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ガソリンも充電も不要! 太陽光のみで走るソーラーカー「Sion」が来年にも量産化へ

地球にも家計にも優しい! 排気ガス&燃料費ゼロで走る世界初の究極エコカー

環境先進国が多いとされるヨーロッパ。最近ではガソリン車やディーゼル車の新車販売を規制する動きが盛んで、ノルウェーでは2025年、ドイツやスウェーデンでは2030年から販売禁止になる予定だ。その流れを加速させる可能性のある車が、ドイツ・ミュンヘンのスタートアップ企業・Sono Motors(以下、Sono社)で開発された。「Sion(サイオン)」と名付けられた車には太陽電池が搭載されており、そこから得たエネルギーのみで走行可能だという。予約販売数が1万台を超えた、話題のソーラーカーを紹介する。

多種多様な自動車界に現れた新星

HV(Hybrid Vehicle/ハイブリッド車)やEV(Electric Vehicle/電気自動車)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle/プラグイン・ハイブリッド車)など、少しややこしいエコカーの種類。どれも環境に優しい省エネルギーの車だということは分かるかもしれないが、具体的に何が違うかを端的に言える人は少数ではないだろうか。

例えば、トヨタ「プリウス」や日産「ノート」などの普及により、かなり一般的になったHV車。基本的なエネルギー源はガソリンだが、走行時に発電した電気での走行も可能にしている。外部電源から充電はできず、燃費をよくするために電気のみでも走行できる車とイメージすれば分かりやすい。

一方、三菱「i-MiEV」や日産「リーフ」などのEV車は電気がエネルギー源。街中の充電スタンドや自宅のコンセントから充電し、走行可能となる。ガソリンを一切使用しないため環境に優しく、維持費が安いのも特徴だ。一方、充電に時間がかかる点や航続距離が短い点などのデメリットもあり、日本での普及率はまだ低い。

そして、HVとEVのいいとこどりなのがPHV車。メーカーによってはPHEVと表記されるが、性能に差異はない。HV車に外部電源からの充電機能を足したものとされ、トヨタ「新型プリウス」や三菱「アウトランダー」などが販売されている。HVより維持費が安い点やEVより航続距離が長い点は強みだが、エンジンと電気両方で走る機能を備えているため販売価格が高い傾向にある。

そうした中、SEVという新たなジャンルの車が、2020年よりスウェーデンにて量産化されるという。SEVのSはSolar、つまりソーラーカーだ。

車名は「Sion」。ドイツに本社を構えるスタートアップ企業・Sono社が開発し、同社のホームページにて予約販売を受け付けている。

価格は€25,500(日本円で約297万3,958円※9月2日現在)と決して安くはないが、ことし5月には予約台数が1万台を突破。スウェーデンの電気自動車製造会社・NEVSとの提携も発表し、2021年からの納車に向けて量産体制を予定しているという。

スウェーデン南西部・トロルヘッタンにあるNEVSの工場で製造される「Sion」。ヨーロッパ全土をマーケットにした場合、絶好の立地だという

「Sion」の基本的な仕組みはEV車と同じで、35kWhのバッテリーに蓄えられた電気によって走行する。満充電での航続距離は約250kmで、街中に設置された急速充電スタンドを使えば30分間で約80%、1時間で100%の充電が可能。ちなみに、家庭用一般電源で容量満タンに充電する場合は、約13時間を要するという。

ここまではEVと変わらないが、「Sion」最大の特徴が別に存在する。それが、車の屋根やドア、ボンネットなど、5人乗りの車全体に取り付けられた248個の太陽電池から得たエネルギーのみで走行できる点だ。

「Sion」に搭載された太陽電池の場所が分かる図。屋根やボンネットだけでなく、車側面に組み込まれているのもよく分かる

発電量は天候や日照時間に左右されるところが大きいが、Sono社の試算では1日最大34km分(6月の晴天時)の走行が可能だという。なお、この数字はSono社があるミュンヘンの日照時間に準じたもののため、実際に「Sion」を使う場所次第で増減する可能性もある。

最大34kmと聞くと物足りない印象を受けてしまうが、Sono社によるとドイツ国内における車を使った平均通勤距離は片道約17km。太陽光から得たエネルギーだけで「Sion」を走らせることが可能な人は意外と多いのかもしれない。

通常の太陽電池は2~5mmのガラスで覆われることが多いが、「Sion」の太陽電池には軽くて耐久性のあるポリマー(高分子化合物)を使用。安全性を高めつつ、車の総重量を同型車並みの1.4tに抑えている。

また、双方向充電システムも搭載。「Sion」同士をつなげれば送電・充電ができるほか、車のプラグから家電製品や工具に送電することも可能だという。

最大11kWの出力が可能な「Sion」。ヨーロッパで主流のプラグ・Schukoも搭載しており、その際の出力は3.7kW

興味深いのが、その特徴を活用するために開発された、独自のアプリ。「goSono」と名付けられたこのアプリ上で、「Sion」を使ったパワーシェアリングを呼びかけることができるのだ。オーナーは「Sion」に蓄えられた電気の販売量と値段を決めることができ、アプリ利用者はその情報と位置を見てコンタクトを取る仕組み。他にも、カーシェアリングとライドシェアリングを呼びかけることも可能で、Sono社は財布と地球環境に優しい取り組みと説明している。

車内には「goSono」アプリと連携する10インチモニターの他、ハンドル周りの7インチモニター、特殊なコケを使用した空気ろ過システムなどを搭載。機能性と独自性を生かしたデザインも、予約販売台数が好調な一つの要因となっている。

ダッシュボードに組み込まれた空気ろ過システムでは、静電引力で空気中の微粒子物質を約20%ろ過。社内の温度や湿度をコントロールする

Sono社によると、量産にあたって工場の電気には再生可能エネルギーを使い、排出される二酸化炭素もオフセットしていく予定だという。

製造から利用時までとことん地球環境に配慮した車が、今後一つのトレンドになっていくのかもしれない。

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