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2020.06.04
コロナ禍でどうなった? 導入支援企業が見た国内テレワーク事情【前編】
富士通マーケティングによる実態・意識調査から読み取る企業やワーカーの意識変化
新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づき、4月7日に発令された緊急事態宣言からおよそ2カ月──。5月25日に全面解除されたものの、アフターコロナ・ウィズコロナの社会は、もはやテレワーク抜きでは考えられないだろう。業務の自粛や在宅勤務を余儀なくされたこの2カ月くらいの間で、テレワークに対する企業の意識はどのように変わったのだろうか? そしてこれから何をなすべきなのか? ラストは前後編にわたり、ICT(情報通信技術)ベンダーとして早期より企業のテレワーク導入をサポートし、昨年、テレワーク普及に関する調査も行っている株式会社 富士通マーケティングに、最新の動向も含め話を伺った。
テレワークは必要と感じながらも他人事?
今回の取材は、同社商品戦略推進本部で「働き方改革」全般の推進を担う商品・サービス企画統括部商品企画部の田中貴之部長、テレワーク関連商材の販売推進を管轄するサービス&プロダクトビジネス推進統括部クラウド商談推進センターの岡 聡担当部長、テレワークに関する企画などを担当するデジタルマーケティング推進室の山崎康博氏とオンライン会議ツール「Zoom」を介して行った。
富士通マーケティングでは、以前より中堅・中小企業に向けたテレワーク導入のソリューション提案を業務の一環としており、2019年10月には「テレワーク推進に関する実態/意識調査」を実施している。※以下、記事内の統計は全て同調査報告書より引用
山崎氏が調査の経緯を説明する。
「昨年の夏に『テレワーク・デイズ2019』という運動が実施されました。これは五輪・パラ五輪2020東京大会まであと1年という時期に、会期中の都内の混雑緩和を目指し総務省や厚生労働省などが企業へテレワークの一斉実施を推奨した取り組みです。弊社もこの運動に協力しつつ、テレワークがどの程度普及しているのか?どんなメリットを感じているか?テレワーク実現の難しさなどリアルな声を集めて、導入を検討されている方々へ情報提供ができればと考えたのです」
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「『1年後には首都圏内の中堅・中小企業でもテレワーク導入のニーズが高まる』と仮説を立て、調査後に検証していくため、2019年時点での現状確認を行いました」(山崎氏)
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調査は2019年10⽉1~3⽇、都内オフィスに勤務のビジネスパーソン1000⼈に実施。「地震や台⾵などの災害や事故による交通機関の混雑などの影響で、テレワークの必要性を感じたか?」という質問に、従業員規模を問わず60%近くが「ある」と回答した
(C)2020 Fujitsu Marketing Limited. All Rights Reserved
調査当時、テレワークの必要性を感じたことがある人は、テレワーク・デイズ参加者を含め全体の60%ほど。
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調査対象の内「テレワーク・デイズ2019」非参加企業・団体の人々へ「所属組織でテレワークが進まない、実施できない理由」を尋ねたところ、「テレワークに適した業務がない」「よくわからない」などの回答が多く、昨年の時点ではまだまだテレワーク導入の漠然とした難しさを感じていたことがうかがえる
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山崎氏も「調査を通して、テレワークをどこか他人事に感じているケースがうかがえました」と分析しながらも、その状況は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大きく変わり始めたことを実感している。
「緊急事態宣言の発令をきっかけに、首都圏に限らず各地の経営者も会社と社員を守るためにテレワーク環境の整備が急務と考えるようになったのではないかと思っています」
クラウド化、リモートアクセス…実は多様なテレワークスタイル
田中氏は「テレワーク導入に関する問い合わせは、実際のところ2020年2月が前年比の2倍、3月が4倍で、緊急事態宣言が発令された4月よりも前に殺到していたのです」と前置きし、その詳細を解説する。
「テレワーク関連の相談のうち、75%が年商100億円未満の企業からのものでした。内容としては、『家から仕事をできる環境につなぎたい』というリモートアクセスに関する相談をはじめ、『WEB会議を導入するには?』といったものが多く寄せられました。その他にもインフラやコミュニケーション、(ロボットを活用した)業務の自動化といった相談も多かったですね」
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田中氏はテレワークに関するオンラインセミナーにも出演する(上から2番目)
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「テレワーク・デイズ2019」非参加企業・団体の人々へ「所属組織にテレワーク実現のため改善・強化してほしいこと」を質問し、「社外へ持ち出せるパソコン、Wi-Fi環境などの配備」「利便性のある勤怠管理」などの改善を望む声が集中したほか、「テレワークを認める社内制度の整備を」といった意見も寄せられていた。こうした要望に応えることが今、急務となっている
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さらに田中氏は「テレワークで時間や場所に依存しない労働環境に慣れてくると、この次は『どうしたら離れたスタッフと情報共有がスムーズになるか?』など、業務プロセスに関する相談内容が増えていくのではないか?」と予測する。
また、岡氏も「他人事と思っていたテレワークの波が押し寄せ、たくさんの経営者から『急にテレワークと言われても何から始めたらいいのか分からない』という漠然とした相談も多いようです。そういった相談に対し、私たちはさまざまな作業環境の統計・調査を経てフローチャート化し、最適なソリューションを導き出しています」と急速に普及しつつある現状への対処方法を用意していることを教えてくれた。
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富士通マーケティングではテレワーク導入に関する問い合わせに対しフローチャート形式でヒアリング。その上で企業の作業環境・規模に適したテレワークスタイルを提案している
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フローチャートを基に4タイプのテレワークスタイルから提案。「自宅から社内環境へリモートアクセスできる方式もありますが、この1~2カ月の変化は著しく『会社のデスクトップパソコンをどうしても自宅で使いたい』という相談もあったようです」(岡氏)
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「テレワーク・デイズ」は在宅勤務にとどまらず、サテライトオフィスの活用やワーケーション(リゾート地でバカンスを楽しみながら仕事をする働き方)の実施なども視野に入れた、ある意味テレワークの枠を広げる取り組みであった。
富士通マーケティングとしてもそれらの働き方を提案、または自社でも取り組むビジョンも想定していた。だが、新型コロナウイルスの影響は、テレワークを“在宅”一点集中で加速させる状況を生んだ。
「そういった展開も、在宅が前提となる緊急事態宣言下(5月中旬の取材時)ではどうにもなりません。この1~2カ月は各地の営業やエンジニアも現場へ直接出向くことができない状況でしたので、お客さまへの提案内容も通常のインターネット環境で導入できるクラウド型のソリューションがメーンでした」(岡氏)
また、慌てて導入した企業も多く、岡氏は「IT環境を巡るトラブル」について、こんな予測も。
「例えば、自宅のパソコンから社内端末へリモートアクセスする形態のテレワークを導入した場合、企業によっては通信に遅延が生じるトラブルに見舞われているケースもあります。これは全社員が一斉にリモートアクセスすることを想定していなかったことなどが原因で、現在テレワークを試用期間中の企業などでもこの問題に直面する可能性はあると考えています」
世界の誰もが予想し得なかった状況ではあるものの、こうした問題はテレワークの必要性を感じながらも“準備体操”が行われていなかったが故の状況なのかもしれない。
後編では、首都圏から地方へ波及し始めたテレワーク移行の現状と、緊急事態宣言が明けた後、私たちがこれからテレワークといかに向き合うべきなのかを聞いた。
<2020年6月8日(月)配信の【後編】に続く>
アフターコロナ・ウィズコロナ社会におけるテレワークの広がり、ワークスタイルについて考える
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