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食の問題も解決する新時代のバイオマス

讃岐うどん&豚骨スープをエネルギーに! 食品ロスの再生で地域循環を形成した企業の躍動

ご当地グルメからバイオガスやバイオディーゼル燃料を生み出し、社会に還元する取り組み

動植物に由来した資源である「バイオマス」の利用において、食品廃棄物を用いた手法は広く普及してきた。その中で、ご当地グルメから排出される廃棄物をエネルギーに変える一風変わった事業が目立ってきている。廃棄される讃岐うどんを「バイオガス」に変える香川の企業、豚骨スープのラードを「バイオディーゼル燃料」にする福岡の運送会社。そこから広がる可能性は、地域レベルでの電源分散化や循環型社会の形成など、これからの時代に対するヒントになるかもしれない。

廃棄された讃岐うどんから電力を生み出す

讃岐うどんは鮮度が命。古くなったものは、廃棄されてしまう。その量は年間1500tにも及ぶという。

その廃棄うどんをエネルギーに変える「うどん発電」に取り組んだのが、香川県高松市にある産業・建設機械メーカーの株式会社ちよだ製作所だ。

1981年創業。讃岐うどんの本場、香川県高松市にある「ちよだ製作所」

提供:ちよだ製作所

「元々食品廃棄物をメタン発酵させてバイオガス(メタンガス)を作り、コージェネレーション(熱電併給)の燃料にして電気と熱を得るプラントの開発を進めていたんです。そこに2009年、香川県から廃棄うどんを何かに利用できないかという相談がありました」

そう話すのは、ちよだ製作所 技術開発営業の尾嵜哲夫さんだ。

当時は食品廃棄物からのバイオエタノール生成が流行していた。さらに、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)が、うどんを発酵させてバイオエタノールを生成することに特化した酵母を発見したことも大きかった。

まずは廃棄うどんを使ってバイオエタノールを生成する取り組みを進めた。順調に進んだものの、尾嵜さんらは課題にも気付く。

現在、県内の企業から出た野菜くずなどの食品廃棄物が同社に届く

提供:ちよだ製作所

「うどんでバイオエタノールを生成する場合、成分の10%ほどしか使われないため、実は残りの90%くらいが無駄になってしまうんです。これでは環境負荷の軽減にはつながらないですよね」

他にも課題はあった。

「私たちの仕事はバイオエタノールを作ることではなく、そのプラントを造って販売することです。うどんをはじめとする食品廃棄物を用いてバイオエタノールを生成するには、シビアな温度調整、投入する酵素の量やpH(ペーハー)の緻密な管理などが求められます。仮に食品メーカーさんに納入しても、導入企業が日常的に運用をしていけないことに気付いたんです」

そこで改めて着目したのが、元々研究開発を続けていたメタン発酵である。2013年のことだった。

「よく考えると、バイオエタノールを生成しなくても、最初からバイオガスの発酵槽に廃棄うどんを入れてしまえば良かったんです。バイオエタノールになるはずだった栄養素がバイオガスになるだけ。当時、メタンガスから発電する装置も増え始めていたことも大きいですね」

技術面での後押しだけでなく、タイミングも良かった。

「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)によって、メタンガスで発電した電力が1kWh当たり39円と非常に優遇された価格に決まったんです。さらに、香川県が『うどん県』と名乗り始めて注目されていたこともあり、讃岐うどんでメタンガスから発電までができるプラント開発に着手しました」

回収し、発酵させ、発電する「うどん発電」の仕組み

讃岐うどんをメタン発酵させ、そのメタンガスから電力を得るプラント開発は順調に進み、2014年にちよだ製作所の敷地内に1号機が完成した。まだSDGs(持続可能な開発目標)という言葉を耳にしないころだった。

ちよだ製作所に設置された「うどん発電」のプラント1号機

提供:ちよだ製作所

廃棄うどんから生成したメタンガスから、電気と熱が生まれる仕組みを紹介していきたい。

①運ばれてきた廃棄うどん破砕機で細かくする

提供:ちよだ製作所

②細かく砕いたうどんを、水に溶かす

「地下貯蔵庫で水と混ぜて、みそ汁くらいサラサラにします。大体廃棄物が1tあれば、水は1t以上入れる感じです」

提供:ちよだ製作所

③メタン発酵槽に入れて発酵させ、メタンガスを作る

「メタン発酵槽は廃棄物が届くたびにつぎ足せますし、発生したメタンガスは古いものから出ていく構造になっています」

提供:ちよだ製作所

④メタンガスをコージェネレーションに送り、電気と熱を作る

提供:ちよだ製作所

⑤電気をコージェネレーションから電線に送る

提供:ちよだ製作所

電気は自社工場内で使うこともできるし、電線に流して電力会社に売電することも可能だ。熱はメタン発酵槽が発酵しやすい適温に保つために使われるという。

「工場が24時間稼働していると全て自社内で使えるのでしょうが、利用している企業を見ると、実際にはそうはいかないことがほとんど。発生したガスを無駄にしないためにも、売電するのが一番効率の良い方法なんです」

このプラント1号機は、メタン発酵槽をフル稼働させると、およそ40世帯分の電力が賄えるメタンガスを生み出せる。

「これだけの電力を発生させるためには、うどんに換算すると大体1日に1万玉くらい必要になりますね」

「うどん発電」と名付けられたものの、同社内のプラントは現在、県内の食品加工工場などから回収したあらゆる食品廃棄物からメタンガスを生成している。

「私たちの目的は、プラントを広めていくことです。他の都道府県には香川のように廃棄うどんばかりがあるわけではありませんからね」

1号機を開発して以降、全国各地からの視察や問い合わせが続き、岡山、奈良、大阪、愛媛、和歌山の食品メーカーを中心に毎年1基のペースで設置を続けてきた。ちよだ製作所の発電プラントは比較的小型のため、会社の敷地内に設置しやすいのが特徴だ。

