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食品ロス解決に導く!フードテック

必要量の3倍もの在庫を抱えるケースも? 過剰在庫による廃棄リスクを減らす飲食業界の自動発注システム

「賞味期限のある在庫」を抱える飲食業界の課題に向き合う

2021年度の国内の年間食品ロス量は523万tと推計されるなど、食品ロスは国際的な社会問題となっている。その解決の糸口となり得る“フードテック”企業の一つが、株式会社Goalsだ。同社は、AI需要予測に基づいた自動発注や人件費適正化の外食産業特化型クラウドサービス「HANZO」シリーズを提供している。「HANZO 自動発注」が食品ロスに対して果たす役割について、同社の取締役CTO多田裕介氏に話を聞いた。

飲食業界の過剰在庫問題と向き合うSaaS「HANZO」

2018年、多田氏はソフトウェア開発会社の同僚であった佐崎傑氏(代表取締役CEO)とともに株式会社Goalsを立ち上げた。佐崎氏が代表取締役CEOとなり、多田氏は取締役CTOに就任。創業当初から「サプライチェーンの課題解決」を掲げて、製造、小売、流通などさまざまな業界の課題を整理していく中で、食品産業にターゲットを決め、飲食企業に対してモックアップを作っては、プレゼンをして回った。

一言でサプライチェーンといっても業界ごとに特性が異なる中、Goals社が目を付けたのは外食産業だった。理由は2つ。1つ目は新規参入が激しく寡占化されていない産業であったため、スタートアップによるDXサービスのプレゼンが比較的好意を持って受け止められたこと。そして、2つ目は世界的に高い評価を得ている日本の外食産業は、少子化の進む日本において今後も海外で戦えるポテンシャルを持つ産業だと感じたからだった。

Goals社は数あるサプライチェーンの中から外食産業に焦点を絞った後、複数のコンセプトモデルを掲げて各社にプレゼン。その中でも特に好評だったコンセプト「自動発注」を提供するSaaS(Software as a Service/提供側で稼働するソフトウェアをネットワーク経由で利用者が利用するサービス)として「HANZO 自動発注」を開発した。

需要予測型AI自動発注サービスとして提供されている「HANZO」

画像提供:株式会社Goals

「HANZO」シリーズは、飲食業界で利益を決定する重大要素であるFLコスト(FoodとLabor/食材費と人件費)のコントロールをAIでサポートするサービスだ。飲食業はさまざまな要因が複雑に絡み合っているため、客足や売り上げの変動が激しい傾向にあって予測が難しいとされている。

「飲食業の特徴として、他の小売業と違い『在庫に賞味期限がある』というのが挙げられます。そのため、過剰在庫は廃棄リスクに直結していて、適切な在庫管理というのは産業全体として解決すべき課題となっています。当社のサービスである『HANZO 自動発注』は、レジなどのPOSシステムから過去の売り上げや客足のデータ、さらに曜日や天候といったデータまでを機械学習させることで、将来的な予測を算出。そこから必要となる仕入れの数量をはじき出して、自動発注をかける仕組みとなっています」

近隣イベント、食材の消費サイクル、天気予報などから自動で発注予測

小売り向けの自動発注システムはいくつもあるが、「HANZO 自動発注」は飲食に特化しているため、「汎用システムと比較して予測精度に関しては優位性がある」と多田氏は胸を張る。予約状況や近隣でのイベントに冠婚葬祭、さらに食材の消費サイクルやレシピといったデータまでを保有し、AIに学習させている。レシピデータが必要なのは、仕入れと商品が一対一対応となる一般的な小売りと違い、飲食業ではいくつもの食材を規定の分量に組み合わせる必要があるからだ。

それでも材料の状態や調理ミスなどによって、レシピ通りに食材が減ることはほぼないのだという。そのため、AIによる出数の補正といった細かな仕組みを導入し、各店舗が適正在庫を保てるように工夫を凝らしている。

「飲食業界ではコロナ禍後に人手不足という課題があり、発注担当者が店舗に1人しかいないというケースも多々見られます。そうすると、担当者が休みの前に念のため多く発注したり、新店舗に異動してきた新任者が発注量を見誤ったりという話もよく聞きます。こうした食品ロスにもつながる事態を避けるため、『HANZO 自動発注』のようなAIシステムがバックヤード業務を担えればと考えています」

