービス

まず、これから注目すべきブロックチェーンのビジネス活用例を教えてくれたのは、技術投資プログラムを提供するTECHFUNDの共同代表CEO川原ぴいすけ氏(以下、川原氏)とCTO早川・ジャガー・裕太氏(以下、早川氏)。TECHFUNDは、起業家やスタートアップに金銭的な投資ではなく、技術を提供するテクノロジーアクセラレーターで、既に世界各国のブロックチェーン・スタートアップおよびプロジェクトに深く関わっており、関連技術への見識も深い。

「潜在的な可能性を持ったベンチャーの成長を技術支援で促すというのが、私たちの掲げているミッション。世界各国には有望なブロックチェーン企業や関連プロジェクトが多数あります」(川原氏)

まず、早川氏が紹介してくれた事例は、知的財産(IP/Intellectual Property)にターゲットを絞ったオーストリア発のブロックチェーンプロジェクト「Vaultitude」だ。

「Vaultitude の概要を端的に説明すると、公証人制度(証書の作成などで一定の事項を公務員に証明させる制度)を効率化しようという取り組みです。これまで、知的財産を保護しようと考えた場合、公証人に研究ノートなどの文書を確認してもらい認証を受ける必要があるという非効率な仕組みや、時間的なロスによる侵害リスクがありました。そこで、Vaultitudeはブロックチェーンを使って、知的財産の履歴を管理できるシステムを構築しています。アイデアを管理するための『タイムスタンプ』(日時などを示す文字列)と表現すれば、イメージしやすいでしょうか。すでにプロトタイプも完成していて、IBMや米・マサチューセッツ工科大学、その他グローバルな機関などでもテスト的に採用され始めています」(早川氏)

TECHFUNDのCTO、早川・ジャガー・裕太氏。新卒で楽天の新サービス開発部配属、複数サービスの立ち上げに携わり、その後、同社に合流した

ブロックチェーンには「改ざんがほぼ不可能」という特徴があることは本特集第1回で触れた通りだが、Vaultitudeはそのメリットを、知的財産を守る用途に特化させたというわけである。早川氏はさらに、Vaultitudeのサービスが普及していけば、知的財産を守るだけでなく、特許の仕組みにも好影響を与える可能性があると予測する。

「仮に今後、Vaultitudeのプラットフォーム上に、グローバルレベルでアイデアが蓄積されていけば、“世界特許構想”にも寄与するのではないかと考えています。現状では、各国ごとに審査制度や審査官が異なるため、実現がなかなか難しいとされている構想です。もちろん、特許の審査フローをどうするかなど、記録・保存以外にも新たな仕組みづくりが必要。それについてもアイデアはありますし、個人的に、非常に可能性を感じるサービスです」(早川氏)

また、ブロックチェーンのユニークな活用事例としては、「チケット販売の管理もある」と川原氏は続ける。東京五輪開催を控え、去る2018年12月8日、国会でチケットの「不正転売禁止法」が成立したばかりだが、ブロックチェーンを使えばそもそも“転売”におけるリスクを解消できるかもしれない。

共同代表CEOを務める川原ぴいすけ氏。18歳で起業し、これまで携わったプロジェクトは100件以上という

「エンターテインメントやスポーツイベントのチケット販売では、転売など実際の販売価格よりも高騰する2次流通が大きな問題となっています。ですが、ブロックチェーンを使えば取引記録が残るので不正を防止することができる。大本となる販売者や、逆に最終購入者がチケットの価格変更や経路の履歴を簡単に追うことができるため、お互いに損をしていないか、チェックすることが可能です。一方で、2次流通であっても、元の販売者に手数料が入るなど、価値が還元される仕組みも構築することができるでしょう。実際に、『FAN360』という英国のスポーツファンのためのプロジェクトでは、スペインリーグなどプロサッカーチームと協力してチケット管理にブロックチェーンを活用しようとしています」(同)

川原氏が注目する「FAN360」。チケット管理の方法が劇的に変わる可能性を示唆している

出典:FAN360 HPより引用

なお現在、チケットだけではなく、ゲームアイテムやソフトウェア、電子書籍、音楽、動画といったデジタルコンテンツの保護および2次流通マーケットをつくろうという、日本のブロックチェーンプロジェクト「ASOBI MARKET」も動きだしている。こちらは、デジタルコンテンツの無法な複製を防ぎながら所有権を明確化しつつ、2次流通(中古流通)を可能にする世界を構築するという。

「ブロックチェーン上で発行されたトークン(価値などを保証した交換媒体、代用貨幣)などをインセンティブとして使用することで、デジタルコンテンツの著作者や所有者たちの参加を促し、ASOBI MARKETのビジネスの成長を加速させることもできます。このような仕掛けは、ブログメディアやEC系サービスにも応用できるでしょう。その他にも、人事評価や与信評価、クラウドソーシングなど、さまざまな分野やビジネスにブロックチェーンを取り込もうという動きが実際にあります」(早川氏)

