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DXによる防災情報の進化

“適切な避難誘導”でアクション喚起! 防災チャットボット「SOCDA」が実現する被災住民への的確な情報共有

ウェザーニューズが取り組む、情報収集効率の向上化

地震や台風、さらに近年は線状降水帯の発生など自然災害が起きるたび、被災自治体は迅速な状況把握・避難や支援の方針決定・行動が求められるが、その過程では膨大なリソースが割かれている。株式会社ウェザーニューズでは、こうした被害状況の把握や住民とのコミュニケーションを円滑にする防災チャットボット「SOCDA(ソクダ)」を開発した。このSOCDAを用いることで災害対応はどのように変えられるのか。開発に携わった同社防災チャットボットプロジェクトリーダーの萩行(はんぎょう)正嗣博士(情報学)と、防災チャットボットプロジェクトの上谷珠視(かみや たまみ)氏に伺った。

災害状況の集約・共有をチャットボットでスムーズに

内閣府主催の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」では、プログラム第1期の課題に基づき、基盤的防災情報流通ネットワーク「SIP4D」を防災科学技術研究所(以下、防災科研)が開発した。

続いて第2期では、「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」という課題が示された。

独自技術とネットワークで気象情報を集約・解析し、さまざまな市場・分野へ気象リスクへの対応を提供する株式会社ウェザーニューズでは、この課題において“行政の被害状況把握や住民とのコミュニケーション”について、2018年11月よりデジタルツールの開発に取り組んできた。

※【本特集1本目の記事】災害現場における正確な情報共有を目指して! “防災情報のパイプライン”で起こすデジタル革命

2018年11月よりウェザーニューズが開発・サービス提供を担うSOCDA。SIP4Dでの情報共有と知見による防災科研のフォロー、AI研究を担う情報通信研究機構(NICT)による高度な自然言語処理技術のライセンス提供を受ける

資料提供:株式会社ウェザーニューズ

「大きな課題だったのは、災害時における行政側のリソース不足です。災害時には膨大な情報が住民から寄せられ、それらの情報を確認し、担当者へ仕事を振り分けるだけでかなりの人手と時間を要します。住民への対応を可能な限り自動化し見やすくすることで、この負担も減らせるはずでは、と考えました」(上谷氏)

萩行氏は「その検討を経てたどり着いたのが“チャットボット”の開発でした」と語る。

「SOCDAのシステムは、災害時にSNSでシェアされる被災情報、避難・支援情報の双方をチャットボットへ集約させ、必要としている人へ的確に届けられたら、防災・減災に新たな利活用をもたらせるのではという考えから構築されました」(萩行氏)

ウェザーニューズによる災害情報を、NICTが開発したAIがカテゴライズすることで、SOCDAは一人一人の状況に即した回答を返すことが可能に

資料提供:株式会社ウェザーニューズ

チャットボットとは、WEBサイトやアプリケーションなどで質問や相談を入力・送信すると、自動で回答が返ってくるコンピュータープログラムだ。

近年では企業サイトのFAQや各種サービス、手続きのカスタマーサービスなどに導入され、リソース不足の解消や業務の効率化にも一役買っている。

SOCDAのプラットフォームには「LINE」を採用。スムーズに情報の送受信ができ、地図や写真のシェアが容易にできることも大きな特徴だ

SOCDAの構造は既存のチャットボット機能はもちろん、それ以外にも、一人一人の利用者=住民の被災情報を処理・蓄積することで、行政の被害状況の把握や避難指示の判断に役立てられる。

管理者=行政側はSIP4Dでシェアされるさまざまな情報を照会、活用することもできる。

住民へ“先手のアクション”を促す「SOCDA」

SOCDAの有効性で注目したいのが、“適切な避難誘導”といった住民へのアクション喚起が行われる点だ。

SOCDAには事前に居住情報を設定しておくことで、災害発生時には、周辺の被災状況に合わせてユーザーに避難を推奨・指示する機能が付されている

画像提供:株式会社ウェザーニューズ

災害が発生し避難を決めたユーザーには、避難所までどのように行動すべきか対話しながら支援。ユーザーが避難完了を報告すると自治体に状況が共有される。こうした機能は、都市圏で帰宅困難者が生じた際の支援にも応用可能

画像提供:株式会社ウェザーニューズ

「例えば、大雨の際に『川の水位が上がっている』とチャット投稿されると、即座にスマートフォンの位置情報から周辺の状況が割り出され、避難所の開設情報や避難所までの安全なルートが提示されます。通常のチャットボットがあらかじめ決められた回答を返すシステムだとすれば、SOCDAはユーザーの居住地や属性に即した内容を返信することができます」(上谷氏)

