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テスラはEV社会の夢を見るか? 電動トラック「サイバートラック」が描く未来

アメリカの定番・ピックアップトラックにスポーツカー要素を取り入れた究極の一台

自動車大国・アメリカ。広大な国土ゆえに世界最大級の自動車マーケットであり、四輪車保有台数は堂々の世界一(国土交通省調べ)だ。中でも人気を集めるのが、ピックアップトラックと呼ばれる開放式の荷台を持つ車種。新車販売台数では乗用車を上回ることで知られ、フォード社のFシリーズは不動の人気を誇っている。そうした中、電気自動車(EV)大手・テスラ社が、電動のピックアップトラックを開発したという。SF映画の中から飛び出てきたような、近未来感満載の車を紹介する。

これまでの常識を覆す一台に

不朽の名作『ブレードランナー』──。

リドリー・スコット監督、ハリソン・フォード主演のSF映画の超大作は、1982年の公開から長年たった今でもファンが多い。2014年、並み居る映画監督や評論家、科学者など、有識者150名が選んだベスト10をもとに、イギリス・ロンドンの情報誌『Time Out』上で発表された「SF映画ベスト100」では、堂々の第2位に輝いている。

退廃的かつ生物工学が組み込まれた近未来の世界というSFの新ジャンル「サイバーパンク」の先駆けと称され、『攻殻機動隊』や『マトリックス』など、その後の大作にも多大なる影響を与えた同作。興味深いのは、映画の時代背景が2019年11月に設定されていたということだ。

撮影当時の最先端、もしくは未来予測を基に登場した映画内の技術は、現代社会でも広く普及。主人公が使っていたテレビ電話やオートロックなどがその一例だ。

一方、作品内に登場する空飛ぶ車に関しては、まだまだ実用化に向けて厳しい壁が立ちはだかっている。
※空飛ぶ車に関する記事はこちら

そうした中、この映画の世界を身近に感じさせる一台の車が、映画の舞台と同じことし11月22日13時過ぎ(現地時間21日20時過ぎ)に公開された。アメリカのEV大手・テスラ社の「サイバートラック」だ。

映画やCGの中から飛び出てきたようなデザインが目を引く

同社にとって初となるEVのピックアップトラックで、かねてから『ブレードランナー』を意識したデザインになると発表し、注目を集めていた「サイバートラック」。近未来感漂うデザインには、最先端の技術がちりばめられているという。

まず、その特徴的な外装には冷間圧延ステンレス鋼を採用。プレス機でも曲げるのが困難とされる強固な素材は、へこみや腐食などを防ぐのはもちろん、小型の拳銃から放たれた銃弾なら貫通することはないとされている。

また、ウインドウには防弾仕様のテスラアーマーガラスを使用。超強力ガラスとポリマーレイヤーの複合材は、衝撃を吸収して逃がすことで高い強度を実現した。

荷台部分には可動式の屋根を備えるほか、車高調整機能のアダプティブ エアサスペンションを搭載。荷物の積み下ろしが容易になるよう4インチ(約10cm)ずつ車高を自動で上げ下げできるなど、ユーザー目線に立った開発がなされている。

屋根を閉められることで、雨や雪の日などの対応も楽になった

最大積載量は約1600kgで、フロント3名+リア3名の計6人乗り。

ダッシュボードには17インチの大型タッチスクリーンが配置されており、新型のユーザーインターフェースが搭載された。

無駄を省いたシンプルなデザイン。従来のピックアップトラックのように広々とした室内空間を確保している

トラックとスポーツカーのいいとこどり

“トラックよりも優れたユーティリティ”と“スポーツカーをしのぐパフォーマンス”がコンセプトの「サイバートラック」。

荷台の機能や積載量などは前述の通りだが、航続距離や加速力、けん引重量などのスペックは、3つのタイプからユーザーの好みに合わせて選択できるという点も特徴的だ。

その中でも特筆すべきは、トライモーター(3モーター)とAWD(オールホイールドライブ)を採用した一番高性能なモデル。3つのモーターを搭載したEVは同社でも初の試みで、航続距離は約800km、停止時から96km/hまでの加速は2.9秒以内、最大けん引重量は約6350kgとされている。

この数値は、アメリカで人気のピックアップトラック「F150」(フォード)のけん引力、長年にわたって愛されるスポーツカー「ポルシェ911」(ポルシェ)の加速力を凌駕(りょうが)するものだと同社は発表している。

同社の主力EV「Model S」と比較してみても、高エネルギーなのは明らかだ。

イタリアのテスラ車オーナーが「Model S」で航続距離1000kmを達成したという“逸話”もあるが、公式に発表されている航続距離は610km。つまり、「サイバートラック」は同社で最も長い距離を走れるEVというわけだ。

さらに、荷台の屋根をオプションでソーラーパネルに変更できることも検討しているそうだ。その際には1日あたり30~40マイル(約48~64km)の航続距離分を生成することが可能になると見込まれており、充電レスで日常使いするユーザーも多数いるのではないかと想定される。

従来のピックアップトラックは燃費を度外視したものが多く、これまでの常識を打ち破りつつ性能を高めた「サイバートラック」を挑戦的な一台と位置づける専門家も少なくない。

軽やかに荒野を駆け抜ける姿は、従来のピックアップトラックとは一線を画す

気になる値段はモーターの数によって異なり、シングルモーター3万9900ドル(約433万円)、デュアルモーター4万9900ドル(約542万円)、トライモーター6万9900ドル(約760万円)と設定されており、それぞれ予約金100ドル(約1万1000円、日本から予約する際は1万5000円)が必要だ。

テスラ社CEOのイーロン・マスク氏は、「サイバートラック」の予約台数を頻繁にツイート。公開3日後には20万台、5日後には25万台を突破したと発表し、順調な滑り出しをアピールしている。

また、アラブ首長国連邦・ドバイ警察は、「サイバートラック」をパトカーに採用すると早くもアナウンスを行った。数々のスポーツカーを警察車両に仕立てている同組織にとって、速さと強さを併せ持つ同車は魅力的に映ったに違いない。

下位の2モデルに関しては2021年後半、最上位モデルに関しては2022年後半からの生産開始が予定されている「サイバートラック」。

映画やCGの世界から飛び出たような斬新なデザインに目をひかれがちだが、その実、優れたパフォーマンスと耐久性を兼ね備えた実用性の高いEV車だ。

テスラのほかにも、GMやリヴィアン、フォードもEVピックアップトラックの販売計画を進めており、この先競争が激化していくことは想像に難くない。そんな中で、デザインで未来社会のビジョンを強く描き、具体的な性能や価格と共に打ち出した「サイバートラック」は、イノベーティブな面で他社を一歩リードしたといえるかもしれない。

EV社会の新たな幕開けは、すぐそこまできている。

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