和歌山県岩出市にある、スーパー向け総菜を作る藤本食品株式会社にも「うどん発電」のプラントを設置している

提供:ちよだ製作所

「食品廃棄物は、運搬や焼却のために大きなエネルギーが必要となります。それを自分の代で何とかしたいと考えていらっしゃる経営者の方々からの問い合わせが多いですね」

ただし、プラントにはメンテナンスや技術指導などのきめ細かいアフターフォローが必要となる。同社の人員にも限りがあるため、なかなか東日本までは進出ができないそうだ。

「やはり首都圏を筆頭に東日本は人口が多いので、ニーズがあります。今後の目標は提携企業を見つけ、技術者も育てて、さらにこのプラントを広めていくことです」

食品メーカーや食品加工工場、スーパーなどからは日々、食品廃棄物が排出される。実質的に発電した電気は売るのが効率的なら、こうした企業の敷地内や工場の集積地にプラントが続々と設置されれば、その数だけ地域の“電源”が増えることになる。

つまり地域全体にとっては、ごみの排出量を減らせるのと同時に、たくさんのバイオマス発電所を手に入れられるということだ。

福岡ご当地グルメ・豚骨ラーメンのラードで走るトラック

所変わって、九州・福岡。福岡のご当地グルメといえば豚骨ラーメンだが、その豚骨ラーメンのスープからラードを取り出し、バイオディーゼル燃料を生成して自社トラックを走らせている企業がある。それが、福岡県新宮町にある運送会社、西田商運株式会社だ。

西田商運がバイオディーゼル燃料の開発に取り組み始めたのは、約20年前の小泉純一郎政権のころだった。

「そのころ、小泉首相が沖縄のサトウキビなどを使ってバイオエタノールを作ることを『緑の油田』と例えたことがあったんです。その言葉を聞いた後に、使用済みの天ぷら油を使ってバイオエタノールを作る夢を見たんですよ。とにかく、それでペットボトルを半分に切り、自分で使用済みの天ぷら油を使ってバイオエタノールを作ってみようと始めたのが、きっかけです」

西田商運の西田眞壽美会長は、そう笑う。当時はまだインターネットも黎明期。バイオエタノールの作り方など、どこにも見つからなかった。完全な独学で始めたのだ。

「当然苦労ばかりでした。廃油とメタノールを反応させて脂肪酸メチルエステルを作るんですが、うまく分離しなくて困っているときに、ビールを飲みながら『これだ』と思ってビールを入れたらきれいに分離してくれた、なんてこともありました」

「試行錯誤ばかりですが、面白いですね」とバイオディーゼル燃料事業について語る西田会長

苦労の末に廃油からバイオディーゼル燃料を生成する手法を確立し、自社の敷地内にタンクを作って大量生産を始めた。自社の運送用トラックにも軽油に混ぜて使用するようになった。バイオディーゼル燃料事業が軌道に乗ってきた2013年、地元のラーメン店から相談を受けた。

「ラーメンのチャーシューを作るときに出るラードの処理に困っているという相談でした。試してみると、動物性の脂ですが植物性の使用済み天ぷら油と同じようにバイオディーゼル燃料がうまくできた。もしかしたら、これは豚骨スープにも応用できるんじゃないかと考えたんです」

豚骨ラーメンのスープには、大量のラードが浮かんでいる。飲み残しのスープをそのまま下水に流すと環境に負荷がかかるため、下水に脂が流れるのを防ぐグリストラップという装置が飲食店内に設置されている。豚骨ラーメン店では、そのグリストラップに冷えて固まった大量のラードがたまり、掃除に手間がかかるという課題を抱えている場合がある。

「まずはこれを何とかしたいと思い、スープのラードと水分を分離する装置を開発しました。これを使えば、豚骨ラーメンのスープからラードだけを取り出すことができる。私たちはそれを使ってバイオディーゼル燃料を作り、軽油に混ぜてトラックの燃料として使っています」

西田商運が開発したラードと水分を分離する装置

提供:西田商運

今では、福岡県内を中心とするラーメン店から月に約30tのラードが集まり、それらを用いてバイオディーゼル燃料を生成しているという。

「最初は自分の孫に良い環境を残したいと思って個人的に始めたのですが、今ではもっと広く、次の世代に良い環境を残せるようにと日々取り組んでいます」と、西田会長は締めくくった。

街を盛り上げるために大量に作られるご当地グルメの食品廃棄物。それは、全国各地で数多く存在するだろう。

讃岐うどんも豚骨ラーメンも、地域活性化には大きく貢献している。ただ、その目的を達成するために捨てられていたものもある。そこに目を向けた両社の革新は、別の商品を作ったり、ただ減らしたりするのではなく、ビジネスを前提に、地域内外を問わず求められるエネルギーに変換させたことだ。

1社単位なら用途の幅は狭いかもしれないが、広く展開していければ、地域の電源増強や分散化といったレジリエンス強化に、また消費するだけだった原料や資源をサイクルさせる循環型社会の形成につながっていくだろう。

地域を盛り上げながら、地域で社会課題の解決に寄与するビジネスが増えていく。それが、サステナブルな社会の実現に近づく手段の一つになるはずだ。

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