「行政が把握している被害状況もSOCDAのチャット送信でスムーズに共有できます。住民は、より身近な周囲の状況や今後の予測を限りなくリアルタイムに把握でき、各自の避難や対応の判断に役立ててもらえます」(萩上氏)

ウェザーニューズでは、元々こうした異常気象や非常時にアプリやLIVE配信を介しユーザーから情報を広く募り、それらを統計・分析し、有効な情報を発信することで減災に取り組んできた。

そのノウハウがSOCDAのコンセプトにも表れている。

SOCDAでは、災害時や事前事後に必要な防災情報の問い合わせなどにも対応。問い合わせ内容に応じて自由回答(画面左)、選択式など回答方式にもバリエーションを持たせている

画像提供:株式会社ウェザーニューズ

こうした有効性から、SOCDAは既に複数の自治体で導入・運用されており、さまざまな知見がストックされつつある。東日本大震災を経験している福島県南相馬市も、SOCDAを活用した防災に取り組んでいる自治体の一つだ。

「今年3月16日にマグニチュード7.4の地震が起きた際、直後に南相馬市から情報を募る発信を行い、停電や断水などの情報が市民から寄せられました。避難情報や避難所開設情報もLINEで配信されています
」(上谷氏)

SOCDAに寄せられた住民の被災情報はAIが自動分析し、被災種別や地域などでフィルタリングの上で共有され、どの地域でどのような被害が起き、どのような対応が求められるかが一目瞭然で可視化される

画像提供:株式会社ウェザーニューズ

2022年3月16日、地震発生後にSOCDAから南相馬市へ寄せられた被害情報・分布。防災意識の高い同市では、SOCDAによる情報共有や市の配信を積極的に活用するユーザーも多い

画像提供:株式会社ウェザーニューズ

上谷氏は「こうした事例から新たに気付くこともあります」と話を続ける。

「南相馬市では情報を募った際、『無事です』と投稿する住民もいらっしゃったそうです。こうした情報は被害状況の把握にはノイズになりかねません。ですが、『投稿がない=被害がない』というわけではなく、無事だったという情報も重要な必要であり、改めて住民から寄せられる情報の重要性を再認識できました」

「南相馬市での気付きをきっかけに、私どもも現場に必要な情報を改めて考え直し、SOCDAによる情報のフィルタリングに“被害なし”の項目を追加させてもらいました」(上谷氏)

SOCDAの導入・運用で災害時の職員の負担は軽減されつつある。

住民からの電話やその内容のメモ、共有、現場確認といったタスクを大幅にカットし、迅速に救助や復旧に向かうことができる。

特に、従来より正確に現場の状況を把握してから対応することができ、二次災害の予防にも寄与している。

情報収集と発信、そして未来への活用の可能性を探る

萩行氏は、SOCDAには災害時の情報共有や発信以外にも「普段の防災意識を高めることにも役立てられています」と言う。

「最近では、自治体主催の防災訓練でSOCDAを使って災害時を想定したチャットボットでのやりとりを体験してもらう取り組みを始めた事例もあります。参加特典としてLINEクーポンを付与するなどして防災意識を育てるツールとしても活用されるなど、SOCDAの新しい可能性を感じています」

また、情報の収集と配信について、ウェザーニューズでは今後さらなる活用に向けた取り組みを進めている。

「防災チャットボットで収集した災害情報や当時の気象データは、災害履歴のデータとして蓄積することができます。こうしたデータをリソースにして、例えば大雨時の降雨量を地域ごとにまとめて、現在までの雨量と時間雨量を比較・分析、今後の雨量の推移と共に起こり得る被害を予測できる『災害リスク可視化システム(仮称)』を開発中です」(萩行氏)

「災害リスク可視化システム(仮称)」は災害記録と当時の降水量、および現在の降雨量予測を一元的に重ね合わせ、過去の災害発生状況を参考に直近の防災対策を検討できる

画像提供:株式会社ウェザーニューズ

「『過去、同程度の雨量のときに何が起きていたか、またどのような対策を講じたか』を把握できれば、自治体にとって先手の対策を考える手掛かりとして役立ててもらえるでしょうし、その上で住民もSOCDAを介して、よりスムーズな避難・対応が行えるようになるはずです」(上谷氏)

SOCDAを活用して自治体の最適な防災対策を支援するためには、「こうした開発ツールやハザードマップのデータ整備も欠かすことができません」と萩行氏は言う。

さらに、住民からの細かな情報提供もやはり防災・減災に欠かせない大切な要素だ。

“観測史上最大の異常気象”が頻発する近年、防災や減災への意識・歩みを緩めることはできない。

国や行政に頼るだけでなく、そこに住む一人一人が安全を紡ぐことができる日は、すぐそこまで来ているのかもしれない。

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