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AIで呼び出して近場を簡単移動! 超小型ロボットカーが自動運転タクシーになる日

モピが近距離移動向け自動運転タクシーとAI対話式配車システムの実証実験を実施

史上初となる自動運転技術レベル3を搭載したHonda「レジェンド」が今年発売されるなど、世界で社会実装され始めている車の自動運転技術。自家用車はもちろんだが、暮らしを支える交通インフラの一つであるタクシーへの展開も模索されている。そうした中、近隣移動の形を変える可能性を期待させる、AIによる配車システムと自動運転技術を組み合わせた送迎実験が奈良で行われた。

AI予約と自動送迎のタクシー実証実験がスタート

自動運転技術やMaaS(Mobility as a Service)など、交通における新しいプロダクトやサービスが少しずつ社会の中に組み込まれ始めている。近い将来、その一つになるかもしれないのが、自動運転走行システムを手掛けるPerceptln Japan合同会社(以下、パーセプティン。2021年7月、株式会社モピに商号変更)による実証実験だ。

2021年1月、実証実験の舞台は奈良県奈良市にある国営平城宮跡歴史公園。ここでは、2019年から国土交通省の旗振りで「平城宮跡歴史公園スマートチャレンジ」という官学連携プロジェクトが実施されている。同プロジェクトはさまざまな新技術を園内で試すことで、公園の魅力向上に資するとともに、奈良のスマートシティ化を促進させることを目的としている。今回の実証実験も、その一環で行われた。

実証を目指したのは、AIによる配車依頼と自動運転による送迎。4日間で延べ182人が参加し、実験は次のように行われた。

あらかじめ決められた複数の乗車ポイントにAIシステム(対話エージェント)と連携する人感センサー内蔵デバイス(会話端末)が設置されており、人の接近を感知するとAIが配車に必要な情報を音声で質問する。

送迎の依頼者(実験の参加者)が質問に答えると、AIが対話で得た情報をFMS(自動運転管理システム)に送り、FMSから車両に迎車指示が発信。車両が自動運転によって依頼者の元へと向かい、乗車すれば園内に設定した仮想目的地に送り届けてくれるという流れだ。

会話端末はハタプロ・ロボティクス株式会社が開発した「ZUKKU(ズック)」。端末につながるAI(対話エージェント)は株式会社コトバデザインによるもの

4日間の実証実験を終えた結果、配車依頼のスムーズさや乗り心地についての参加者からの反応も良く、特に高齢者から「スマートフォンの操作をしないでタクシーを呼べる」ことに高評価を得たという。

一見、このタクシーのストロングポイントは「自動運転技術」の方だと思えるが、今回のカギとなったのは「AIを活用した配車システム」だ。

AIと話せば配車予約ができる。これは通常のタクシーなら電話での送迎依頼に近い。最近では、街中で手を上げることもなくアプリで依頼することも増えているだろうが、高齢層の多くが同じようにスマートフォンでパッとタクシーを呼べているかは微妙なところだろう。

そもそも同社がAIで簡単に配車予約ができるようにしたのは、そうした高齢層が利用しやすいかを考慮したところにある。自動車免許返納者のアシとして、また公共交通機関が充実していない過疎地域の交通基盤として、主に高齢層の新しい移動手段になれるよう仕組みづくりを目指してきた。先の参加者からのコメント通り、高齢層にとって「特殊な機器を操作しない」というのは今後の社会で大きなメリットになるのかもしれない。

超小型自動運転タクシーは2021年内に乗れるかも!?

一方、独自開発したという自動運転技術も、他とは違った強みがある。高齢層に新たな移動手段として取り入れられるには、前提として各地でタクシーサービスを運営している事業者の興味を引く必要がある。ここでポイントとなるのが、コストの安さだ。

実証実験で使われた超小型ロボットカー「macniCAR-01」は、別の会社が販売する超小型EV(電気自動車)に自動運転システムを組み込んだもの。最高速度は時速20kmで、「高速道路は走行禁止」「指定地域のみ走行可」などの条件はあるものの、国から公道走行が正式に認められている。

株式会社タジマEVの超小型EV「タジマ・ジャイアン」(公式サイト販売価格174万9000円)に、株式会社マクニカと共同開発した自動運転システムを搭載した「macniCAR-01」

コストを抑えるため、そもそも比較的安価に販売されている超小型EVをベースに、センシングのデバイスや膨大な計算を要する高性能な車載コンピューター、電力消費など、自動運転に関わるトータルコストの低減も目指した。

そこで開発されたのが「PerceptIn DragonFly 自動運転ソリューション」システムだ。大手自動車メーカーなどが採用している高度なリモートセンシング技術や高精度3Dマップといった高価な技術を使わず、カメラによるセンシングや高精度GPSなど既存技術の組み合わせでできているのがポイントである。

もちろん、高度・高価な技術を使わないデメリットもあるが、それらのセンシングを統合させるセンサーフュージョンとAIによるカメラ画像認識などの独自技術によって、リアルタイムでの自己位置推定、路面や空間の状況など自動運転に必要な情報は得られるシステムを実現した。

カメラによって歩行者や他の車両などの路面情報、空間情報、車線や信号機・交通標識を認識し、既存のデジタルマップに高精度GPS情報を取り込んで、自動運転用のマップを作っている

同プロジェクトを担当するパーセプティンの川手恭輔GMは、「低コストの自動運転ソリューションによって、販売価格も低価格にできるはず。そうなれば、複数台導入のハードルも低くできる」と、タクシーサービス事業者のメリットを話す。

基本的に低速走行に最適化した車両のため、近距離移動によるタクシーサービスとしての普及を目指しており、同社は「今後は遠隔監視・制御下での実験を重ね、2021年中には自動車の運転機会を失った高齢者が多く住む地域や、公共交通機関の乏しい過疎地域などで社会実装させたい」(川手GM)と、年内でのビジネス化を掲げている。

超高齢化や人口減少に伴い、拡大するであろうラスト・ワンマイル問題を解決する手段の一つとして注目したい。

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