なお、編集部で調べたところ、結婚・恋愛マッチングサービスにおける登録情報の信用性担保、美容整形クリニックでのリスク管理や品質保証、少し驚くところでは無縁仏と遺族を引き合わせるためのブロックチェーンプロジェクトなるものまで存在した。ブロックチェーンの“データ改ざんが難しい”という強みが、一見縁遠そうな業種にもさまざまな可能性を提供しようとしているのだ。

ブロックチェーンなら宇宙からの選挙投票も可能になる

このように、あらゆるビジネスで利用が想定されているブロックチェーンだが、一方で、政治への応用も徐々に検討されつつある。特集第1回では、エストニアなどにおけるデジタルアイデンティティとブロックチェーンの相性の良さについても触れたが、茨城県つくば市でも2018年8月、ブロックチェーンとマイナンバーカードを使ったネット投票の実証実験を行った。つくば市政策イノベーション部・科学技術振興課の前島吉亮氏は言う。

「今回は、候補者を選んで投票した後、データの改ざんが防止できるかどうかを検証しました。本物の選挙ではなくシミュレーションでしたが、技術上は可能であることが示せ、大きな成果を得られたと感じています。また、つくば市の例をきっかけに、国でも国政選挙で使えるのではないかという議論が高まっているようで、とても意義のある実証実験になったと自負しています」

ネット投票するつくば市の五十嵐立青(たつお)市長。「つくばSociety 5.0社会実装トライアル支援事業」の最終審査で実証実験を行った

画像協力:つくば市 政策イノベーション部 科学技術振興課

前島氏はまずは法整備などが整うことを前提条件としつつ、「ブロックチェーンを使ったネット選挙が実現すれば、海外にいる日本人有権者の投票にも応用できるのでは」と私見を語る。というのも、現状では海外にいる有権者の投票は国際郵便で投票用紙を送る、もしくは各国の領事館に行って選挙に参加しなければならないからだ。しかし、改ざんが困難なブロックチェーンを使った電子投票であれば、公正性を保つことが可能だ。

「つくば市にはJAXAがあり、宇宙飛行士の方々も住んでいます。彼らは有権者ですが、日本では宇宙にいる期間は投票ができません。しかし、ブロックチェーンを使えば、宇宙にいながらつくば市の選挙に参加してもらえるのではないかという話も出ています。それに、関連する法律が整い、ブロックチェーンとマイナンバーの普及・ひも付けが進めば、ネット投票によって一瞬で投票数が集計できますし、その分、人件費なども大幅にカットできるはず。今回の実証実験がきっかけになり、議論が進んでほしいと思っています」

エネルギー分野でも期待されるブロックチェーン

そしてもう一つ、これらテクノロジーの動力である“電気”の分野でもブロックチェーンの利活用は進もうとしている。デジタルグリッドという東京大学発のベンチャーが取り組むプロジェクトが最たる例だろう。

同社は、小規模な発電設備と大規模な送電・配電設備を融合させた「デジタルグリッド」を提唱。電気の大規模な市場取引を可能とする電力システムのデザインおよびシミュレーションを研究している。平たく言えば、ブロックチェーンを介して、いつ、どこで、どこに、どれだけ電気が使用されたか、また融通されたかを判別できるテクノロジーである。

デジタルグリッドの取り組みは、環境省による補助事業にも採択されており、現在、埼玉・さいたま市浦和美園地区で実証実験が進められている。これは、同地区にて、スマートハウス、大型ショッピングモール、コンビニエンスストア間で「電力融通」を試みる実験だ。

スマートハウス5軒を電線でつなぎ、常時電気を融通するための送受が行えるように管理。さらに、大型ショッピングモールやコンビニともネットワークでつなぎ、相互に電気を送り合う。その際、この電力融通の履歴・管理をブロックチェーンで行おうとしている。(参考:デジタルグリッド株式会社HP)

埼玉県さいたま市の浦和美園地区で行う「再エネ導入を加速するデジタルグリッドルータ(DGR)及び電力融通決済システムの開発・実証」の概念図

出典:デジタルグリッド株式会社HPより引用

本特集第1回でも触れた通り、日本におけるブロックチェーンのサービスは、これまで仮想通貨、金融の分野ばかりが注目されてきた。しかし、ブロックチェーン先進国からは後れを取ったものの、今、その他のさまざまなサービスやプロジェクトも動きだしている。きっとブロックチェーンの実用例は、続々と増えていくはずだ。

第3回では、実用化の可能性も高い農業・食品の分野で行われた実証実験について、その具体的な成果を追っていきたい。

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