既存の業務システムと連携し、売り上げ・出数・食材使用量の予測を自動算出。在庫量・売り上げ予測・配送スケジュールを計算、発注表を自動作成し、確定情報をボタン一つで発注システムに連携する

画像提供:株式会社Goals

また、「HANZO」の特徴として、SaaSであるが故に導入企業のデータが全て一つのデータベースに集約され、同一のモデルが使われている。そのため、あらゆる店舗のデータがモデルの改善に活用される。

現在、「HANZO 自動発注」を導入している店舗の膨大なデータをAIに“教師なし学習”(機械学習の手法の一つ)させてクラスター分析をしたところ、イベント時ににぎわう“ハレ型”や日常的に使われる“ケ型”、はたまた立地的な“郊外型”など、飲食店の店舗傾向は約25種類のクラスターに分類できたという。こうしたクラスターの情報を活用することで、より精緻な自動発注だけでなく、新規出店や新メニューの売り上げ予測につながるといった期待も寄せられている。

「HANZO」は経験豊かな発注担当者としてだけでなく、優秀なコンサルタントにもなり得るのだ。

過剰在庫の削減が2024年問題にも寄与する

農林水産省の発表によれば、2021年度の食品ロス量は523万tで、食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万tと半分以上を占めている。AIによる自動発注システムで適正在庫を実現できれば、食品ロスに対して劇的な効果を上げると期待されている。多田氏は、「HANZO 自動発注」の導入による過剰在庫の解消率といった正確なデータ収集は今後の課題とした上で、次のように話す。

「賞味期限の長い食材をためこみがち、近隣の系列店で欠品した際に分けるために在庫を抱えているなど、理由はさまざまですが、外食産業は過剰在庫となる傾向が非常に強いように思います。運用中のデータを見ていても、本来必要とされる量の3倍近い在庫を抱えている店舗も見受けられます。そもそも日本の賞味期限は非常に厳格で、それがクオリティーの高い商品につながる一方、その分他国よりも在庫のコントロールやオペレーションが難しいという課題があるのです」

Goals社 CTOの多田氏。氏の留学経験や海外で飲食店を営む親族らの原体験が、「日本の飲食業界が高クオリティー・低利益であるという課題に対する問題意識を生むきっかけにもなった」という

前述の通り、飲食業の需要予測は非常に難しい。こうしたAIやビッグデータの活用が、需給バランスの最適化に果たす役割は大きいだろう。

さらに多田氏は、ドライバーの働き方改革関連法による物流危機、いわゆる“2024年問題”を挙げて、AIによる自動発注が食品ロスだけでなくエネルギー問題にも貢献し得る可能性を示す。

「2024年問題で配送料の増額や納品頻度の減少が予想されるため、飲食店にとっては誤発注のリカバリーが利きづらくなります。そのため、現在も多くの企業が課題意識を持って対応しています。基本的に『適正在庫の算出』といった計算処理は機械の方が得意なので、その分、自動発注システムへの期待も大きいと感じています。また、適切な量の物流を実現すれば、ガソリンなどの燃料やエネルギーコストの削減につながります。サプライチェーンの課題解決を目指すことは、エネルギーの面でも非常に重要な取り組みとなるはずです」

適正な発注管理が利益率の向上にもつながる

ここまで見てきたように、「HANZO 自動発注」は食品ロスの削減に大きく寄与することが期待されている。その上で多田氏はGoals社のミッションについて説明する。

「私たちが一番解決したい課題は、日本の食品産業の利益率の低さです。ある統計では、日本の飲食業の平均利益率は約3%ともいわれています。これは海外と比較して非常に低く、日本の飲食業はクオリティーが高いのに著しくもうかっていないという現状があるんです。もちろん社会的な意味での食品ロス削減も重要ですが、結局食品ロスというのは企業にとっての利益毀損(きそん)でもあります。ですので、テクノロジーの力によって適正な発注管理を実現し、利益率の向上を実現したいと考えています。『HANZO』シリーズを通じて、飲食業界が産業的に持続可能な形で発展していけるようサポートしていきたいです」

AIの活用により、食品ロスのみならず食品産業の利益率の低さを改善し、持続可能性を広げる。それは結果的に、飲食店を利用する我々の生活を支える基盤の一つになり得るはずだ。

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