2018.9.25
進む脱化石燃料化!日産・トヨタが指し示す車の未来とは
全車電動化を目指す「インフィニティ」、アルコール燃料のフレックス燃料車(FFV)にハイブリッドシステムを世界初搭載した「ハイブリッドFFV」など、ユーザーが選択する時代へ
エネルギー問題や環境問題意識の高まりと共に注目を浴びる、排気ガスを出さない次世代自動車への切り替え──。EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)、HV(ハイブリッドカー)、バイオ燃料車など、近年の自動車業界はさまざまな方向からアプローチを試みている。未来へ向けた日本自動車メーカーの最新の取り組みから、車の在り方、その可能性をひも解いていく。
電動パワートレインを搭載したシングルシーターのコンセプトカー
日産自動車の海外向け高級ブランド「インフィニティ」は、8月24~26日にかけて開催されたペブルビーチ・コンクール・デレガンス2018(米国カリフォルニア州モントレー)で、スポーツEVコンセプトカー「プロトタイプ10」を初公開した。
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極端に長いボンネットなど、「プロトタイプ10」のスタイルは、昨年の「プロトタイプ9」からの流れをくむ、クラシックレーシングマシンを彷彿とさせるレトロスタイルを継承(上画像)。ペブルビーチ・コンクール・デレガンス2017で公開された「プロトタイプ9」(下画像)
ことし1月、2021年以降に販売する新型車に内燃機(エンジン)に代わってモーターで駆動する電動パワートレインを搭載する方針を明らかにしている「インフィニティ」。今回、詳細の発表はされなかったものの、「プロトタイプ10」は将来的なパワートレイン技術の可能性を指し示している。
交通インフラ整備の問題もあり、現在のEVは長距離走行におけるニーズに課題を残している。そこで「インフィニティ」は、B(バッテリー)EV、e-POWERの2種類を展開し、ドライバーに選択肢を提供する予定。
BEVは繰り返し充放電できる二次電池を動力として用いるため、その性能が連続航行距離と電動モーターのパフォーマンスを左右する。昨今、リチウムイオン電池より高エネルギー密度・高電圧・高容量を備える全固体リチウムイオン電池の開発に各社がしのぎを削っているのはそのためだ。
そして、日産が独自開発したe-POWERは、発電専用のエンジンと駆動用のモーターを採用。エンジンによる発電で、外部からの充電を必要とせず、加えてブレーキ時に失われる運動エネルギーを電力に変換・回収する回生エネルギーも利用可能で、バッテリーに大容量の電力をためておく必要がない。そのため、二次電池もコンパクトなものでOKになる。
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つなぎ目のない流麗なフォルムを持つ、シングルシーターのスピードスター(オープンカーの一種)として設計。従来のいわゆる助手席部には、バッテリーと電動モーターを冷却するため、大規模な通気口が設けられている
また、今回「プロトタイプ10」が採用する次世代の電動モジュラープラットフォームは、車種を問わずあらゆるボディー形態・サイズに対応が可能。上記のように異なるEV方式でも、同規格で展開することができるという。
今後、2021年に向けてさらなる技術開発を進める「インフィニティ」。
EVならではの自由度の高いシャシー設計を利用し、「プロトタイプ10」のコンセプトを受け継ぐ車が登場するかもしれない。
フレックス燃料車にハイブリッドシステムを搭載
一方トヨタ自動車はことし3月、ガソリンのほか、エタノールなどのアルコール燃料でも走行可能なフレックス燃料車(FFV)に、世界で初めてハイブリッドシステムを搭載した試作車「ハイブリッドFFV(Flexible-Fuel Vehicle)」を公開した。
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サンパウロ州政府やサトウキビ産業協会(UNICA)など多くの関係者が出席する中、トヨタ主催のイベント(ブラジル・サンパウロ市)で公開された「ハイブリッドFFV」
ハイブリッドFFVは、エネルギー効率が高くCO2排出量が少ないハイブリッド車の性能をベースに、植物由来の再生可能エネルギー(バイオ燃料)を使用する新たな駆動(パワートレイン)システムで、現在、トヨタが日本とブラジルで開発を進めている。
ガソリン同様バイオ燃料も燃焼時にCO2を排出するが、原料となる植物は成長過程でCO2を吸収している。そのため、地球上では差し引きゼロと考えられ、大幅なCO2排出量の削減が期待できるという。
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「ハイブリッドFFV」はブラジルでの実用化を目指して、今後、ブラジルでのテスト走行を通じてデータ収集をしていく予定
トヨタによれば、植物の成長過程からエネルギーとして車で使われるまでのCO2総排出量を一般的なFFVとハイブリッドFFVで比較したところ、特にサトウキビ由来のエタノールのみを燃料とした場合、排出量を大きく削減できると試算している。
しかし、植物由来のバイオ燃料に用いられるサトウキビやトウモロコシなどは食料利用と競合するため、食料価格の高騰を招く懸念も指摘されている。そのため、実用化にはハイブリッドFFVの耐久性やパワートレイン性能の向上に加えて、近年研究が進められる藻類を利用するなど、新たなバイオ燃料の供給元が鍵になってくるはずだ。
永続的な利用かつCO2をはじめとした温室効果ガスの排出量削減に向けて、再生可能エネルギーへの切り替えを目指す自動車業界。今後の研究開発に期待したい。
※次世代バイオ燃料原料として注目されているミドリムシなど藻類の大量増殖計画に関する記事はこちら
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text:安藤康之